「明細書は、欲しいと言われた患者さんにだけ渡せばいい」。整骨院の受付でいまもときどき聞く考え方ですが、2024年10月からは多くの院で通用しなくなりました。
明細書を無料で毎回渡す義務があるかどうかは、院の規模ではなく、レセコンに明細書を出す機能が付いているかどうかで決まります。2026年7月からは、明細書に負傷名か施術部位を書くことと、1か月分をまとめて渡すときに患者さんの文書確認を取ることが加わりました。義務がない院でも、9月7日の訂正で同じ書き方が求められています。
厚生労働省の通知を原文で読み、どの院に何が求められているのか、加算はいくら取れるのか、受付の掲示はどう書けばよいのかを順に整理しました。
「常勤3人未満なら関係ない」はもう古い
2024年9月までは、明細書の無償交付が義務になるのは「明細書発行機能が付いたレセコンを使っている」かつ「常勤職員が3人以上いる」施術所でした。常勤職員には柔道整復師だけでなく事務職員も含みます。ひとりで開業している院や、施術者2人だけの院は、この条件から外れていました。
2024年10月1日の改正で、後半の「常勤職員3人以上」が消えました。現在の通知の書き方は「明細書交付機能が付与されているレセプトコンピュータを設置している施術所」です。人数は関係ありません。
出典: 厚生労働省 保険局長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について(保発0529第3号)』(2024年)
ここで見落としやすいのは「設置している」という言葉です。改正前は「使用している」でした。機能があるのに設定をオフにしている、印刷用紙を用意していない、という状態でも、機能付きのレセコンが院に置いてあれば義務の側に入ると読むのが自然でしょう。
編集部は、いま市販されている柔整向けレセコンで明細書を出せない製品を探すほうが難しいと見ています。自院が義務の対象かどうか迷ったら、まず販売元に「明細書交付機能の有無」を問い合わせるのが近道です。
あなたの院はどの区分か
2026年6月1日付の通知は、施術所を3つに分けて書いています。①機能付きレセコンを置いている院、②機能付きレセコンはないが、院の判断で無償交付している院、③そのどちらでもない院です。
| 区分 | 交付のしかた | 費用 | 受付での掲示 |
|---|---|---|---|
| ① 明細書交付機能付きレセコンを設置 | 支払いのたびに交付(原則) | 無償 | 交付する旨+会計窓口の文言(様式6) |
| ② ①以外で、院の判断で無償交付 | 支払いのたびに交付(原則) | 無償 | 交付する旨+会計窓口の文言(様式6) |
| ③ ①②のどちらでもない | 患者から求められたら交付 | 有償も可(実費相当まで・事前説明と同意) | 交付の手続き・費用の有無と金額(様式7) |
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について(保医発0601第3号)』(2026年)
①の院は、正当な理由がない限り無償で交付しなければなりません。この「正当な理由」について、2024年5月31日の厚生労働省の事務連絡(疑義解釈)は「患者本人から不要の申し出があった場合」と答えています。院の側の都合、たとえば会計が混むから、紙代がかかるから、は理由になりません。
出典: 静岡県 健康福祉部『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)令和6年10月版』(2024年)
③の院も、明細書を出さなくてよいわけではありません。求められれば交付します。費用を取る場合は、あらかじめ金額を説明して同意を得てから。2026年の改正で「事前の説明と同意」がはっきり書き加えられました。
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について(保医発0601第3号)』(2026年)

③のまま有償で交付する院は、レセコンの有無と明細書を有償で交付する旨を、所在地の地方厚生(支)局長に届け出る必要があります(別紙様式3の1Ⅱ)。届け出た院が無償交付に切り替えるときは、加算を算定する月の前月末日までに別の届出(別紙様式3の1Ⅲ)を出します。
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『算定基準の実施上の留意事項等の一部改正について(保医発0601第1号)』(2026年)
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2026年7月施術分から変わった3つの書き方
令和8年度の療養費改定にあわせて、明細書の中身と渡し方が見直されました。適用は2026年7月1日の施術分からです。
| 項目 | 2026年6月まで | 2026年7月から |
|---|---|---|
| 記載内容 | 療養費の算定項目が分かること | 算定項目+負傷名(部位及び負傷)または施術部位 |
| 1か月分まとめての交付 | 患者の求めに応じて可 | 患者の求めを文書(様式5)で明示的に確認した場合に可 |
| 確認書の保存 | 規定なし | 画面上で署名を受け、電磁的記録で保存してよい |
| 加算の名称と回数 | 明細書発行体制加算 10円・月1回 | 明細書発行加算 10円・交付のたび |
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について(保医発0601第3号)』(2026年)/厚生労働省 保険局長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について(保発0601第4号)』(2026年)/厚生労働省 保険局医療課長通知『算定基準の実施上の留意事項等の一部改正について(保医発0601第1号)』(2026年)
負傷名か施術部位を書く
これまでの明細書は、初検料・後療料・温罨法料といった料金の項目が分かれば足りました。7月からは「右足関節捻挫」のような負傷名か、少なくとも施術した部位が分かる記載が要ります。患者さんが自分の受けた施術と、保険者に請求された内容を照らし合わせられるようにするためです。
