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接骨院の往療料2,300円の条件|4km・16kmの線と2026年改定

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「腰を痛めて立てない。家まで来てもらえないか」。朝いちばんにこんな電話が入ったとき、保険で往療料を請求してよいのでしょうか。

答えは条件しだいです。柔道整復の往療料は1回2,300円。ただし算定基準には、歩行が困難で患家から求められた場合に限る、定期的・計画的な訪問は認めない、という線が引かれています。距離が片道4kmを超えると2,550円になり、16kmを超える往療は原則として認められません。

2026年7月の療養費改定でも、この金額と条件は変わっていません。以下、通知の文言を引きながら、算定できる場面とできない場面、1回の請求額の目安、あはきの訪問施術料との違いを順に見ていきます。出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

往療料を請求できるのは「歩けない患者に呼ばれた」とき

往療料の要件は、算定基準の注7に一文でまとめられています。

「往療料は、下肢の骨折又は不全骨折、股関節脱臼、腰部捻挫等による歩行困難等真に安静を必要とするやむを得ない理由により患家の求めに応じて患家に赴き施術を行った場合に算定できるものであり、単に患者の希望のみにより又は定期的若しくは計画的に患家に赴いて施術を行った場合には算定できないこと」。出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

読み解くと、満たすべき条件は2つです。ひとつは、歩行困難など「真に安静を必要とする」やむを得ない理由があること。もうひとつは、患家の求めに応じて出向いたこと。逆に、本人が「通うのが面倒だから」と希望しただけの訪問や、院の側で曜日を決めて回る訪問は、往療料の対象から外れます。

場面往療料根拠になる文言
腰部捻挫で立ち上がれず、家族から往診の依頼算定できる腰部捻挫等による歩行困難/患家の求め
下腿の骨折後、自宅で安静中に後療を頼まれた算定できる下肢の骨折又は不全骨折
歩けるが「家で受けたい」と本人が希望算定できない単に患者の希望のみ
毎週火曜に施設を回る契約をしている算定できない定期的若しくは計画的
同じマンションの2人を同じ日に施術1人分のみ同一の建築物・同一日(留意事項 第3の6)
往療料を算定できる場面・できない場面

出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)/出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」の一部改正について』(保医発0930第3号)(2016年)

表の例示は算定基準の文言に当てはめたもので、最終的に支給するかどうかは保険者が判断します。私たちは、迷う場面では「通院できない理由を一文で説明できるか」を目安にするのがよいと考えています。説明できないなら、その訪問は往療ではありません。

2,300円、4km超で2,550円――夜間と悪天候は倍になる

往療料の金額は算定基準の「初検、往療及び再検」の項にあります。基本は2,300円。注3で往療距離が片道4kmを超えた場合は2,550円とされ、注4で夜間、難路、暴風雨時・暴風雪時の往療は所定金額(4km超の金額を含む)の100分の100を加算します。つまり、条件が重なると金額は2倍です。出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

往療の条件片道4km以内片道4km超〜16km
通常2,300円2,550円
夜間・難路・暴風雨時・暴風雪時4,600円5,100円
片道16km超絶対的な理由がある場合以外は認められない同左
柔道整復の往療料(2026年7月1日施術分〜)

出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

柔道整復の往療料:距離と夜間・悪天候加算
出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月施術分〜)

4kmを超えても差額は250円にとどまります。距離加算というより、遠距離の区分がひとつあるだけ、と捉えたほうが実態に近いでしょう。

距離の起点――2軒目からは前の患家を起点に測る

同じ日に2戸以上の患家を続けて回ったときは、2番目以降の患家までの距離を施術所からではなく、それぞれ直前に訪れた患家から測ります(注5)。施術所から5km離れた団地に寄ってから、その500m先の家に行った場合、2軒目は4km以内の扱いです。出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

もうひとつの上限が片道16kmです。注6は「往療を必要とする絶対的な理由がある場合以外は認められない」としています。近くに施術所がない地域でもない限り、16kmを超える往療を保険で受けるのは難しいと考えておくべきでしょう。出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

