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整骨院の開業で失敗する理由7つ|4割が月商見込み割れの現実と対策

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開業前に立てた月商の見込みに届いていない。日本政策金融公庫の2025年度の調査では、開業して1年前後の事業者のうち41.3%がそう答えています。

全業種の数字ですが、整骨院も例外ではありません。むしろ保険の算定基準で単価がほぼ決まり、施術所が全国に約5万か所ある業界では、見込みの甘さがそのまま資金不足につながります。

開業の失敗は、開業したあとの努力不足より、開業前の判断で半分決まっている。それが編集部の見立てです。公的な統計と制度の資料をもとに、つまずく理由を7つに分け、それぞれ開業前にどう手を打つかを並べました。

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)

開業1年目の4割が「見込み割れ」という現実

日本政策金融公庫総合研究所の新規開業実態調査は、公庫が融資した開業1年以内の企業を対象にしたアンケートです。2025年度の結果では、予想月商達成率(調査時点の平均月商÷開業前に予想していた月商)が100%以上だった人は58.7%でした。

予想月商達成率の分布(2025年度・全業種)
出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』

裏返すと、10人に1人は見込みの半分にも届いていません。採算が「赤字基調」と答えた人も33.0%います。

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)

項目2025年度の結果整骨院に置き換えると
予想月商に届かない41.3%来院数の見込みが高すぎる
採算が赤字基調33.0%家賃・リース・人件費が売上を上回る
開業時の苦労:資金繰り、資金調達56.9%療養費の入金待ちで手元資金が減る
開業時の苦労:顧客・販路の開拓49.9%新患が集まらない
開業時の苦労:財務・税務・法務の知識不足36.4%保険請求や広告のルールを知らない
開業1年目のつまずき(全業種の調査結果と、整骨院で起きやすい形)

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)。右の列は編集部の整理

調査は整骨院だけを取り出したものではないため、右の列は編集部の読み替えです。それでも、資金と集客と知識の3つが上位に並ぶ構図は、整骨院の開業相談でよく聞く悩みとほぼ重なります。

「開業の失敗」とは何を指すのか

ひと口に失敗と言っても、中身は3段階あります。赤字が続く状態、借入を返せず倒産する状態、そして借金を残さずに自分で閉める廃業です。

東京商工リサーチの集計では、整骨院・接骨院・鍼灸院などを含む「マッサージ業」の倒産は2025年度に108件で、過去30年で最多でした。原因の84.2%は販売不振、つまり患者が集まらず売上が足りなかったことです。

出典: 東京商工リサーチ『マッサージ業の倒産が過去30年で最多の108件』(2026年4月)

ただし、この数字は負債1,000万円以上の倒産だけを数えたものです。小さな院が貯金の範囲で閉めた例は入りません。廃業の手続きや閉院の判断については整骨院が廃業する理由と回避策で扱ったので、ここでは開業前と開業直後に絞ります。

つまずく理由7つと、開業前に打てる手

整骨院の開業でつまずく流れ(編集部作成)
整骨院の開業でつまずく流れ(編集部作成)

7つは別々の話に見えて、実際には図のように絡み合います。とくに「集客」と「資金」は互いを悪くし合うので、片方だけ手当てしても止まりません。

1. 予想月商を「勤務先の実績」で置いている

勤務していた院で1日40人を診ていたとしても、それは看板と既存患者のある院での数字です。新しい院の初月は、紹介も再来もない状態から始まります。月商は「1日の来院数×平均単価×営業日数」で出しますが、来院数は開業初月・3か月目・半年目と段階を分けて置くのが現実的です。保険施術の平均的な売上の水準は整骨院の売上平均で試算しています。

試しに、受付スタッフを置かない1人院を想定して、来院数を段階で置いてみます。単価と来院数は説明のための仮定で、実在の院の数字ではありません。

時期1日の来院数(仮定)平均単価(仮定)月商(24日営業)
開業初月8人2,500円48万円
3か月目15人2,500円90万円
6か月目22人2,500円132万円
勤務先と同じ見込み40人2,500円240万円
段階別に置いた月商の試算(すべて編集部の仮定)

勤務先の実績をそのまま使うと、初月の見込みは実際の5倍になります。融資の面談で見せる計画書ほど強気になりやすいので、最悪の段(初月)で家賃とリース料を払えるかを先に確かめる。私たちは、この「初月の段」で固定費をまかなえない計画は、物件か規模を見直すべきだと考えます。