レセコンの帳票が古い版のままだと、負傷名の欄が出てきません。7月以降にレセコンの更新を当てたか、明細書の見本を1枚印刷して確かめてください。
まとめて渡すなら確認書を取る
毎回渡すのが原則で、1か月単位のまとめ交付は例外です。例外を使うには、患者さんから「まとめてほしい」という求めがあることを、別紙様式5で文書として確認しておく必要があります。タブレットの画面に様式を表示して署名してもらい、データで保存する方法も認められました。
院が勝手に「うちは月末にまとめて渡します」と決めることはできない、ということです。
9月7日の訂正で③の院にも同じルール
6月の通知では、負傷名の記載と様式5による確認は①②の院の項目にだけ書かれていました。2026年9月7日の事務連絡がこれを訂正し、③の院、つまり求められたときだけ交付する院の明細書にも、負傷名または施術部位の記載と、まとめ交付時の文書確認を求めています。
出典: 厚生労働省 保険局医療課 事務連絡『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」等の一部訂正について』(2026年9月7日)
訂正は見落とされがちです。夏の時点で「③だからうちは関係ない」と判断した院は、もう一度様式を見直したほうがよいと私たちは考えています。
- 2024年10月1日義務の対象が広がる「常勤職員3人以上」の条件がなくなり、機能付きレセコンを置く院はすべて毎回無償交付に。加算は13円から10円(月1回)へ
- 2025年3月12日完全義務化の議論が浮上オンライン請求のワーキング・グループが、導入までに明細書発行の完全義務化を議論すべきと整理
- 2026年6月1日改正通知が出る負傷名・施術部位の記載、まとめ交付の文書確認、加算の名称変更を通知
- 2026年7月1日新ルールの適用7月施術分から、明細書発行加算を交付のたびに10円算定
- 2026年9月7日一部訂正求められたときだけ交付する院(③)にも、負傷名の記載と文書確認を適用
加算は1回10円、月8回来院なら80円
明細書発行加算を算定できるのは、有償交付の届出をしていない院が、明細書を無償で交付する旨を院内に掲示し、実際に無償で交付したときです。金額は1回10円で、2026年7月からは交付するたびに算定できます。ただし、患者さんの求めで1か月分をまとめて渡した場合は、その月は1回だけです。
出典: 厚生労働省 保険局長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について(保発0601第4号)』(2026年)/厚生労働省 保険局医療課長通知『算定基準の実施上の留意事項等の一部改正について(保医発0601第1号)』(2026年)
算定のしかたが変わると、同じ患者さんでも加算の額が大きく変わります。月に8回来院する患者さん1人を例に、算定ルールどおりに計算しました。

1人あたり月80円は小さな金額です。それでも、1日30人が来院する院で全員に毎回交付すれば、1日300円、月に25日開けておよそ7,500円。紙とインクの代金はまかなえる計算です。数字は算定ルールからの試算で、実際の請求額は部位数や窓口負担とは関係なく、交付した回数で決まります。
算定の細かな条件として、静岡県が保険者向けにまとめた手引きは次の点を挙げています。再発行した明細書で2回目の加算は取れません。一部の患者さんだけ加算を取らない扱いも認められていません。公費負担医療で窓口負担がない患者さんにも明細書は交付します(全額公費の場合を除く)。
出典: 静岡県 健康福祉部『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)令和6年10月版』(2024年)
改定全体の料金表や逓減の変更は柔道整復療養費の2026年改定に、療養費が院に支払われる流れは整骨院の保険請求の仕組みにまとめています。
明細書に載せる項目と、受付に貼る文言
厚生労働省の標準様式(別紙様式2・3)は、次の欄で組み立てられています。様式3は領収証と明細書を1枚にまとめた「領収証兼明細書」で、受付の手間を減らしたい院にはこちらが向きます。
| 区分 | 主な欄 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| 初検料・再検料等 | 初検料/初検時相談支援料/再検料 | 算定した日の金額 |
| 施術料等 | 負傷カ所数/整復・固定・施療料/後療料/温罨法料・冷罨法料/電療料/金属副子等加算/柔道整復運動後療料 | 負傷名または施術部位を併記 |
| その他 | 往療料/施術情報提供料/明細書発行(体制)加算 | 算定した場合のみ |
| 合計 | 保険分の計/一部負担金/保険外/合計金額 | 保険外の自費分を分けて書く |
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について(保医発0601第3号)』(2026年)
専用の帳票でなくてもかまいません。療養費の支給申請書の様式に発行年月日を付けて渡す、レジで印刷して必要事項を手書きで足す、様式を印刷しておき金額を手で書く、パソコンで作った様式に入力して印刷する。どれも明細書を交付したものとして扱われます。
出典: 厚生労働省 保険局医療課長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について(保医発0601第3号)』(2026年)
会計窓口の掲示
①②の院は、明細書を交付する旨を院内に掲示し、会計窓口には次の趣旨の文言を出します。参考の様式は別紙様式6です。
明細書は、施術内容に関する情報が記載されるものです。明細書の発行を希望されない方は、会計窓口までお申し出ください。(厚生労働省 保医発0601第3号が示す掲示文言)
③の院は、希望する患者さんには交付すること、その手続き、費用を取るかどうか、取るならいくらかを掲示します(別紙様式7)。
