整体院を開業するのに、資格は必要なのでしょうか。結論から言うと、「整体」そのものには国家資格の制度がなく、資格がなくても整体院を開業すること自体は可能です。保健所への施術所開設届も、整体だけを行うのであれば求められていません。
ただし「資格不要=何をしてもよい」ではありません。あん摩・マッサージ・指圧、はり・きゅう、柔道整復は国家資格がないと業として行えず、それ以外の手技でも人の健康に害を及ぼすおそれのある施術は処罰の対象になり得ます。また、無資格の整体では健康保険は使えないため、最初から全額自費(保険外)で成り立つ事業計画が必要です。
この記事では、法律・厚生労働省の通知・公的統計・公的融資の資料をもとに、整体院と接骨院・マッサージ院・鍼灸院の違い、無資格でやってはいけないこと、必要な届出と費用、保険外で整体院を成り立たせる条件までを整理しました。数値と法令にはすべて出典を示しています。
この記事の要点
・整体(国家資格のない手技)は無資格でも開業できる。ただし「あん摩・マッサージ・指圧」「はり・きゅう」「柔道整復」を名乗る・行うには国家資格が必要
・無資格の施術でも、人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止・処罰の対象(最高裁昭和35年判決と厚生省通知)
・税務署への開業届は必要。保健所への届出は、国家資格の施術所を開く場合に開設後10日以内
・健康保険は使えないため、自費の単価とリピートで採算を組む
- 整体院とは?法律上の位置づけと「資格不要」の根拠
- 整体院・接骨院・マッサージ院・鍼灸院の違い(資格・届出・保険の比較)
- 数字で見る:国家資格者と施術所の数(厚生労働省の統計)
- 無資格の整体院がやってはいけないこと(注意点)
- 整体師におすすめの資格:国家資格と民間資格の比較
- 整体院の開業に必要な届出・手続きと必要なもの
- 整体院の開業費用はどのくらい?公的調査から見る目安
- 整骨院・接骨院を開業するのに必要な資格との違い
- 保険外(自費)で整体院を成り立たせる条件
- 失敗しない整体院の開業手順(6か月前からのスケジュール)
- 整体院の開業でよくある失敗
- 整体院の開業と資格に関するよくある質問
- まとめ:整体院は「資格不要」だからこそ、線引きの理解が開業の土台
- 参考・出典
整体院とは?法律上の位置づけと「資格不要」の根拠
整体院の「資格不要」を正しく理解するには、法律がどのように整理されているかを押さえておく必要があります。
国家資格が必要なのは「あはき」と「柔道整復」
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)第1条は、医師以外の者が、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅうを業として行う場合には、それぞれの免許を受けなければならないと定めています。柔道整復についても、柔道整復師法により柔道整復師(または医師)でなければ業として行えません。
そのうえであはき法第12条は、これら以外の「医業類似行為」を業として行うことを原則として禁じています。条文だけを読むと「整体も禁止では?」と思えますが、ここで重要になるのが次の最高裁判決です。
最高裁昭和35年判決:禁止されるのは「健康に害を及ぼすおそれのある」行為
1960年(昭和35年)1月27日の最高裁判所大法廷判決は、あはき法第12条で禁止・処罰の対象となる医業類似行為は、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為に限られると判断しました。これを受けた厚生省医務局長通知(昭和35年3月30日 医発第247号の1)は、次の2点を明確にしています。
- この判決は、手技・温熱・電気・光線などの療術行為業について判示したもので、あん摩・はり・きゅう・柔道整復を無免許で業として行えば、従来どおり処罰の対象になる
- 療術行為であっても、施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、禁止処罰の対象となる
つまり、整体院が無資格でも開業できるのは「整体が法律で認められた職業だから」ではなく、「健康に害を及ぼすおそれがない範囲の手技であれば、処罰の対象にならない」という判例上の整理によるものです。この前提を知らずに開業すると、施術内容や広告の表現で思わぬリスクを抱えることになります。
整体・整骨院・カイロプラクティックの一般的な違いについては、整体とは|整骨院・カイロプラクティックとの違いでも解説しています。
整体院・接骨院・マッサージ院・鍼灸院の違い(資格・届出・保険の比較)
整体院と混同されやすいのが、国家資格者が開設する接骨院(整骨院)、マッサージ院(あん摩マッサージ指圧の施術所)、鍼灸院です。開業に関わる違いを表にまとめました。
| 業態 | 必要な資格 | 保健所への開設届 | 健康保険(療養費) | 名乗れる名称の例 |
|---|---|---|---|---|
| 整体院・カイロプラクティック | 法的な資格制度なし(民間資格のみ) | 不要(整体のみの場合) | 対象外(全額自費) | 整体、カイロプラクティック |
