「接骨院を開業するとき、返さなくていいお金はもらえるのか」「レセコンや予約システムにIT導入補助金は使えるのか」——開業や設備の入れ替えを考える院長から、よく出る質問です。ネットには「整骨院で使える補助金○選」という記事が多くありますが、制度の名前を並べただけで、整骨院ならではの制限が書かれていないものも少なくありません。
開業資金そのものを補助金・助成金でまかなうことはできません。補助金・助成金の多くは「交付決定を受けてから使った経費の一部を、後から受け取る」仕組みで、開業前の支出や保険施術にかかわる経費は対象外になるものがあります。そのうえで、①開業後のIT化(デジタル化・AI導入補助金)、②自費メニューの販路開拓(小規模事業者持続化補助金)、③スタッフの賃上げと設備投資(業務改善助成金)、④スタッフの正社員化(キャリアアップ助成金)、⑤オンライン資格確認の機器(施術所向けの補助)は、条件が合えば接骨院でも検討できます。開業資金の本命は、返済が必要な日本政策金融公庫の融資です。
この記事の要点
①補助金・助成金は後払い。交付決定前の支出は原則対象外で、開業資金の代わりにはならない
②デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は通常枠で補助率1/2・最大450万円。6次締切は2026年10月30日17:00
③持続化補助金は「整骨院等の保険診療報酬が適用されるサービス」が対象外。使えるのは自費の販路開拓など
④スタッフがいる院は業務改善助成金(最大600万円)とキャリアアップ助成金(正社員化1人最大80万円)を検討
⑤開業資金は公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(融資限度7,200万円)が中心
- 補助金と助成金の違いとは:接骨院が最初に知るべき3つのポイント
- 接骨院が使える主な補助金・助成金の比較一覧【2026年10月時点】
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)2026:接骨院の使い方と注意点
- 小規模事業者持続化補助金:整骨院は「保険施術は対象外」に注意
- 業務改善助成金:スタッフの賃上げと設備投資をセットで
- キャリアアップ助成金:パート・有期のスタッフを正社員にするとき
- マイナ保険証(オンライン資格確認)の補助金と協力金:接骨院向けの制度
- 開業時に使えるのは融資と自治体の創業支援:費用の考え方
- 失敗しない申請の順番:開業前から1年目までのロードマップ
- Q&A
- 最後に|接骨院の補助金・助成金は「開業後に、目的別に」使う
- 参考・出典
補助金と助成金の違いとは:接骨院が最初に知るべき3つのポイント
「補助金」と「助成金」は似た言葉ですが、所管や審査の仕組みが違います。一般に、中小企業庁などの経済産業省系の制度は「補助金」と呼ばれ、予算と採択件数が決まっていて審査(採択)があります。厚生労働省の雇用関係の制度は「助成金」と呼ばれることが多く、要件を満たせば原則として支給される一方、雇用保険に加入するスタッフがいることなどが前提になります。
| 比較項目 | 補助金(例:デジタル化・AI導入補助金、持続化補助金) | 助成金(例:業務改善助成金、キャリアアップ助成金) |
|---|---|---|
| 主な所管 | 中小企業庁・中小企業基盤整備機構など | 厚生労働省(労働局・ハローワーク) |
| 目的 | 生産性向上・販路開拓などの事業投資 | 賃上げ・正社員化など雇用の改善 |
| 審査 | 公募ごとに審査があり、不採択もある | 要件を満たせば原則支給(予算や期限による制約あり) |
| 申請時期 | 公募期間・締切回が決まっている | 取組の前に計画届・交付申請が必要なものが多い |
| スタッフ0人の院 | 申請できる制度がある | 労働者がいないと対象外のものが多い |
| 受け取り | 事業完了・実績報告の後(後払い) | 取組の実施・支給申請の後(後払い) |
接骨院が最初に押さえたいポイントは3つです。
- どちらも後払い:先に自己資金や融資で支払い、実績報告や支給申請のあとで一部が戻る。資金繰りは融資とセットで考える
- 「先に動くと対象外」:補助金は交付決定前に契約・発注・支払いした経費は原則対象外。助成金も計画届や交付申請の前に取り組むと対象外になるものがある
- 保険施術との線引き:療養費(保険)でまかなわれる施術に関わる経費を補助対象外とする制度がある。自費メニューとの区別が必要
開業の全体予算をまだ決めていない場合は、先に接骨院の開業費用はいくら?内訳・融資・届出で内訳と資金調達の流れを確認してから読み進めると、どの費用に補助金を当てられるかがわかりやすくなります。
接骨院が使える主な補助金・助成金の比較一覧【2026年10月時点】
接骨院・整骨院で検討しやすい制度を一覧にしました。金額は各制度の公式資料に記載された上限・補助率で、実際の受給額は申請内容や審査によって変わります。
| 制度 | 対象になりやすい経費 | 上限・補助率 | 開業前に申請 | スタッフ0人 |
|---|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)通常枠 | 予約・顧客管理などの登録ITツール、クラウド利用料(最大2年分)、導入設定 | 5万〜450万円・補助率1/2以内(要件により2/3以内) | ×(事業を営んでいることが前提) | ○ |