来院数が増えるまでの数か月に何をするかも、計画のうちです。開業前の内覧会、近隣の学校や職場への挨拶、Googleマップへの登録は、開院してから始めると遅れます。

2. 運転資金が足りない

同じ公庫の調査で、開業費用の中央値は600万円、平均は975万円でした。資金の調達額は平均1,219万円で、このうち金融機関などからの借入が平均827万円を占めます。

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)

整骨院でとくに効いてくるのが、療養費の入金の遅さです。受領委任で請求した療養費は、施術した月にすぐ入るわけではなく、請求から入金まで時間差があります。その間の家賃や給与は、手元資金から出ていく。編集部は、内装や機器を削ってでも、固定費の6か月分を運転資金として残す計画をすすめます。費用の組み立ては接骨院の開業費用の内訳、借入の手順は日本政策金融公庫の開業融資が参考になります。

3. 商圏を見ずに立地を決める

厚生労働省の衛生行政報告例によると、柔道整復の施術所は2024年末で50,924か所です。2022年末の50,916か所から、2年間で8か所しか増えていません。

出典: 厚生労働省『令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』

総数が増えないのは、開く院と閉じる院がほぼ同じ数だけあるということです。駅からの距離や家賃の安さで物件を選ぶ前に、半径1kmの施術所・整体院の数と、想定する患者層(スポーツをする学生か、デスクワークの会社員か、高齢者か)の住み方を地図で確かめる。物件の見方は物件選びと居抜きの判断にまとめました。

居抜き物件は内装費を抑えられる半面、前の院が閉じた理由が立地そのものにある可能性も残ります。人通りの時間帯、駐車場の有無、近くの整形外科の診療時間。契約前に平日と土曜の両方で歩いておくと、図面では分からないことが見えてきます。

4. 保険施術だけで計画を組む

柔道整復療養費は、2013年度の3,855億円から2021年度の2,867億円へ、8年で約1,000億円減りました。保険の対象は外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷で、慢性的な肩こりや疲労は含まれません。

出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会『柔道整復療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)』(2024年1月)

柔道整復療養費の推移(推計)
出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会資料(2024年1月)

市場全体が縮むなかで保険の売上だけを当てにすると、計画の前提が毎年崩れていきます。保険の範囲は保険が使えるけが・使えないけが、自費メニューの値付けは自費メニューへの移行と単価の決め方で詳しく書きました。ここは意見が分かれるところですが、私たちは「開業初日から自費の柱を1つ持つ」計画のほうが、保険で地盤を固めてから自費に移る計画より立て直しが利くと考えています。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

5. 受領委任の準備が開院日に間に合わない

健康保険を使った施術を受領委任で扱うには、施術管理者の要件を満たし、地方厚生(支)局に申し出る必要があります。2024年4月以降は、柔道整復師としての実務経験3年(うち1年以上は施術所)と、施術管理者研修の修了が条件です。研修は土日・祝日を使った連続2日間・合計16時間で、受講料は25,000円です。

出典: 全国柔整鍼灸協同組合『施術管理者になるための要件』

研修は日程と定員が決まっているため、退職の時期から逆算しないと「開院したのに保険が扱えない」期間が生まれます。保健所への開設届とあわせた段取りは保健所への開設届と受領委任の申出、制度の全体は受領委任の仕組みにあります。

実務経験の年数は、勤務先が発行する証明で確かめられます。転職を重ねてきた人ほど、複数の勤務先から証明をもらう手間がかかる。独立を考え始めた時点で、自分の経験年数を数え直しておくと安心です。

6. 広告で書いてはいけないことを書く

柔道整復師の施術所が看板やチラシ、ネット広告に書ける内容は、柔道整復師法第24条と告示で列挙された事項に限られます。症状名や施術の効果、院長の経歴は列挙に入っていません。厚生労働省のガイドラインは、保険の取扱いについても「どんな方も保険が使えます」のような書き方を認めていません。開業直後の集客を急ぐほど踏み込みがちな部分で、指導を受けて看板やチラシを作り直すことになれば、時間もお金も失います。具体的な線引きは整骨院の広告規制を見てください。

