接骨院の開業費用はいくら?内訳・融資・届出を公的データで解説【2026】

接骨院の開業費用はいくら?内訳・融資・届出を公的データで解説【2026】 業界コラム
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接骨院(整骨院)を開業するのに、費用はどのくらいかかるのでしょうか。結論から言うと、開業費用は物件の広さ・内装・導入する治療機器で大きく変わり、数百万円台から1,000万円を超えるケースまで幅があります。目安として、日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、全業種の開業費用は平均975万円・中央値600万円でした。

ただし接骨院の場合、費用より先に確認すべきことがあります。健康保険の「受領委任」を扱うには施術管理者の要件(実務経験3年+研修)を満たす必要があり、これを満たしていないと保険施術を前提にした事業計画そのものが成り立ちません。また、施術所には法律で決められた構造設備基準があり、物件選びと内装費に直結します。

この記事では、公的統計・法令・公的融資の公式情報をもとに、接骨院の開業費用の内訳、資金調達の方法、保健所への届出や受領委任の手続き、開業までのスケジュールを整理しました。数値にはすべて出典を示しています。

接骨院の開業を取り巻く現状(厚生労働省の統計)

まず市場の状況を確認しておきましょう。厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、令和6年末時点の就業柔道整復師は78,666人、柔道整復の施術所は50,924か所です。

年末就業柔道整復師(人)柔道整復の施術所(か所)
平成26年(2014)63,87345,572
平成30年(2018)73,01750,077
令和2年(2020)75,78650,364
令和4年(2022)77,63250,916
令和6年(2024)78,66650,924
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表5・表6
就業柔道整復師と施術所数の推移(2014〜2024年)
出典: 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

柔道整復師の数は増え続けている一方、施術所の数は令和4年から令和6年にかけて8か所しか増えていません。新規開業と廃業がほぼ拮抗している状態で、「開業すれば患者が来る」時代ではなくなっていると読み取れます。開業費用を考えるときは、「いくらで開けるか」だけでなく「いくらで何か月もちこたえられるか(運転資金)」までセットで計画することが重要です。

接骨院の開業に必要な資格と「施術管理者」の要件

接骨院は、柔道整復師の国家資格を持つ人が開設・運営する施術所です(柔道整復師法)。資格があれば施術所を開設すること自体は可能ですが、健康保険を使った施術(受領委任)を扱う場合は、施術管理者としての要件を満たす必要があります。

受領委任を扱うための施術管理者の要件

全国柔整鍼灸協同組合が厚生労働省の通知をもとにまとめた「施術管理者」になるための要件によると、2024年4月以降に施術管理者の届出をする場合の要件は次のとおりです。

  • 実務経験3年(柔道整復師として施術所や保険医療機関で従事した期間。複数の勤務先の合算も可)
  • 上記のうち最低1年間は施術所での実務経験が必要
  • 施術管理者研修(連続した2日間・合計16時間)を修了していること
  • 研修の修了証の有効期限は修了日から5年間

研修は開催日程と定員が決まっているため、開業予定日から逆算して早めに申し込むのが基本です。勤務先での実務経験証明書の取得にも時間がかかることがあるので、独立を考え始めた段階で確認しておきましょう。

なお、整体院やカイロプラクティックは国家資格を前提としない業態で、接骨院とは法律上の位置づけが異なります。違いは整体・整骨院・カイロプラクティックの違いで詳しく解説しています。

厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)の職業紹介動画「柔道整復師」

接骨院の開業費用はどのくらい?公的調査から見る目安

接骨院だけに絞った公的な開業費用の統計はありません。そこで、参考になるのが日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」です。公庫が2024年4〜9月に融資した開業1年以内の企業を対象とした調査で(回収2,165社)、開業業種では「医療・福祉」が16.7%を占めています。

項目調査結果
開業費用の平均値975万円
開業費用の中央値600万円
開業費用「250万円未満」の割合20.1%
開業費用「250万〜500万円未満」の割合21.7%
開業時の資金調達額(平均)1,219万円
うち金融機関等からの借り入れ平均827万円(67.9%)
うち自己資金平均279万円(22.9%)
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(調査時点2025年8月・全業種)