| マッサージ院 | あん摩マッサージ指圧師(国家資格) | 開設後10日以内(あはき法第9条の2) | 医師の同意等があれば一部対象 | あん摩、マッサージ、指圧 |
| 鍼灸院 | はり師・きゅう師(国家資格) | 開設後10日以内(あはき法第9条の2) | 医師の同意等があれば一部対象 | はり、きゅう、鍼灸 |
| 接骨院・整骨院 | 柔道整復師(国家資格) | 開設後10日以内(柔道整復師法第19条) | 急性・亜急性の外傷等が対象 | 接骨院、整骨院、ほねつぎ |
国民生活センターの報道発表資料「手技による医業類似行為の危害」(2012年)は、器具を使わない手技の施術を「法的な資格制度があるもの(あん摩マッサージ指圧、柔道整復)」と「法的な資格制度がないもの(整体、カイロプラクティック等)」の2つに大別しています。同資料によると、国家資格のある施術は、文部科学大臣が認定した学校または厚生労働大臣が認定した養成施設で3年以上の教育を受け、国家試験に合格した人だけが業として行えます。
なお、厚生省の通知(昭和45年 医第374号)では、カイロプラクティックは「脊椎の調整を目的とする点において、あん摩、マッサージ又は指圧と区別され」るものとされています。逆に言えば、無資格の整体院が「マッサージ」「指圧」をメニュー名や看板に使うのは避けるべきです。
数字で見る:国家資格者と施術所の数(厚生労働省の統計)
整体院は届出制度がないため、公的な統計で店舗数を把握することはできません。一方、国家資格者とその施術所の数は、厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」で確認できます。整体院の競合となる施術所の規模感をつかむ参考にしてください。
| 区分(各年末) | 平成26年(2014) | 平成30年(2018) | 令和4年(2022) | 令和6年(2024) |
|---|---|---|---|---|
| 就業あん摩マッサージ指圧師(人) | 113,215 | 118,916 | 118,913 | 119,703 |
| 就業はり師(人) | 108,537 | 121,757 | 131,486 | 136,736 |
| 就業柔道整復師(人) | 63,873 | 73,017 | 77,632 | 78,666 |
| あん摩・マッサージ・指圧を行う施術所(か所) | 19,271 | 19,389 | 18,017 | 17,531 |
| はり・きゅうを行う施術所(か所) | 25,445 | 30,450 | 33,890 | 35,494 |
| あマ指・はり・きゅうを行う施術所(か所) | 37,682 | 38,170 | 38,374 | 38,595 |
| 柔道整復の施術所(か所) | 45,572 | 50,077 | 50,916 | 50,924 |

令和6年末時点で、国家資格の施術所は合計で約14.5万か所(上記4区分とその他の施術所2,736か所の合計145,280か所)にのぼります。柔道整復の施術所は令和4年から8か所しか増えておらず、あん摩・マッサージ・指圧のみの施術所は486か所(2.7%)減少しました。一方で、はり・きゅうの施術所は1,604か所(4.7%)増えています。
整体院は、これらの国家資格の施術所に加えて、リラクゼーションサロンやフィットネスなどとも顧客を奪い合う立場です。「資格がなくても開業できる」参入のしやすさは、そのまま競合の多さでもあることを押さえておきましょう。
無資格の整体院がやってはいけないこと(注意点)
厚生省健康政策局医事課長通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日 医事第58号)は、カイロプラクティック療法について、事故を防ぐための取扱いを示しています。整体院でも同じ考え方が当てはまるため、開業前に必ず目を通しておきましょう。
| やってはいけないこと | 根拠・内容 |
|---|---|
| あん摩・マッサージ・指圧、はり・きゅう、柔道整復を業として行う | 無免許で行えば、あはき法・柔道整復師法により処罰の対象(医事第58号 記1(1)) |
| 頸椎(首)に急激な回転伸展操作を加える「スラスト法」 | 患者の身体に損傷を加える危険が大きく、禁止する必要がある手技とされている(同 記2(2)) |
| 禁忌の疾患がある人への施術 | 腫瘍性・出血性・感染性疾患、リウマチ、心疾患、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、すべり症などと診断されている人は対象とすることが適当でない(同 記2(1)) |
| 症状が改善しないのに施術を続けさせる | 長期間・頻回の施術で症状が悪化・軽減しない場合は、施術を中止して医療機関での精査を受けるよう求めている(同 記2(3)) |
| 「がんが治る」など医学的効果をうたう広告 | 誇大広告として、あはき法(準用)または医療法に基づく規制の対象(同 記2(4)) |
| 診断・投薬・注射など医行為 | 医師でなければ行えない(医師法)。「○○症と診断」「治療します」といった表現も避ける |
実際に起きている危害:国民生活センターの報告
