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整骨院スタッフの給与設計|歩合給の最低賃金・残業代を東京の数字で試算

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東京都の最低賃金は、2026年10月1日から時給1,280円になりました。1日8時間・年間休日105日で働くスタッフなら、月給はおよそ221,824円を下回れません。「基本給20万円+歩合」という求人票は、東京ではもう基本給の部分だけで最低賃金に届かない計算です。

全国加重平均も1,121円から1,177円へ56円上がり、引上げ率は5.0%でした。歩合を足せば届くのか、歩合給の残業代はどう計算するのか、完全歩合は認められるのか。スタッフ2〜5人の整骨院を想定して、給与の組み立て方を法律の条文と国の統計から順に確かめていきます。出典: 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年)

固定給・固定給+歩合・完全歩合、3つの型の違い

整骨院の給与は、大きく3つの型に分かれます。歩合とは、施術件数や自費売上など成果に応じて変わる賃金のことで、法律では「出来高払制その他の請負制」と呼ばれます。インセンティブという言い方もしますが、法律上の扱いは同じです。

型中身院にとっての利点デメリット
固定給月給を固定。賞与や昇給で差をつける人件費が読みやすい。最低賃金の確認が簡単成果を上げても月給に出ないため、売上を作るスタッフほど不満が出やすい
固定給+歩合基本給に、施術件数や自費売上に応じた歩合を上乗せ売上と人件費が連動する。固定部分で生活を支えられる歩合の計算式と残業代の計算が複雑になる
完全歩合(雇用)賃金の全部が歩合。保障給の定めが必要売上が少ない月は人件費も下がる保障給と最低賃金の差額払いが必要で、思ったほど人件費は下がらない

編集部は、スタッフを雇う整骨院の多くには「固定給+歩合」が合うと考えています。理由は単純で、残りの2つは整骨院の売上の波とかみ合わないからです。固定給だけでは繁忙期に頑張ったスタッフに報いにくく、完全歩合は閑散期に最低賃金との差額を払うことになり、結局は固定給と同じ負担が残ります。

なお、業務委託として「完全歩合」で施術を任せる形もありますが、これは雇用とは別の話です。契約の名前を変えても実態で判断されるので、後半の章で詳しく見ていきます。独立を考えている柔道整復師の側から見た収入は柔道整復師が独立したときの年収にまとめています。

給与の相場は統計でどこまで分かるか

「柔道整復師の給料の相場」を国の統計で見ようとすると、壁がひとつあります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、柔道整復師は単独で集計されていません。鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師と一緒に「その他の保健医療従事者」という区分に入っています。

その区分の令和7年の平均は、月給(きまって支給する現金給与額)31万8,600円、年間賞与71万8,300円で、月給×12+賞与で計算した年収は約454万円でした(企業規模10人以上・男女計、平均37.6歳)。出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(2026年)

ただし、整骨院の多くは従業員10人未満の小さな事業所です。同じ区分を企業規模別に見た令和6年の数字では、5〜9人規模の年収は約305万円まで下がります。

企業規模月給年間賞与年収(試算)
1,000人以上32.8万円83.3万円約477万円
100〜999人29.7万円65.1万円約422万円
10〜99人28.3万円45.0万円約385万円
5〜9人23.0万円28.7万円約305万円

出典: 厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』(2025年)。区分は「その他の保健医療従事者」。年収は月給×12+賞与で編集部が算出

規模による差の大部分は賞与です。5〜9人規模の賞与は年28.7万円で、1,000人以上の3分の1ほど。小さな院が大手グループと採用で競うなら、賞与の額よりも、月々の歩合で成果を見える形にしたほうが伝わりやすい面があります。

歩合の率そのもの(売上の何%を払うか)については、国や業界団体がまとめた統計は見当たりませんでした。求人サイトに出ている率は院ごとの条件の寄せ集めで、相場として扱うには根拠が弱い。ここでは率を「想定値」として置き、法律の線の内側に収まるかを確かめる方法を説明します。職種ごとの年収の推移は柔道整復師の給料・年収と鍼灸師の給料・年収で詳しく扱っています。

“歩合込みで最低賃金以上”は、どう確かめる?

