「柔道整復師に将来性はあるの?」「柔道整復師は将来性がないと聞いて不安」――これから養成校を目指す方も、すでに接骨院で働いている方も、一度は気になるテーマです。
結論から言うと、柔道整復師という資格そのものの需要がなくなることは考えにくい一方で、「保険施術だけの接骨院で働き続ける」働き方の将来性は厳しくなっています。国の統計を見ると、施術所は約5万か所で頭打ち、柔道整復の療養費(保険収入)は8年で約1,000億円減った一方、高齢者は増え続け、柔道整復・鍼灸・マッサージ市場全体は自費施術へのシフトで1兆円を超えています。
この記事では、厚生労働省の衛生行政報告例・国家試験の結果・療養費の推移・賃金構造基本統計調査、そして民間の市場調査をもとに、柔道整復師の現状と将来性を数字で整理します。そのうえで「将来性がない」と言われる理由、理学療法士との比較、今後も選ばれる柔道整復師になるためのキャリアの選び方まで解説します。
この記事のポイント
・就業柔道整復師は10年で約1.5万人増えて78,666人(令和6年末)。施術所は50,924か所でほぼ横ばい
・国家試験の受験者は10年で7,122人→4,434人と約4割減。新たに資格を取る人は減っている
・柔道整復療養費は平成25年度3,855億円→令和3年度2,867億円に減少
・一方で柔整・鍼灸・マッサージ市場は2025年に1兆70億円(矢野経済研究所推計)。伸びているのは自費・介護・スポーツ
・将来性を左右するのは資格ではなく「保険依存から抜け出せる専門性と働く場所の選び方」
柔道整復師の現状|就業者数と施術所数の推移
まずは、柔道整復師がどれくらい働いていて、接骨院・整骨院(柔道整復の施術所)がどれくらいあるのかを見てみましょう。厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、令和6年末時点の就業柔道整復師は78,666人、柔道整復の施術所は50,924か所です。
| 年末 | 就業柔道整復師(人) | 柔道整復の施術所(か所) | 1施術所あたりの柔道整復師(人) |
|---|---|---|---|
| 平成26年(2014) | 63,873 | 45,572 | 1.40 |
| 平成30年(2018) | 73,017 | 50,077 | 1.46 |
| 令和2年(2020) | 75,786 | 50,364 | 1.50 |
| 令和4年(2022) | 77,632 | 50,916 | 1.52 |
| 令和6年(2024) | 78,666 | 50,924 | 1.54 |

10年間で就業柔道整復師は約1.5万人(約23%)増えたのに対し、施術所は平成30年以降ほぼ横ばいです。特に令和4年末から令和6年末の2年間では、施術所はわずか8か所しか増えていません。
ここから読み取れるのは、「独立開業して接骨院を増やす」余地が小さくなり、1つの施術所で複数の柔道整復師が働く形や、接骨院以外の職場で働く柔道整復師が増えているということです。新規開業と廃業がほぼ同じペースで起きている実態は整骨院が廃業する理由と回避策で詳しく解説しています。
国家試験の受験者は10年で約4割減|新規参入は細っている
「柔道整復師は増えすぎ」と言われる一方で、見落とされがちなのが新しく資格を取る人の数が減っていることです。厚生労働省が公表している柔道整復師国家試験の結果を並べると次のとおりです。
| 回(実施年) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第24回(2016年) | 7,122人 | 4,583人 | 64.3% |
| 第28回(2020年) | 5,270人 | 3,401人 | 64.5% |
| 第33回(2025年) | 4,513人 | 2,607人 | 57.8% |
| 第34回(2026年) | 4,434人 | 3,170人 | 71.5% |

受験者数は2016年の7,122人から2026年には4,434人へと約38%減少しました。合格者数も毎年3,000人前後にとどまり、2016年の4,583人と比べると大きく減っています。合格率は年によって57.8%〜71.5%と振れ幅があり、決して「誰でも受かる試験」ではありません。
就業者の総数は当面増え続けるとみられますが、毎年の新規参入が減っているため、増え方は今後ゆるやかになっていくと考えられます。接骨院の現場では「求人を出しても柔道整復師が集まらない」という声も聞かれるようになっており、経験を積んだ柔道整復師の価値はむしろ上がっていく可能性があります。
保険(療養費)の市場は縮小|「将来性がない」と言われる最大の理由
柔道整復師の将来性に不安の声が出る最大の理由は、接骨院の収入の柱だった健康保険の療養費が減っていることです。厚生労働省の柔道整復療養費検討専門委員会の資料によると、柔道整復療養費(推計)は次のように推移しています。