国民生活センターの「手技による医業類似行為の危害」によると、整体やマッサージなど器具を使わない手技の施術で危害が発生したという相談は、2007年度以降の約5年間で825件寄せられ、件数は増加傾向でした。危害の程度が分かった相談の約8割が医療機関を受診し、そのうち約3割は治療に3週間以上かかっていました。事例には、施術中に肋軟骨を骨折したケースや、頸椎捻挫と診断されたケースが含まれています。
開業前に決めておきたい安全ルール
・初回カウンセリングで既往歴・通院中の病気・服薬を確認し、記録を残す
・禁忌に当たる人、しびれや強い痛みがある人には施術せず医療機関の受診を勧める
・首への強い矯正(スラスト)はメニューに入れない
・万一に備え、施術中の事故を補償する賠償責任保険に加入する
整体師におすすめの資格:国家資格と民間資格の比較
整体院の開業に必須の資格はありませんが、資格の有無は「できる施術の範囲」と「お客さまからの信頼」に直結します。選択肢は大きく国家資格と民間資格に分かれます。
| 資格 | 種類 | 取得ルート | 開業でできるようになること |
|---|---|---|---|
| あん摩マッサージ指圧師 | 国家資格 | 認定校・養成施設で3年以上学び、国家試験に合格 | 「マッサージ」「指圧」を名乗り施術。医師の同意があれば一部で療養費の対象 |
| はり師・きゅう師 | 国家資格 | 認定校・養成施設で3年以上学び、国家試験に合格 | 鍼灸の施術、鍼灸院の開設。整体と組み合わせた自費メニュー |
| 柔道整復師 | 国家資格 | 認定校・養成施設で3年以上学び、国家試験に合格 | 接骨院・整骨院の開設。施術管理者の要件を満たせば受領委任(保険)の取り扱い |
| 整体師・カイロプラクター等 | 民間資格 | 各団体のスクール・通信講座(期間・費用は団体により大きく異なる) | 施術の範囲は無資格と同じ。技術・知識の証明や集客上の信頼性として活用 |
民間資格は法律上の効力を持たないため、取得しても施術できる範囲は変わりません。選ぶときは、カリキュラムに解剖学・生理学や禁忌の知識、リスク管理が含まれているか、実技の指導時間が十分かを確認しましょう。将来的に保険施術や国家資格の名称を使った集客も視野に入れるなら、国家資格の取得が近道です。
国家資格者として勤務しながら独立の準備をする選択肢もあります。柔道整復師の給与水準は柔道整復師の給料・年収の実態で詳しく紹介しています。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
整体院の開業に必要な届出・手続きと必要なもの
整体のみを行う整体院の場合、保健所への届出は求められていませんが、個人事業として開業する以上、税務署への届出は必要です。国家資格を持ち、施術所として開設する場合は保健所への届出も加わります。

| 届出・手続き | 提出先 | 提出時期 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 税務署 | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで | 個人で開業する全員 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内 | 青色申告(最大65万円控除など)を受けたい人 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設から1か月以内 | スタッフを雇う場合 |
| 施術所開設届 | 施術所所在地の都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長) | 開設後10日以内 | あマ指・はり・きゅう、柔道整復の施術所を開く場合 |
| 労働保険・社会保険の手続き | 労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所 | 雇用開始時 | スタッフを雇う場合 |
開業届の提出時期は、国税庁の「個人事業の開業・廃業等届出手続」で最新の取扱いを確認してください。青色申告の承認申請は国税庁の案内のとおり、その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内が期限です。期限を過ぎると、その年は青色申告の特典が受けられません。
開業時に必要なもの(チェックリスト)
- 物件:自宅・賃貸マンション・貸店舗・レンタルサロン・出張など。賃貸の場合は契約上、店舗・事業利用が認められているかを必ず確認
- 設備・備品:施術ベッド、タオル・リネン類、消毒用品、受付用のPC・予約システム・キャッシュレス決済
- カウンセリングシート・同意書:既往歴、禁忌の確認欄を設ける
- 賠償責任保険:施術中の事故やお客さまの持ち物の破損に備える
- 集客の準備:看板、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、予約サイト
- 消耗品の仕入れ先:タオルや衛生用品は通販でまとめて手配すると手間が減ります(施術用品の仕入れをネット通販で(各社ECサイト比較))
整体院の開業費用はどのくらい?公的調査から見る目安