全業種の数字なので、接骨院にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、中央値600万円・資金の約7割を借り入れでまかなうというのが、いま実際に開業している人の標準的な姿です。接骨院は治療機器やレセプト用のソフト(レセコン)が必要な分、同じ広さの一般的な店舗より設備費がかさみやすい点を念頭に置いてください。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

開業費用の内訳:初期投資と運転資金

開業費用は、大きく「初期投資(開業までに一度だけかかるお金)」と「運転資金(開業後の赤字期間を支えるお金)」に分けて考えます。下の表は、開業支援会社が公表している項目別の目安です(一次情報ではなく民間企業の公表値です。自分の計画では必ず見積もりを取って置き換えてください)。

費用項目主な中身目安(開業支援会社の公表値)金額を左右するポイント
物件初期費用保証金・敷金、礼金、仲介手数料、前家賃30万〜300万円立地と広さ。保証金は家賃の数か月分が多い
内装工事費用間仕切り、施術室・待合室、照明、換気、看板100万〜500万円居抜きかスケルトンか。構造設備基準への対応
治療機器・レセコン電療機器、ベッド、レセプトソフト200万〜600万円新品・中古・リースの選択
什器・備品受付カウンター、タオル、消耗品、衛生用品30万〜200万円消毒設備は法令上必須
広告・宣伝費用看板、チラシ、Webサイト、予約システム30万〜200万円広告できる内容に法律上の制限あり
出典:ジョイパル「接骨院・整骨院開業費用はいくら必要?」の見出しに記載の金額レンジ(2026年9月25日時点)。公的な統計ではない

物件と内装:構造設備基準を満たす広さが必要

施術所には柔道整復師法施行規則 第18条で次の構造設備基準が定められています。物件の内見の段階で、この基準を満たせる間取りかどうかを確認しましょう。

  • 6.6平方メートル以上の専用の施術室があること
  • 3.3平方メートル以上の待合室があること
  • 施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放できること(代わりになる適当な換気装置があればよい)
  • 施術に用いる器具・手指などの消毒設備があること

基準を満たさない物件を契約してしまうと、追加工事で内装費が膨らみます。居抜き物件(前の店舗の内装が残っている物件)は初期費用を抑えやすい一方、間取りが基準に合うか、換気がとれるかは必ず確認してください。

治療機器・消耗品:新品・中古・リースを比較する

治療機器は開業費用の中でも大きな割合を占めます。すべて新品でそろえる必要はなく、中古やリースを組み合わせることで初期投資を抑えられます。タオルやテーピングなどの消耗品は開業後もずっとかかる費用なので、接骨院の仕入れをネット通販に!各社ECサイト比較も参考に、仕入れ先を比較しておきましょう。

運転資金:少なくとも3〜6か月分を確保する

開業直後は患者数が安定せず、しかも保険施術の療養費は請求から入金まで時間差があるため、売上が立っても手元の現金が不足しがちです。家賃・人件費・リース料・広告費・生活費を含めた固定費の3〜6か月分を運転資金として確保しておくのが安全です。療養費の請求を外部に任せる場合の費用や入金サイクルは、接骨院向けの療養費請求代行サービス・請求団体の比較で比較しています。

開業資金の調達方法と比較

公的融資の代表が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です(2025年3月に「新規開業資金」から名称変更)。新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間5年以内)です。

調達方法特徴向いている人注意点
日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金)創業時でも利用しやすい公的融資。返済期間が長い初めて開業する人全般事業計画書・自己資金の説明が重視される
自治体の制度融資(信用保証協会付き)自治体・金融機関・信用保証協会が連携。利子補給がある地域も開業地の自治体の制度を使える人制度の内容は自治体ごとに異なる。保証料がかかる
民間金融機関のプロパー融資銀行・信用金庫の独自融資取引実績や担保がある人創業時は審査のハードルが高め
自己資金・親族からの援助返済負担がない(または少ない)計画的に貯蓄してきた人借入審査では自己資金の積み上げ経緯も見られる
機器のリース初期投資を月額払いに分散できる手元資金を運転資金に残したい人総支払額は購入より多くなりやすい
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式ページ(2026年9月25日時点)ほか。各制度の詳細は各機関で確認のこと