同じ建物の複数患者は、往療料1回分

2016年10月施術分から、往療料の留意事項は「同一家屋内」ではなく「同一の建築物」を単位にしています。同じ建築物に住む複数の患者を同じ日に施術した場合、往療料は別々に算定できません。マンションや高齢者向け住宅でも同じです。ただし、やむを得ない理由があって同じ建物へ複数回赴いて施術した場合は、この限りではないとされています。出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」の一部改正について』(保医発0930第3号)(2016年)

2026年7月の改定で、往療料は据え置き

2026年7月1日施術分からの算定基準の改正では、初検料が1,550円から1,560円へ、再検料が410円から420円へ上がりました。新旧対照表の往療料の欄は、改正前も改正後も2,300円です。専門委員会の改定案でも、往療料(2,300円)、(4km超2,550円)は据え置きの項目として並んでいます。出典: 厚生労働省 保険局長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について』(保発0601第4号)(2026年)/出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会『柔道整復療養費の令和8年度料金改定(案)』(第35回 資料柔-1)(2026年)

一方で、往療に出たときの施術料そのものは変わっています。打撲・捻挫の後療料は505円から550円へ上がり、2部位目は所定料金の80%になりました。往療の請求額を見直すときは、往療料ではなく施術料側の変化を確かめたほうが早い。改定の全体像は柔道整復療養費の2026年改定にまとめています。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

1回の往療でいくらになるか――腰部捻挫で考える

ここでは、施術所から3kmの自宅で腰部捻挫により立てなくなった患者を、受傷当日に往療で初検した場面を想定します。1部位、昼間の往療、明細書を無償で交付する施術所とします。

項目初検の日2回目(初回の後療)
初検料1,560円―
初検時相談支援料100円―
再検料―420円
往療料(4km以内)2,300円2,300円
施療料/後療料(捻挫)770円550円
冷罨法料80円―
明細書発行加算10円10円
合計(療養費の額)4,820円3,280円
腰部捻挫・往療の計算例(端数処理前)

出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)

2回目は受傷から5日以内の後療と想定し、温罨法料と電療料は加算していません。算定基準の備考は、捻挫の場合、受傷の日から起算して5日間は温罨法と電療の加算を行わないとしています。冷罨法は、捻挫では受傷の日かその翌日の初検の日に限られます。

往療で初検した日の療養費の内訳(腰部捻挫・1部位の計算例)
出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』の料金から計算

初検の日でも、合計4,820円のうち2,300円、ほぼ半分が往療料です。2回目になると、3,280円のうち7割を往療料が占めます。往療は施術そのものより移動の評価が大きい請求であり、保険者が内容を確かめたくなるのもこの構造のためでしょう。

患者が支払う一部負担金は、この療養費の額に負担割合をかけて求めます。3割負担なら初検の日はおよそ1,450円、2回目はおよそ980円です(端数処理前)。受領委任での請求の流れは受領委任制度の仕組みと整骨院の保険請求の仕組みを参照してください。

“毎週の訪問”をしたいなら、往療料とは別の仕組みになる

在宅の高齢者を定期的に回る訪問は、柔道整復の往療料では受け止められません。定期的・計画的な訪問を、算定基準がはっきり除外しているからです。

同じ療養費でも、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧(あはき)は考え方が違います。あはきでは往療料と施術料を包括した訪問施術料が設けられ、同じ日・同じ建物で施術した患者数によって区分されています。2026年4月の専門委員会の案では、訪問施術料1(1人)から3(3〜9人)に加え、10人以上の4と20人以上の5を新設するとされました。出典: 厚生労働省 あはき療養費検討専門委員会『あはき療養費の令和8年度料金改定(案)について』(資料あ-1)(2026年4月30日)

柔道整復の往療料あはきの訪問施術料(2026年改定案)
考え方施術料に往療料を上乗せ訪問した施術そのものの料金
対象になる訪問歩行困難等で患家に求められたとき通所困難で、医師の同意に基づき訪問したとき
月16回以降の施術往療料の逓減の規定はない所定料金の50%(案)
同じ建物の複数患者往療料は1回分患者数で料金区分が変わる
柔道整復の往療料と、あはきの訪問施術料の違い