最低賃金は時給で決まっている。だから月給制のスタッフは、月給を月の所定労働時間で割って時給に直し、その地域の最低賃金と比べます。歩合給の部分は計算の仕方が違い、歩合の総額を「その月に実際に働いた総労働時間」で割ります。残業した時間も分母に入るのがポイントです。

出典: e-Gov法令検索『最低賃金法施行規則』第2条第1項第3号・第5号

もうひとつ見落としやすいのが、最低賃金の計算に入れない賃金です。残業代・休日出勤手当・深夜手当、賞与のように1か月を超える期間ごとに払う賃金、臨時の賃金は入りません。固定残業代も残業代なので入りません。地域別最低賃金の決定では、精皆勤手当・通勤手当・家族手当も算入しないと定められています。

出典: e-Gov法令検索『最低賃金法』第4条、『最低賃金法施行規則』第1条・第2条第1項第5号

主な都道府県について、令和8年度の最低賃金と、月173.3時間働く場合に基本給と諸手当(算入できるもの)で最低限必要になる月額をまとめました。

都道府県最低賃金(時給)改定前から発効日(2026年)月173.3時間の下限
東京1,280円+54円10月1日221,824円
神奈川1,279円+54円10月1日221,651円
大阪1,231円+54円10月1日213,332円
愛知1,195円+55円10月1日207,094円
福岡1,114円+57円10月4日193,056円
北海道1,131円+56円10月1日196,002円
京都1,180円+58円11月16日204,494円
沖縄1,086円+63円12月2日188,204円

出典: 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年)。月の下限額は1日8時間・年間休日105日(月平均173.3時間)を想定して編集部が算出

主な都道府県の地域別最低賃金(時給)
出典: 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」

京都は11月16日、沖縄は12月2日と、発効日が遅い県もあります。給与の締め日と発効日がずれる月は、発効日以降の労働時間だけを新しい金額で確かめる必要があり、給与ソフトの設定を変える日を間違えやすいところです。

計算してみる:固定給+歩合で東京の最低賃金を満たすか

東京都の整骨院で、月の所定労働時間173.3時間、残業15時間(総労働188.3時間)、歩合3万円のスタッフを想定します。

基本給22.5万円+歩合3万円基本給18万円+歩合3万円
固定部分の時給換算22.5万円÷173.3時間=1,298円18万円÷173.3時間=1,039円
歩合部分の時給換算3万円÷188.3時間=159円3万円÷188.3時間=159円
合計1,458円1,198円
東京都の最低賃金1,280円と比べて上回る下回る(差額の支払いが必要)

出典: 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年)・最低賃金法施行規則第2条をもとに編集部が試算(端数は四捨五入)

基本給18万円+歩合3万円は、月21万円です。月給だけを見ると東京の下限(約22.2万円)に近いのに、歩合は残業時間まで含めた総労働時間で割るため、時給換算では1,200円を切ってしまう。歩合を「足せば届く」と考えるのは危険です。

最低賃金を下回る部分の契約は無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。本人が同意していても変わりません。出典: e-Gov法令検索『最低賃金法』第4条、『最低賃金法施行規則』第1条・第2条第1項第5号

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

歩合給にも残業代はつく。計算は「×0.25」

歩合給を払っているから残業代は不要、という考え方は通りません。労働基準法第37条の割増賃金は、歩合給にもかかります。違うのは計算の仕方です。

固定給の残業代は「時給換算額×1.25×残業時間」で計算します。歩合給は、歩合の総額を総労働時間で割った額が「通常の賃金」になり(労基法施行規則第19条第1項第6号)、そのうち1.0の部分はすでに歩合として払われていると考えるため、上乗せは0.25だけになります。

出典: e-Gov法令検索『労働基準法』第37条、『労働基準法施行規則』第19条第1項第6号、計算例は兵庫労働局委託事業兵庫働き方改革推進支援センター資料

残業代の内訳計算式金額(残業15時間)
固定給(22.5万円)の部分22.5万円÷173.3時間×1.25×15時間24,344円
歩合給(3万円)の部分3万円÷188.3時間×0.25×15時間597円
合計24,941円

前章と同じ想定で編集部が試算(1円未満四捨五入)

歩合部分の割増は597円と小さい額ですが、払っていなければ未払い賃金です。賃金請求権の時効は当分の間3年なので、何年も同じ計算で払っていると、まとめて請求されたときの額はふくらみます。

深夜(午後10時〜午前5時)に施術や片付けをした場合も、同じ考え方で歩合給に深夜割増(×0.25)がかかります。夜間診療をしている院は、ここも給与ソフトの設定を見直したいところです。