融資の審査では、事業計画書の「売上の根拠」が問われます。接骨院の場合、施術単価(保険・自費)×1日の来院数×営業日数という形で、商圏の人口や競合の数を踏まえて説明できるようにしておきましょう。

開業の手続き:保健所への届出と受領委任

接骨院の開業手続きのうち、柔道整復に特有のものは次の2つです。税務署への開業届など一般的な手続きもあわせて進めます。

① 保健所への施術所開設届(開設後10日以内)

柔道整復師法 第19条により、施術所を開設した人は開設後10日以内に、開設の場所や業務に従事する柔道整復師の氏名などを、施術所の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出なければなりません。届出事項は施行規則第17条で、開設者の氏名・住所、開設年月日、名称、開設の場所、従事する柔道整復師の氏名、構造設備の概要と平面図と定められています。

法律上は「開設後」の届出ですが、実務では内装工事の前に図面を持って保健所に事前相談するのが一般的です。構造設備基準を満たしているかを工事前に確認できるため、やり直し工事のリスクを減らせます。

② 受領委任の申出(地方厚生局)

患者が窓口で一部負担金だけを支払い、残りを施術所が保険者に請求する「受領委任」を扱うには、施術管理者の要件を満たしたうえで、地方厚生(支)局に申し出て承諾を受ける必要があります。承諾前の施術は受領委任で請求できないため、開院日との兼ね合いに注意が必要です。

③ 税務署への開業届など

個人で開業する場合は、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」、青色申告を選ぶ場合は「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。スタッフを雇用する場合は労働保険・社会保険の手続きも必要です。

接骨院の開業手続きの流れ(柔道整復師法第19条・受領委任の取扱規程をもとに作成)
接骨院の開業手続きの流れ(柔道整復師法第19条・受領委任の取扱規程をもとに作成)

開業までのスケジュール(6か月前からの逆算)

開業準備は、資金・物件・手続きが互いに影響し合います。一般的な流れを、開業日から逆算したスケジュール表にまとめました。

時期主にやること費用が発生するもの
開業12〜6か月前施術管理者の要件確認・研修申込、実務経験証明の準備、事業計画づくり、自己資金の整理研修受講料
開業6か月前開業エリアの商圏調査、融資の相談・申込—
開業5〜4か月前物件の選定・契約(構造設備基準を確認)、治療機器・レセコンの選定物件初期費用
開業4〜3か月前保健所への事前相談、内装設計・工事、Webサイト・予約システムの準備内装工事費、Web制作費
開業2〜1か月前機器の搬入、スタッフの採用・研修、受領委任の申出準備、看板・チラシ機器代・リース、人件費、広告費
開業〜10日以内保健所へ施術所開設届、税務署へ開業届—
開業後3〜6か月集患施策の改善、療養費請求の運用を安定させる運転資金(固定費)
施術所開設届の期限は柔道整復師法第19条による。そのほかの時期は一般的な目安で、地域や物件により前後する
開業までの逆算スケジュール
  • 12〜6か月前
    要件確認と事業計画
    施術管理者の研修申込、実務経験の証明、自己資金の整理
  • 6か月前
    商圏調査と融資相談
    日本政策金融公庫などへ創業計画書を提出
  • 5〜4か月前
    物件契約と機器選定
    構造設備基準を満たす物件か確認
  • 4〜3か月前
    保健所へ事前相談・内装工事
    図面を持参して基準を確認してから着工
  • 2〜1か月前
    機器搬入・採用・広告準備
    受領委任の申出書類をそろえる
  • 開業〜10日以内
    施術所開設届・開業届
    柔道整復師法第19条の期限
  • 開業後3〜6か月
    集患と請求運用の安定化
    運転資金で固定費をまかなう期間

見落としがちな税金:保険施術と自費施術で消費税の扱いが違う

開業後の資金計画で見落とされやすいのが消費税です。国税庁のタックスアンサー No.6201「非課税となる取引」では、健康保険法・国民健康保険法などによる医療、労災保険や自賠責保険の対象となる医療などの「社会保険医療の給付等」が非課税取引とされています。接骨院では、保険を使った施術と、自費メニューで消費税の扱いが分かれる点を押さえておきましょう。