整体院に限った公的な開業費用の統計はありません。参考になるのが、日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」です。公庫が融資した開業1年以内の企業を対象とした全業種の調査で、開業費用は次のとおりでした。
| 項目 | 調査結果(全業種) |
|---|---|
| 開業費用の平均値 | 975万円 |
| 開業費用の中央値 | 600万円 |
| 開業費用「250万円未満」の割合 | 20.1% |
| 開業費用「250万〜500万円未満」の割合 | 21.7% |
| 開業時の資金調達額(平均) | 1,219万円 |
| うち金融機関等からの借り入れ | 平均827万円(67.9%) |
| うち自己資金 | 平均279万円(22.9%) |
整体院は、接骨院のように保険請求用のシステムや物理療法機器をそろえる必要がないため、自宅開業やレンタルサロン、出張型なら全業種の平均より大幅に小さい費用で始めることも可能です。一方、貸店舗で内装工事をする場合は、物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料)と内装費が大きくなり、数百万円規模になることもあります。
開業資金の借り入れ先としては、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」が代表的です。融資の審査では事業計画書の収支見込みが重視されるため、次の章で紹介する「保険外で成り立つ条件」を数字で示せるようにしておきましょう。接骨院の開業費用の内訳は接骨院の開業費用はいくら?内訳・融資・届出で詳しく解説しています。
整骨院・接骨院を開業するのに必要な資格との違い
「整体院」と「整骨院」は一文字違いですが、開業の要件はまったく異なります。整骨院・接骨院を開業するには柔道整復師の国家資格が必要で、さらに健康保険を使った施術(受領委任)を扱うには施術管理者の要件を満たさなければなりません。
全国柔整鍼灸協同組合が厚生労働省の通知をもとにまとめた「施術管理者」になるための要件によると、2024年4月以降に施術管理者の届出をする場合、実務経験3年(うち最低1年は施術所)と、施術管理者研修(連続2日間・合計16時間)の修了が必要です。
| 比較項目 | 整体院 | 整骨院・接骨院 |
|---|---|---|
| 必要な資格 | なし(民間資格は任意) | 柔道整復師(国家資格) |
| 保健所への届出 | 不要(整体のみの場合) | 施術所開設届(開設後10日以内) |
| 健康保険 | 使えない(全額自費) | 急性・亜急性の外傷等は療養費の対象 |
| 保険を扱う要件 | — | 施術管理者(実務経験3年+研修16時間) |
| 名称 | 「整骨」「接骨」は使えない | 接骨院・整骨院を名乗れる |
| 収入の柱 | 自費施術・回数券・物販 | 療養費+自費施術 |
整骨院の保険収入は制度改定の影響を強く受けます。保険請求の流れや2026年の改定内容は整骨院の保険請求の仕組みと2026年改定をご覧ください。保険に頼らない整体院は、制度改定の影響を受けにくい反面、すべての売上を自費で積み上げる必要があります。
保険外(自費)で整体院を成り立たせる条件
無資格の整体院は健康保険を使えないため、売上はすべて自費施術で作ります。採算を考えるときは、次の式に分解すると課題が見えやすくなります。
月の売上 = 施術単価 × 1日の施術人数 × 営業日数
1日の施術人数 = 新規のお客さま + リピートのお客さま
たとえば、施術単価6,000円・1日6人・月22日営業なら、月の売上は6,000円×6人×22日=79万2,000円です(考え方を示すための計算例で、統計値ではありません)。ここから家賃・広告費・消耗品・決済手数料などの経費を引いたものが、個人事業主の手元に残る所得になります。
自費で成り立つ整体院に共通する3つの条件
- 誰の・どんな悩みに応えるかが明確:「デスクワークの肩こり」「産後の骨盤まわり」「ゴルフをする50代」など対象を絞ると、単価とリピートの両方を上げやすい
- リピートの仕組みがある:初回に施術計画と通う目安を説明し、セルフケアの指導や次回予約につなげる。新規集客だけに頼ると広告費がかさむ
- 安全管理と誠実な表現:禁忌の確認や医療機関の受診勧奨を徹底し、「治る」「治療」といった表現を使わない。口コミの評価が集客に直結する時代では、信頼が最大の資産
集客の具体的な方法は治療院が集患・集客する方法まとめと治療院の簡単SNS広告の運用まとめで紹介しています。フランチャイズに加盟して開業する方法もありますが、ロイヤリティや契約条件を事前に十分確認しましょう(参考:フランチャイズ加盟の実情(ほねつぎチェーン))。
失敗しない整体院の開業手順(6か月前からのスケジュール)
- 6か月前コンセプトと対象客を決める誰のどんな悩みに応えるか、施術メニューと単価、国家資格の取得や民間スクールの受講が必要かを決める
- 5か月前事業計画書と資金計画開業費用・運転資金・売上見込みを数字にし、自己資金と借り入れの額を決める。公庫の相談もこの時期に
- 4か月前物件探し・契約事業利用が可能か、看板を出せるか、ベッドを置く広さがあるかを確認して契約
- 2〜3か月前内装・備品・集客準備内装工事、ベッドや備品の購入、ホームページ・予約システム・Googleビジネスプロフィールの準備