| 年度 | 柔道整復療養費(推計) | 平成25年度比 |
|---|---|---|
| 平成25年度 | 3,855億円 | ― |
| 平成27年度 | 3,789億円 | -1.7% |
| 平成29年度 | 3,437億円 | -10.8% |
| 令和元年度 | 3,178億円 | -17.6% |
| 令和3年度 | 2,867億円 | -25.6% |
8年で約1,000億円、率にして約4分の1の減少です。柔道整復師の数が増え、施術所の数が横ばいのまま療養費が減っているので、1人・1院あたりの保険収入は確実に細っています。保険の対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった外傷性のけがに限られ、長期・多部位の施術への審査も厳しくなってきました。2026年の改定内容を含む最新のルールは整骨院の保険請求の仕組みと2026年の改定点で解説しています。
「保険施術中心の接骨院で、同じやり方を続ける」ことの将来性は低いと考えるのが現実的です。ただしこれは資格の価値が下がったという意味ではなく、収入源と働く場所の組み合わせが変わってきたということです。
それでも柔道整復師に将来性がある3つの根拠
根拠1:高齢者の増加で「けが・痛み」のケア需要は続く
総務省統計局の統計トピックスNo.146によると、65歳以上の高齢者人口は3,619万人、総人口に占める割合は29.4%で過去最高となっています。転倒による打撲・捻挫、変形性の関節の痛みなど、高齢者の「けがと痛み」は柔道整復師の専門領域と重なります。
根拠2:市場全体は自費シフトで1兆円超え
矢野経済研究所の「柔道整復・鍼灸・マッサージ市場に関する調査(2026年)」(2026年6月11日発表)では、2025年の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は前年比101.1%の1兆70億円と推計されています。同調査は、高齢者の増加という構造的な要因に加え、自費治療へのシフトが市場を押し上げたと分析しています。保険の療養費が減っても、自費施術・予防・美容などの市場が伸びていることがわかります。
同調査は今後の経営課題として、同業者や周辺業種との競合激化による患者数の減少への対応、人材の確保・育成、2026年度の療養費改定への対応を挙げています。裏を返せば、自費で選ばれる技術と集客力を持つ柔道整復師、そして人材を育てられる柔道整復師には需要があるということです。
根拠3:介護・スポーツなど接骨院以外にも活躍の場がある
柔道整復師は、デイサービス(通所介護)などに配置が求められる機能訓練指導員の対象資格の一つです。厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会の資料でも、機能訓練指導員の対象資格として理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・あん摩マッサージ指圧師とともに柔道整復師が挙げられています。高齢化が進むほど、介護分野での活躍の場は広がります。
このほか、スポーツチームや部活動のトレーナー、整形外科クリニックでのリハビリ助手、企業の健康管理、養成校の教員など、柔道整復師の知識を生かせる職場は接骨院以外にも複数あります。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
「柔道整復師は将来性がない」と言われる5つの理由と実態
ネット上で「柔道整復師 将来性ない」と検索されることが多いのは、次のような理由からです。それぞれ、統計から見た実態を整理しました。
| よく言われる理由 | 統計から見た実態 | どう備えるか |
|---|---|---|
| 柔道整復師が増えすぎている | 就業者は10年で約1.5万人増。ただし国試の受験者は約4割減で、新規参入は細っている | 経験年数と専門分野で差別化する |
| 保険収入が減っている | 療養費は平成25年度3,855億円→令和3年度2,867億円 | 自費メニュー・介護・スポーツなど収入源を分散する |
| 接骨院が飽和している | 施術所は約5万か所で横ばい。新規開業と廃業が拮抗 | 開業前に商圏と集客の仕組みを設計する |
| 給料が安い | 柔道整復師を含む区分の年収は約430万円。職場の規模で170万円以上の差 | 規模の大きい法人・役職・専門職で年収を上げる |
| 整体など無資格業態との競合 | 国家資格は柔道整復師側の強み。保険の取り扱いも有資格者だけ | 資格と医学的知識をわかりやすく伝える |
給料については、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の職種別統計(e-Stat)で、柔道整復師を含む「その他の保健医療従事者」の年収(月給×12+賞与)は約430万円、企業規模1,000人以上では約477万円、5〜9人では約305万円です。詳しい内訳と年収の上げ方は柔道整復師の給料・年収の実態(厚労省データ)でまとめています。