課税事業者となり簡易課税制度を選ぶ場合、国税庁のタックスアンサー No.6505「簡易課税制度の事業区分」では、サービス業(飲食店業を除く)は第5種事業(みなし仕入率50%)とされています。自費施術の割合を増やす計画なら、開業前に税理士や税務署に確認し、どの課税方式が有利かを試算しておくと安心です。

集客費用をかける前に知っておきたい広告の制限

開業時の広告費を計画するときは、柔道整復師法 第24条の広告の制限を必ず確認してください。柔道整復の業務や施術所について広告できるのは、柔道整復師である旨と氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日・施術時間、その他厚生労働大臣が指定する事項などに限られ、技能・施術方法・経歴に関する事項は広告できません。

看板やチラシを作り直すことになれば、その分の費用が無駄になります。ポータルサイトやSNSを活用した集客の方法は、接骨院が集患・集客する方法まとめ(ポータルサイト)や接骨院の簡単SNS広告の運用まとめも参考にしてください。

開業費用で失敗しないための5つのチェックポイント

  1. 施術管理者の要件を最初に確認する:実務経験3年(うち施術所1年以上)と研修修了がそろわないと受領委任を扱えません
  2. 物件は構造設備基準を満たせるかで選ぶ:施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上・換気・消毒設備を内見時に確認します
  3. 運転資金を初期投資と同じくらい重視する:療養費の入金までの時間差も考え、固定費の3〜6か月分を確保します
  4. 機器は新品・中古・リースを組み合わせる:手元資金を残すことが、開業直後の資金繰りを安定させます
  5. フランチャイズは加盟金とロイヤリティまで含めて比較する:独立開業との総額比較が大切です(参考:「ほねつぎチェーン」加盟院増で売上減?(フランチャイズの実情))

開業前に勤務先で経験を積みながら、施術管理者の要件をそろえ、資金を準備するのが現実的な道筋です。より条件のよい職場で経験を積みたい人は、転職も選択肢に入れてみてください。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

接骨院の開業費用に関するよくある質問

Q
接骨院は自己資金ゼロでも開業できますか?
A

制度上は不可能ではありませんが、現実的には難しいと考えたほうが安全です。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業時の資金調達のうち自己資金は平均279万円(調達額の22.9%)でした。融資の審査でも自己資金とその貯め方は重視されるため、計画的に準備しておきましょう。

Q
柔道整復師の資格を取ってすぐに接骨院を開業できますか?
A

施術所の開設自体は可能ですが、健康保険の受領委任を扱うには施術管理者の要件が必要です。2024年4月以降の届出では実務経験3年(うち施術所で1年以上)と、2日間・16時間の施術管理者研修の修了が求められます。

Q
施術所開設届はいつまでに出せばよいですか?
A

柔道整復師法第19条により、開設後10日以内に施術所の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出ます。構造設備の概要と平面図も必要なので、工事前に保健所へ事前相談しておくと安心です。

Q
自宅の一室で接骨院を開業できますか?
A

施術室6.6平方メートル以上、待合室3.3平方メートル以上、換気、消毒設備といった構造設備基準を満たせば、自宅の一部を施術所にすることも考えられます。住居部分との区分や賃貸物件の場合の用途制限もあるため、保健所と家主・管理会社に事前に確認してください。

Q
日本政策金融公庫の融資はいくらまで借りられますか?
A

新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円です。ただし実際の融資額は事業計画や自己資金、返済能力などをもとに審査で決まります。返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。

まとめ:接骨院の開業費用は「要件・物件・運転資金」の順に固める

接骨院の開業費用は、物件・内装・治療機器の選び方で大きく変わります。公的な目安としては、日本政策金融公庫の調査で全業種の開業費用が平均975万円・中央値600万円、資金の約7割を借り入れでまかなっているのが実態です。

そのうえで接骨院ならではのポイントは、①受領委任を扱うための施術管理者の要件(実務経験3年+研修)、②施術所の構造設備基準を満たす物件選び、③療養費の入金サイクルを見込んだ運転資金の3つです。この順番で固めていけば、ムダな出費と開業の遅れを防ぎやすくなります。

参考・出典

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