- 1か月前保険加入と運用ルールづくり賠償責任保険に加入。カウンセリングシート、禁忌の確認手順、キャンセル規定を整える
- 開業後税務署へ届出開業届を提出し、青色申告承認申請は開業日から2か月以内に。国家資格の施術所なら開設後10日以内に保健所等へ届出
整体院の開業でよくある失敗
- 「マッサージ」「整骨」など使えない言葉を看板や広告に使う:資格が必要な名称を使うと法令違反を疑われ、信頼も失う
- 賃貸契約で事業利用が認められていなかった:自宅や賃貸マンションでの開業は、管理規約・契約書を事前に確認する
- 運転資金が足りない:自費の整体院は開業直後の集客に時間がかかる。家賃と生活費の数か月分は手元に残しておく
- 「何でも治せます」とうたってしまう:医学的効果をうたう誇大広告は規制の対象。症状が改善しない人は医療機関につなぐ
- リスク管理をしていない:事故が起きたときに備えた賠償責任保険や、施術前の確認記録がない
整体院の開業と資格に関するよくある質問
- Q整体院は資格なしで本当に開業できますか?
- A
できます。整体には法律上の資格制度がなく、無資格で整体院を開業すること自体は違法ではありません。ただし最高裁昭和35年判決と厚生省通知により、人の健康に害を及ぼすおそれのある施術は禁止・処罰の対象になり得ます。また、あん摩・マッサージ・指圧、はり・きゅう、柔道整復は国家資格がないと業として行えません。
- Q整体院の開業に保健所への届出は必要ですか?
- A
整体のみを行う場合、保健所への施術所開設届は求められていません。ただし、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の資格で施術所を開設する場合は、開設後10日以内に所在地の都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)への届出が必要です。窓口は保健所になっていることが多いため、事前に確認しましょう。
- Q整体院で健康保険は使えますか?
- A
使えません。健康保険の療養費の対象になるのは、柔道整復師による急性・亜急性の外傷の施術や、医師の同意等があるあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術などに限られます。整体院は全額自費での運営が前提です。
- Q整体院のメニューに「マッサージ」と書いてもいいですか?
- A
無資格の場合は避けるべきです。マッサージはあん摩マッサージ指圧師の国家資格が必要な行為で、無免許で業として行えば処罰の対象になります。「もみほぐし」「ボディケア」などの表現でも、施術の実態がマッサージに当たると判断されるリスクがある点に注意してください。
- Q整体院の開業資金はいくら必要ですか?
- A
物件と開業形態によって大きく異なります。全業種の参考値として、日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では開業費用の平均が975万円、中央値が600万円でした。自宅やレンタルサロン、出張型で始めれば、これより大幅に抑えることも可能です。
まとめ:整体院は「資格不要」だからこそ、線引きの理解が開業の土台
整体には法律上の資格制度がなく、無資格でも整体院を開業できます。ただしそれは、「人の健康に害を及ぼすおそれがない範囲の手技であれば処罰の対象にならない」という判例上の整理によるもので、あん摩・マッサージ・指圧、はり・きゅう、柔道整復は国家資格がなければ行えません。
開業にあたっては、①施術の範囲と使える名称を正しく理解する、②税務署への開業届と青色申告の申請を期限内に行う、③健康保険に頼らず自費で成り立つ単価とリピートの仕組みを作る、④禁忌の確認と賠償責任保険で安全を確保する、の4点を押さえておきましょう。将来、保険施術や業務の幅を広げたい人は、国家資格の取得も検討する価値があります。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
参考・出典
- e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(第1条・第7条・第9条の2・第12条)
- e-Gov法令検索「柔道整復師法」(第15条・第19条)
- 厚生省医務局長通知「いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について」(昭和35年3月30日 医発第247号の1)
- 厚生省健康政策局医事課長通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日 医事第58号)
- 国民生活センター「手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-」(平成24年8月2日・厚生労働省検討会資料)
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出手続」
- 国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」
- 全国柔整鍼灸協同組合「受領委任で健康保険を取り扱う『施術管理者』になるための要件」