出典: 厚生労働省『柔道整復師等の広告に関するガイドライン』

7. ひとりで全部を抱える

施術、受付、レセプト、会計、集客を院長ひとりで回すと、まず削られるのが集客です。公庫の調査でも、開業後に苦労していることの1位は「顧客・販路の開拓」(48.8%)でした。予約や問い合わせの窓口をGoogleマップにまとめる(Googleマップ(MEO)対策)、請求を代行に任せるなど、手放せる作業を開業前に決めておきます。

ひとりで始めるか、スタッフを雇って始めるか。人件費が固定費に加わる分、雇用は資金計画を重くします。一方で、院長が施術に集中できる時間は増える。どちらが正解というより、6か月目の段の来院数を何人に置くかで決まる話だと私たちは見ています。

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)

資金が足りなくて開業できないときの選択肢

自己資金が少ない、借入の審査に通らない。そうした理由で開業を見送るのは、失敗ではなく判断です。それでも独立を目指すなら、規模を変える道があります。

公庫の2025年度調査では、開業時の資金調達額の平均1,219万円のうち、自己資金は平均279万円で、全体の22.9%でした。借入に頼る割合が大きいほど、開業後の返済が月々の固定費に加わります。

出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』(2025年12月)

選択肢初期費用の傾向向いている人気をつけること
小規模の物件・居抜きで開業内装・設備を抑えやすい商圏が決まっている人前の院が閉じた理由を確かめる
出張(往療)中心で始める物件費がかからない高齢者の多い地域を知っている人往療料は算定できる条件が限られる
フランチャイズに加盟する加盟金・ロイヤリティが加わる集客や請求の仕組みを買いたい人契約期間と解約条件
勤務を続けて分院長になる自己負担はほぼない経営を学びながら準備したい人独立時の患者の扱い
資金が少ないときの開業の形(編集部の整理)

国や自治体の補助金は、多くが後払いで、開業費用の頭金には使えません。使える制度と時期は開業で使える補助金・助成金、加盟の比較はフランチャイズ加盟の比較にまとめています。独立後の収入の幅は独立した柔道整復師の年収が目安になります。

開業前に聞かれやすい5つのこと

Q
整骨院の開業は何年くらいで軌道に乗りますか?
A

整骨院だけを対象にした公的な統計はありません。全業種を対象にした日本政策金融公庫の2025年度調査では、開業1年以内の時点で採算が黒字基調の人が67.0%、赤字基調が33.0%でした。1年目は赤字になる可能性を前提に資金を用意しておくのが安全です。

Q
開業資金はいくらあれば足りますか?
A

公庫の調査では、全業種の開業費用の中央値が600万円、平均が975万円です。整骨院は施術機器やレセコンが加わるため、物件の広さと内装の程度で大きく変わります。開業費用とは別に、固定費の数か月分を運転資金として見込んでください。

Q
開業してすぐに保険施術はできますか?
A

受領委任を扱うには、施術管理者の要件(実務経験3年と研修の修了)を満たし、地方厚生(支)局へ申し出る必要があります。手続きが済む前の施術は受領委任で請求できないため、開院日と申出の時期を合わせて計画します。

Q
整体院として開業したほうが失敗しにくいですか?
A

整体は国家資格を前提としない業態で、健康保険の療養費は扱えません。保険の審査や受領委任の手続きがない代わりに、売上はすべて自費になり、価格と集客の力だけで勝負することになります。柔道整復師の資格を持つ人が整体院を名乗る場合の扱いは整体院の開業と資格で整理しています。

Q
整骨院の廃業率は何%ですか?
A

整骨院の廃業率を示す公的な統計は見当たりません。厚生労働省の衛生行政報告例で分かるのは施術所の総数で、2022年末から2024年末までの2年間で8か所の増加にとどまっています。

開業前に見直す順番

7つの理由を、開業前に確かめる順に並べ直すと次のようになります。上から順に、決めるのが遅れると取り返しにくいものです。

順番確かめること目安
1施術管理者の要件と研修の日程退職の半年前までに
2商圏の競合と患者層物件契約の前に
3予想月商(段階別)と運転資金融資の申込み前に
4保険と自費の売上の割合メニュー表を作る前に
5広告の表現と集客の窓口チラシ・ホームページの公開前に
開業前の確認の順番(編集部の整理)

どれも開業してからでは直しにくいものばかりです。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

参考・出典

参照日: 2026年10月25日

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