出典: 岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』(令和8年7月1日施術分より適用)/出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」の一部改正について』(保医発0930第3号)(2016年)/出典: 厚生労働省 あはき療養費検討専門委員会『あはき療養費の令和8年度料金改定(案)について』(資料あ-1)(2026年4月30日)

柔道整復師が高齢者の自宅や施設で定期的に関わりたいなら、介護保険サービスの機能訓練指導員として働く道や、保険外の訪問メニューを作る道があります。前者は柔道整復師が機能訓練指導員として働く方法、後者は自費メニューと保険の線引きで扱いました。編集部は、往療で定期訪問を続けるより、こうした別の枠組みに乗せ替えるほうが院にも患者にも無理がないと見ています。

電話を受けてから往療料を付けるまでの判断

柔道整復の往療料を算定するまでの判断(岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』注3〜7をもとに作成)
柔道整復の往療料を算定するまでの判断(岐阜県『柔道整復師の施術料金の算定方法』注3〜7をもとに作成)

同じ日に同じ建物で複数の患者を施術したときは、ここで出た往療料を1回分だけ請求します。

往療を引き受ける前に、院で決めておきたい4つのこと

往療料は請求額に占める割合が大きく、患者への照会や返戻の対象になりやすい項目です。照会が来てから慌てないよう、受付の段階で次のことを決めておくと対応がぶれません。照会の受け方は保険者からの患者照会への対応、返戻の傾向は療養費の返戻理由と対策で整理しています。

  1. 依頼を受けた日時と、依頼したのが誰か(本人か家族か)を施術録に残す
  2. 歩行が困難だった具体的な理由(負傷名、立ち上がれない・階段を下りられない等)を書く
  3. 通院できる状態に戻った日を記録し、その日以降は往療料を付けない
  4. 片道4km・16kmの線を地図で確かめ、2軒目以降は前の患家からの距離で判断する

もうひとつ、院長1人の施術所が往療に出ると、そのあいだ院を閉めることになります。往療を受ける曜日や時間帯の上限を院内で決めておく、スタッフに院を任せられる体制を作る、といった運営面の判断も避けて通れません。人員配置と給与の考え方はスタッフの給与と歩合の設計で取り上げました。

ぎっくり腰の患者から「来てほしい」と頼まれる場面は少なくありません。医療機関の受診を先にすすめるべきケースはぎっくり腰は整骨院と整形外科のどちらへ行くかで触れています。

ここが気になる

Q
往療料は、訪問するたびに毎回算定できますか?
A

算定基準は往療料の回数に上限を設けていません。ただし毎回、歩行困難などのやむを得ない理由と患家の求めがあることが前提です。通院できる程度に回復した後も同じ曜日に訪ね続けると、定期的・計画的な訪問とみなされ、往療料は算定できなくなります。

Q
「夜間」は何時からを指しますか?
A

算定基準の注4は夜間・難路・暴風雨時・暴風雪時の加算を定めていますが、夜間の時間帯そのものは注に書かれていません。初検料の時間外加算(施術時間外・休日、午後10時〜午前6時)とは別の規定です。判断に迷うときは、受領委任の窓口である地方厚生(支)局か保険者に確認するのが確実です。

Q
施設に入所している患者を訪問した場合はどうなりますか?
A

施設でも、歩行困難で求めに応じた往療であれば対象になりえます。ただし同じ建物で同じ日に複数の入所者を施術した場合、往療料は1回分です。施設と契約して決まった日に回る形は定期的・計画的な訪問にあたり、往療料は算定できません。

Q
往療料にも患者の窓口負担はかかりますか?
A

かかります。往療料は療養費の額の一部なので、一部負担金は往療料を含めた合計に負担割合をかけて計算します。労災や生活保護など、健康保険以外の制度で施術するときは扱いが異なるため、整骨院での労災保険の取り扱いや生活保護の医療扶助による施術もあわせて確認してください。

Q
保険の条件に当てはまらない訪問を、自費で行うのは問題ありませんか?
A

療養費の対象にならない訪問を保険外のサービスとして提供すること自体は、院の判断で可能です。その場合は料金を事前に示し、保険で請求する施術と同じ日に混ぜないなど、保険請求との線引きを明確にしておく必要があります。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

参考・出典

参照日: 2026年10月29日

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