掲示物に「明細書を出すから安心」のような宣伝文句を足すと、広告の制限に触れるおそれがあります。院内掲示と院外の広告の線引きは整骨院の広告規制で確認してください。
「明細書をもらっていない」と言われたとき
患者さんの側から見ると、明細書は自分の受けた施術と、保険者に請求された内容を確かめる唯一の紙です。保険者から送られてくる受診照会(施術内容の確認の問い合わせ)に答えるときも、手元に明細書があれば、施術日や部位を記憶ではなく書面で答えられます。
①の院で「不要」の申し出がないのに渡していなかったのなら、通知に沿っていない状態です。過去分を求められたら、施術録をもとに再発行するのが筋でしょう。再発行分は加算の対象になりません。保険者からの照会が多い院は、返戻を減らす請求前の確認もあわせて見直すと手戻りが減ります。
領収証は明細書とは別の義務で、受領委任を取り扱う院は、窓口負担を受け取るときに正当な理由がない限り無償で交付します。医療費控除の申告では、柔道整復師による施術の対価のうち、治療に直接関係するものが対象になると国税庁は案内しています。疲れを癒す、体調を整えるといった目的の施術は含まれません。
出典: 厚生労働省 保険局長通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について(保発0529第3号)』(2024年)/国税庁『タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費』(2026年参照)
自費メニューの領収書の書き方や消費税の扱いは整骨院のインボイスと消費税、院側の経費の整理は接骨院の確定申告と経費が参考になります。
完全義務化は来るのか
いま義務がないのは③の院だけです。その③も、なくなる方向で議論が進んでいます。柔道整復療養費のオンライン請求を検討する厚生労働省のワーキング・グループは、2025年3月の中間とりまとめで、すべての患者が自分の受けた施術を把握できるよう、オンライン請求の導入までにできるだけ早く、施術所での明細書発行の完全義務化について議論を進めるべきだと書きました。
出典: 厚生労働省 柔道整復療養費のオンライン請求導入等に関するワーキング・グループ『中間とりまとめ』(2025年3月12日)
時期は決まっていません。ただ、受付の流れはマイナ保険証での資格確認、明細書の交付、将来のオンライン請求とひと続きになっていきます。資格確認の運用はマイナ保険証の資格確認に、請求のオンライン化の見通しは療養費のオンライン請求はいつからかに書きました。
編集部の判断をひとつ書いておきます。③の院がいまから有償交付の届出を続ける利点は、ほとんどありません。毎回無償で渡し、1回10円を算定するほうが、患者さんの信頼の面でも、制度の行き先から見ても筋がよいと考えます。
レセコンを入れ替える予定がある院は、負傷名入りの明細書と様式5の画面署名に対応しているかを比較の項目に入れてください。製品の違いは接骨院向けレセコン比較で比べています。受領委任の取扱いそのものは受領委任の仕組みと償還払いとの違いが詳しいです。
受付で迷いやすい4つの場面
- Q患者さんが「明細書はいらない」と言いました。渡さなくてよいですか?
- A
本人から不要の申し出があれば、それが「正当な理由」にあたります。厚生労働省の疑義解釈がそう答えています。ただし家族が代わりに断った場合などは、本人の意思かどうかを確かめておくと後で揉めません。
- Q領収証と明細書を1枚にまとめてもよいですか?
- A
かまいません。厚生労働省の標準様式にも「領収証兼明細書」(別紙様式3)があります。負傷名または施術部位の記載が必要なのは、まとめた場合も同じです。
- Q月まとめを希望した患者さんに、翌月分も続けてまとめて渡せますか?
- A
様式5で求めを確認していれば、1か月単位のまとめ交付は続けられます。その月の加算は1回だけです。また、複数月分をある月にまとめて渡しても、加算は同じ月の中で1回に限られます。
- Q手書きの明細書でも加算は取れますか?
- A
取れます。様式を印刷しておき金額を手書きする方法も、通知で明細書の交付として扱われています。無償で交付し、その旨を院内に掲示していることが条件です。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
参考・出典
- 厚生労働省 保険局医療課長通知「「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について」(保医発0601第3号、2026年6月1日/東北厚生局掲載)
- 厚生労働省 保険局医療課 事務連絡「「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」等の一部訂正について」(2026年9月7日)
- 厚生労働省 保険局長通知「「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について」(保発0601第4号、2026年6月1日)
- 厚生労働省 保険局医療課長通知「「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」の一部改正について」(保医発0601第1号、2026年6月1日)
- 厚生労働省 保険局長通知「「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について」(保発0529第3号、2024年5月29日)
- 厚生労働省 保険局長通知「「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について」(保発0529第4号、2024年5月29日)
- 静岡県 健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)令和6年10月版」
- 厚生労働省 柔道整復療養費のオンライン請求導入等に関するワーキング・グループ「中間とりまとめ」(2025年3月12日)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」
参照日: 2026年11月6日