完全歩合は違法? 保障給と業務委託の線引き

雇用契約での完全歩合そのものは、法律で禁止されてはいません。ただ、労働基準法第27条は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定めています。患者が少なかった月でも、働いた時間に応じた額は払う、という決まりです。

出典: e-Gov法令検索『労働基準法』第27条

保障給の金額は条文に書かれていません。とはいえ最低賃金の決まりは別にかかるので、少なくとも働いた時間×最低賃金は下回れない。

たとえば東京都で、ある月の歩合が20万円、総労働時間が200時間だったとします。時給換算は1,000円で、1,280円に280円足りません。200時間分で56,000円を追加で払う必要があります。完全歩合は「売上がなければ払わなくてよい」仕組みではありません。

出典: 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年)・最低賃金法施行規則第2条第1項第5号をもとに編集部が試算

業務委託なら最低賃金は関係ない?

業務委託契約の施術者は労働者ではないので、最低賃金や残業代の決まりはかかりません。問題は、契約書の名前ではなく働き方の実態で判断されることです。

厚生労働省が今も示している昭和60年の労働基準法研究会報告では、労働者かどうかを「指揮監督下の労働」と「報酬の労務対償性」で判断するとしています。具体的には、仕事の依頼を断る自由があるか、業務の進め方に指揮命令を受けているか、勤務時間や場所が拘束されているか、本人の代わりに別の人が施術してもよいか、といった点を見ます。

出典: 労働基準法研究会報告『労働基準法の「労働者」の判断基準について』(1985年12月19日)

見られる点雇用に近い(労働者と判断されやすい)業務委託に近い
予約の割り当て院が予約を割り振り、断れない受けるかどうかを本人が決める
勤務時間シフトで出勤時刻・退勤時刻が決まっている施術する時間帯を本人が決める
施術の進め方院のマニュアルどおりに施術させる施術方法は本人に任せる
代わりの人本人以外が来ることは認めない本人の判断で代わりを立てられる
道具・費用院の設備・消耗品をすべて使う本人が道具や費用を負担する

出典: 労働基準法研究会報告(1985年)の判断要素をもとに編集部が整骨院向けに整理

シフトで出勤させ、院の予約表どおりに施術させ、院の手順で施術してもらう。この働き方で「業務委託・完全歩合」としていれば、労働者と判断される見込みが高いと私たちは見ています。後から未払いの最低賃金差額や残業代、社会保険の加入まで問われることになり、浮いたはずの人件費では足りません。

繁忙月と閑散月で、3つの型の人件費はどう動くか

型ごとの違いは、売上が落ちた月にいちばんはっきり出ます。東京都の整骨院で、施術スタッフ1人の自費売上が繁忙月60万円、閑散月25万円だったと仮定して、1か月の総労働時間を所定どおり173.3時間(残業なし)として比べました。歩合の率はいずれも説明のための想定値です。

型(想定の条件)繁忙月(自費売上60万円)閑散月(自費売上25万円)差
固定給:月給25万円250,000円250,000円0円
固定給+歩合:基本給22.5万円+30万円超過分の10%255,000円225,000円30,000円
完全歩合:自費売上の40%240,000円221,824円
歩合は10万円だが最低賃金との差額を加算
18,176円

出典: 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年)をもとに編集部が試算。社会保険料の会社負担・残業代は含まない

完全歩合は、繁忙月こそ人件費が240,000円まで上がるのに、閑散月は最低賃金との差額を足して221,824円までしか下がりません。下がり幅は18,176円で、固定給+歩合の30,000円よりも小さい。閑散月の負担は、固定給25万円とほとんど変わらない水準です。売上が落ちた月に院を助ける効果は、思われているほど大きくありません。

逆に、固定給+歩合は閑散月の負担が基本給で止まり、繁忙月は売上が増えた分の一部だけが人件費に回ります。月ごとの売上の波が大きい整骨院では、この形のほうが資金繰りを読みやすい。売上の季節変動や1人あたりの売上の目安は、整骨院の売上の平均で整理しています。

もうひとつ、この表には出てこない費用があります。社会保険料の会社負担です。給与が増えれば会社負担も増えるので、歩合を設計するときは、歩合の額に会社負担分を上乗せした額で院の利益が残るかを確かめておく必要があります。

ノルマ未達の減給、研修費の返還はどこまで許される?