また、国家資格を必要としない整体院との違いも、柔道整復師の強みとして押さえておきたいポイントです。整体院の開業に資格は必要?や整体・整骨院・カイロプラクティックの違いもあわせて読むと、資格の位置づけがよくわかります。
柔道整復師と理学療法士の将来性を比較
柔道整復師とよく比べられるのが理学療法士です。どちらも体の機能にかかわる国家資格ですが、働く場所や将来性の考え方は大きく異なります。
| 比較項目 | 柔道整復師 | 理学療法士 |
|---|---|---|
| 主な職場 | 接骨院・整骨院、整形外科、介護施設、スポーツ現場 | 病院、介護老人保健施設、訪問リハビリ |
| 独立開業 | できる(施術所の開設届。保険取扱いは施術管理者の要件あり) | 原則、医師の指示のもとで働く(開業は制限的) |
| 主な収入源 | 療養費(保険)+自費施術 | 医療保険・介護保険の診療報酬・介護報酬 |
| 年収(統計区分・令和6年) | 約430万円(その他の保健医療従事者) | 約444万円(PT・OT・ST等) |
| 将来性のカギ | 自費・専門性・経営力 | 病院・介護報酬の動向、訪問リハの拡大 |
理学療法士は病院や介護施設など規模の大きい組織で働く人が多く、給与は安定しやすい反面、独立開業の道は限られます。柔道整復師は給与の平均こそやや低いものの、自分の施術所を開ける数少ない医療系国家資格であり、経営力と専門性次第で収入の上限が大きく変わる資格です。「安定」を重視するか「独立の自由度」を重視するかで、向いている資格は異なります。
将来性のある柔道整復師のキャリアパス
柔道整復師のキャリアは、接骨院で臨床経験を積んだあと、いくつかの方向に分かれていきます。代表的な道筋を図にまとめました。

独立や分院長を目指すうえで最初の節目になるのが、健康保険を取り扱う「施術管理者」の要件です。全国柔整鍼灸協同組合の解説によると、施術管理者になるには実務経験3年(うち施術所で1年以上)と、2日間・16時間の施術管理者研修の修了が必要です。開業を考えている方は、接骨院の開業費用と資金調達・届出の流れで開業費用と資金調達の目安も確認しておきましょう。
- 1〜3年目臨床の基礎を固める外傷の見立て・固定・手技を幅広く経験。保険請求のルールも身につける
- 3年目〜施術管理者の要件を満たす実務経験3年+研修修了で、保険取扱いの施術所を管理できる立場に
- 4〜7年目専門分野を決めるスポーツ・高齢者・産後ケアなど対象を絞り、自費メニューや関連資格で強みを作る
- 8年目〜院長・独立・転身を選ぶ分院長、独立開業、介護・スポーツ・教育分野など、経験を生かせる場所へ
将来も選ばれる柔道整復師になるための5つのポイント
- 保険だけに頼らない技術を持つ:自費で「この先生に診てほしい」と言われる専門性(スポーツ外傷、高齢者の転倒予防、姿勢改善など)を育てる。
- 集客と経営の基本を学ぶ:MEO・LINE・紹介など、患者が継続的に来る仕組みを理解しておくと、勤務でも独立でも評価が上がる(接骨院の集客方法12選)。
- 介護・スポーツなど接骨院以外の職場も視野に入れる:機能訓練指導員やトレーナーの経験は、高齢化が進むほど生きる。
- 制度とルールを正しく理解する:療養費の対象や受領委任のルール、交通事故(自賠責)の取り扱いなど、患者に正しく説明できる知識は信頼につながる(交通事故のむちうちで整骨院に通う流れ)。
- 職場選びで成長環境を重視する:教育体制・症例数・キャリアパスが明確な職場は、将来の選択肢を広げてくれる。
将来性のある職場を見分けるチェックリスト
| チェック項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 収入源 | 保険施術だけでなく、自費メニューや介護・スポーツなど複数の柱があるか |
| 教育体制 | 新人研修・症例検討・外部セミナー補助などがあるか |
| キャリアパス | 分院長・施術管理者・独立支援など、次の役割が示されているか |
| 給与と待遇 | 社会保険完備か、賞与・昇給の基準が明確か、残業代の扱いはどうか |
| 法令順守 | 療養費の請求や広告のルールを守っているか(不適切な請求は将来のリスク) |
柔道整復師の求人を探すときは、給与額だけでなく「その職場で5年後の自分が何をできるようになっているか」をイメージして選ぶことが大切です。国の施策の最新情報は厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師」のページで確認できます。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
柔道整復師の将来性に関するよくある質問
- Q柔道整復師は本当に将来性がないのですか?
- A
保険施術中心の接骨院だけに頼る働き方は厳しくなっていますが、資格そのものの需要がなくなるわけではありません。高齢者人口は3,619万人(総人口の29.4%)と過去最高で、柔整・鍼灸・マッサージ市場は自費シフトにより2025年に1兆70億円(矢野経済研究所推計)と推計されています。専門性と働く場所の選び方で将来性は大きく変わります。
- Q柔道整復師は増えすぎているのでは?
- A
就業柔道整復師は令和6年末で78,666人と10年で約1.5万人増えました。一方、国家試験の受験者は2016年の7,122人から2026年の4,434人へ約4割減っており、新たに資格を取る人は減少しています。経験を積んだ柔道整復師の価値は今後むしろ上がる可能性があります。
- Q柔道整復師と理学療法士、将来性があるのはどちらですか?
- A
一概には言えません。理学療法士は病院・介護施設での安定した雇用が強みで、柔道整復師は独立開業できる点と自費施術で収入を伸ばせる点が強みです。統計上の年収は理学療法士等の区分が約444万円、柔道整復師を含む区分が約430万円で、大きな差はありません。
- Q柔道整復師が接骨院以外で働ける場所はありますか?
- A
あります。デイサービスなどの機能訓練指導員、スポーツトレーナー、整形外科クリニック、企業の健康管理、養成校の教員などです。特に機能訓練指導員は介護分野で配置が求められる職種で、柔道整復師はその対象資格の一つです。
- Q柔道整復師の国家試験の合格率はどのくらいですか?
- A
厚生労働省の発表では、2026年3月実施の第34回は受験者4,434人・合格者3,170人で合格率71.5%、前年の第33回は57.8%でした。年によって合格率は大きく変わるため、計画的な試験対策が必要です。
まとめ|柔道整復師の将来性は「働き方の選び方」で決まる
- 就業柔道整復師は78,666人(令和6年末)で増加、施術所は50,924か所でほぼ横ばい
- 国家試験の受験者は10年で約4割減り、新規参入は細っている
- 柔道整復療養費は8年で約1,000億円減。保険施術だけに頼る働き方の将来性は低い
- 一方で高齢化と自費シフトにより、柔整・鍼灸・マッサージ市場は1兆円超え
- 専門性・経営力・介護やスポーツなど活躍の場の広さが、これからの柔道整復師の将来性を左右する
「資格を取れば一生安泰」という時代ではありませんが、柔道整復師は独立も転身も選べる、選択肢の多い国家資格です。数字で現状を正しく把握し、自分に合った働き方と職場を選んでいきましょう。
参考・出典
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
- 厚生労働省「第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」
- 厚生労働省「第33回柔道整復師国家試験の合格発表について」
- 厚生労働省「第28回柔道整復師国家試験の合格発表について」
- 厚生労働省「第24回柔道整復師国家試験の合格発表について」
- 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会(令和6年1月25日)資料
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(e-Stat)
- 矢野経済研究所「柔道整復・鍼灸・マッサージ市場に関する調査を実施(2026年)」
- 総務省統計局 統計トピックスNo.146「統計からみた我が国の高齢者」
- 社会保障審議会 介護給付費分科会 第153回 資料5「介護人材関係について」
- 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師」
- 全国柔整鍼灸協同組合「施術管理者について」
※本記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとに作成しています。