歩合を入れると、逆方向の仕組みも作りたくなります。売上目標に届かなかったら減らす、早く辞めたら研修費を返してもらう、というものです。どちらも労働基準法の線があります。

  • ノルマ未達のペナルティ:歩合が「目標を超えた分に払う」設計なら、届かなかった月に歩合がゼロになるのは問題ありません。一方、基本給から差し引くのは減給の制裁にあたり、就業規則に定めたうえで1回の額は平均賃金の1日分の半額、総額は1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1が上限です(第91条)
  • 研修費の返還:「1年以内に辞めたら研修費30万円を返す」といった約束は、違約金や損害賠償額の予定を禁じた第16条に触れるおそれがあります
  • 給料からの天引き:賃金は全額を払うのが原則です(第24条)。税金や社会保険料のほかに制服代や物販のノルマ分を差し引くなら、労使協定が必要になります

出典: e-Gov法令検索『労働基準法』第16条・第24条・第91条

歩合は「上に積む」もの、と割り切って設計すると、こうした問題はほとんど起きません。

給与表をつくる順番

ここまでの法律の線を踏まえて、整骨院のスタッフの給与を組み立てる順番を図にしました。

整骨院スタッフの給与設計の流れ(編集部作成)
整骨院スタッフの給与設計の流れ(編集部作成)

1〜2 基本給は「歩合ゼロでも最低賃金以上」に

最初に決めるのは、歩合が1円も出なかった月でも最低賃金を満たす基本給です。東京なら月173.3時間で約22.2万円、大阪なら約21.3万円、福岡なら約19.3万円が下限になります。所定労働時間を短くすれば、同じ月給でも時給換算は上がります。

資格手当や施術管理者手当のように毎月決まって払う手当は、最低賃金の計算に入れられます。皆勤手当・通勤手当・家族手当は入らないので、ここで数えないよう注意してください。

3〜4 歩合の対象と計算式は、スタッフが自分で計算できる形に

歩合の対象は、院が増やしたいものに合わせます。自費施術の売上、施術件数、指名件数、物販の売上がよく使われます。保険施術の件数を歩合の対象にするかは悩むところで、編集部は慎重派です。件数を追うほど頻回・長期の施術が増え、療養費の支給基準と食い違うおそれがあるためです。

計算式は「自費売上のうち月30万円を超えた分の10%」のように、スタッフが自分の売上から計算できる形にします(率は想定値)。売上の締め日と支払月、退職した月の扱い、返金があった場合の扱いまで書いておくと、後の揉め事が減ります。自費施術の組み立ては自費施術への移行も参考になります。

5〜6 残業代と求人票

固定残業代を使う場合、求人票や募集要項には次の3点をすべて書く必要があります。若者雇用促進法に基づく指針で求められている内容です。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法
  3. 固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に割増賃金を追加で払うこと

出典: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク『固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。』

常時10人以上を雇う院は、賃金の決め方を就業規則に定めて労働基準監督署に届け出る義務があります(第89条)。10人未満でも、歩合の計算式は書面で渡しておくのが安全です。求人票の書き方そのものは接骨院の求人の出し方で詳しく扱っています。出典: e-Gov法令検索『労働基準法』第89条

労働条件通知書に書いておくこと

採用したら、労働条件を書面で渡します。労働基準法第15条と施行規則第5条では、賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切りと支払の時期、昇給に関する事項を明示するよう定めています。歩合給はまさに「計算の方法」なので、計算式そのものを書くのが筋です。

出典: e-Gov法令検索『労働基準法』第15条、『労働基準法施行規則』第5条

編集部が書いておきたいと考える項目を、整骨院向けに並べるとこうなります。歩合の対象となる売上の範囲(税込か税抜か、物販を含むか)、計算の起点となる金額と率、売上の締め日と歩合を払う月、患者への返金や回数券の解約があった場合の扱い、退職した月の歩合の扱い。どれも、決めていないと退職時に揉めやすい項目です。

率や起点を途中で変えるときは、スタッフにとって不利益な変更になるかどうかで手続きが変わります。とくに率を下げる変更は、本人の同意を書面で取っておくのが無難です。

7 毎年10月に見直す

最低賃金は毎年秋に改定され、令和8年度は全国加重平均で56円上がりました。前年ぎりぎりの基本給で組んだ給与表は、翌年の10月にはそのまま違反になります。事業場内の最も低い時給を50円以上引き上げて設備投資も行う場合は、厚生労働省の業務改善助成金が使える可能性があります(令和8年度)。詳しくは接骨院で使える補助金・助成金を参照してください。

「スタッフがすぐ辞める」と給与設計の関係

スタッフの定着は、給与だけで決まるものではありません。それでも給与の仕組みが原因になっている院は少なくない、というのが私たちの見方です。よく見かけるのは次の3つの形です。

よくある形スタッフから見えること直し方の例
歩合の計算式を院長しか知らない頑張っても何円増えるか分からない計算式を書面で渡し、毎月の明細に売上と歩合の内訳を載せる
新人と経験者で同じ歩合率新人は歩合がほぼ出ず、基本給の低さだけが残る1年目は固定部分を厚くし、歩合は2年目から段階的に
受付・助手に歩合がない施術スタッフとの差だけが目立つ院全体の売上や再来率に連動する手当を小さく設ける

施術ができるのは柔道整復師などの有資格者だけなので、受付や助手のスタッフは施術件数の歩合と無縁になりがちです。資格の有無で役割が違う以上、給与の仕組みも分けて考えるのが自然でしょう。施術管理者になれる経験年数のスタッフには施術管理者手当を固定で付け、受付には予約の埋まり具合や再来率に連動する手当を設ける、といった分け方があります。再来率の考え方は整骨院のリピート率の上げ方にまとめています。

歩合の数字だけで評価が決まる院では、新人の教育や院内の片付け、カルテの整理のように売上に直結しない仕事を誰も引き受けなくなります。編集部は、歩合とは別に、半年に一度の面談で技術や後輩指導を評価して基本給の昇給に反映させる二本立てがよいと考えている。歩合が「今月の成果」、昇給が「積み上げた力」を表す形にしておくと、売上の少ない時期のスタッフにも先が見えます。昇給の基準を表にして渡すだけでも、スタッフが院に残る理由はひとつ増えるはずです。

採用の段階で給与の仕組みを説明しておくことも、早期離職を防ぐ手当てになります。未経験者が求人を見るときにどこを気にしているかは、未経験の柔道整復師の求人の探し方が参考になるはずです。

給与設計で迷いやすいところ

Q
歩合の率は売上の何%が相場ですか?
A

国や業界団体がまとめた統計は見当たりません。率は院の利益構造で決めるもので、家賃・材料費・保険請求の手数料などを差し引いた粗利から、院に残したい額を逆算するのが現実的です。粗利の考え方は「整骨院の売上の平均」が参考になります。

Q
試用期間中は最低賃金を下回ってもよいですか?
A

原則として下回れません。試用期間中の減額特例は、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限られます。許可なく試用期間だけ低い時給にすることはできません。

Q
固定残業代を入れれば、残業代の計算は不要になりますか?
A

不要にはなりません。固定残業代で決めた時間を超えた分は追加で払う必要があり、歩合給の割増(×0.25)も別に計算します。固定残業代は最低賃金の計算にも入りません。

Q
パートの施術スタッフにも歩合を付けられますか?
A

付けられます。時給に歩合を上乗せする形なら、時給だけで最低賃金を満たしているかを確認すれば足ります。歩合だけのパート契約にする場合は、正社員と同じく保障給と最低賃金の差額払いが必要です。

Q
歩合給は賞与の代わりになりますか?
A

院の考え方次第ですが、毎月払う歩合と、半年や1年の業績をまとめて払う賞与では、スタッフの受け取り方が違います。賞与は最低賃金の計算に入らない点も違いのひとつです。

判断の目安

基本給は、歩合がゼロの月でもその地域の最低賃金を満たす額にする。歩合は上に積むものとして計算式を書面にし、残業代は固定部分×1.25と歩合部分×0.25を分けて払う。完全歩合や業務委託は、実態が雇用なら差額と残業代が後から来ると考えておく。給与表の土台はこの3つで、あとは院の売上の作り方に合わせて歩合の対象を選べば形になります。人件費を事業計画にどう組み込むかは整骨院の事業計画書の書き方で、開業後に人件費で苦しくなる典型は整骨院の開業で失敗する理由で扱っています。

業界全体の先行きを含めて、長く働ける給与にしたいなら柔道整復師の将来性もあわせて読んでみてください。

10月の改定は毎年来ます。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

参考・出典

参照日: 2026年10月27日

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