| 同 インボイス枠(インボイス対応類型) | 会計・受発注・決済ソフト、PC・タブレット、レジ | ソフト350万円以下・3/4〜2/3/PC等10万円・レジ20万円(1/2) | × | ○ |
| 小規模事業者持続化補助金 | 自費メニューのチラシ・ウェブサイト・改装など販路開拓 | 一般型50万円・創業型200万円(いずれも2/3) | ×(申請時点で開業が必要) | ○ |
| 業務改善助成金 | 賃上げとセットの設備投資・コンサルティング | 30万〜600万円・助成率3/4〜4/5 | × | ×(労働者が必要) |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 有期・パートのスタッフを正社員に転換 | 1人40万〜80万円(中小企業)+加算 | × | × |
| オンライン資格確認の導入補助(施術所向け) | 汎用カードリーダー・タブレット等 | 基準事業額4.1万円を上限に実費補助(令和7年度資料) | 制度の公募状況による | ○ |
出典: デジタル化・AI導入補助金事務局『通常枠』・『インボイス枠(インボイス対応類型)』(2026年10月21日参照)/出典: 小規模事業者持続化補助金事務局『一般型 通常枠 第20回公募 公募要領(第8版)』・『創業型 第4回公募 公募要領(第8版)』(2026年)/出典: 厚生労働省『令和8年度業務改善助成金のご案内』・『業務改善助成金』(2026年、10月21日参照)/出典: 厚生労働省『キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内』(令和8年4月8日版)/出典: 柔道整復療養費検討専門委員会資料『柔道整復師の施術所におけるオンライン資格確認について』(令和7年2月28日)
表のとおり、開業前の物件取得・内装・施術機器を直接まかなえる国の補助金はほぼありません。開業時に検討するのは融資と自治体の創業支援で、補助金・助成金は「開業後に、IT化・販路開拓・人の採用と賃上げに使うもの」と考えるのが現実的です。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)2026:接骨院の使い方と注意点
2026年度から、IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」(正式名称:中小企業デジタル化・AI導入支援事業)に名称が変わりました。事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーを組み、事務局の審査を受けて登録されたITツールを導入する場合に、費用の一部が補助されます(事務局サイト)。
通常枠・インボイス枠の補助額と補助率
| 申請枠 | 補助額 | 補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(1プロセス以上) | 5万円以上150万円未満 | 1/2以内(最低賃金要件を満たす場合2/3以内) | 業務プロセスを持つソフトウェア、クラウド利用料(最大2年分)、導入コンサル・設定・研修・保守 |
| 通常枠(4プロセス以上) | 150万円以上450万円以下 | 同上 | 同上 |
| インボイス枠(ソフトウェア) | 50万円以下 | 3/4以内(小規模事業者は4/5以内) | 会計・受発注・決済のうち1機能以上 |
| インボイス枠(ソフトウェア) | 50万円超〜350万円以下 | 50万円以下部分は3/4(4/5)、超える部分は2/3 | 会計・受発注・決済のうち2機能以上 |
| インボイス枠(ハードウェア) | PC・タブレット等10万円以下/レジ・券売機20万円以下 | 1/2以内 | ソフトウェアの使用に資するもの。ハードウェアのみの申請は不可 |
出典: デジタル化・AI導入補助金事務局『通常枠』・『インボイス枠(インボイス対応類型)』(2026年10月21日参照)
通常枠で2/3以内になるのは、令和6年10月〜令和7年9月の間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用していた従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合です。また、通常枠では「汎用プロセス」のみのツールは申請できず、顧客対応・販売支援、会計・財務などの業務プロセスを持つソフトウェアが必要です。
接骨院で対象になりそうなツールと「保険請求」の注意点
接骨院でよく検討されるのは、予約・顧客管理システム、電子カルテ、会計ソフト、キャッシュレス決済・POSレジ、LINE連携ツールなどです。ただし、対象になるのは事務局に登録されたITツールだけで、同じ種類の製品でも登録の有無で結論が変わります。事務局サイトの「ITツール検索」で製品名を確認し、導入予定の業者がIT導入支援事業者に登録されているかもあわせて確かめましょう。
療養費の請求ソフト(レセコン)や電子カルテは、保険施術の業務に使うものです。補助対象になるかは製品の登録内容と公募要領によるため、「レセコンだから対象」「保険請求だから対象外」と決めつけず、申請前にIT導入支援事業者と事務局に確認してください。製品ごとの料金や請求団体との連携は接骨院のレセコン比較、カルテの選び方は整骨院の電子カルテ比較で比較しています。
申請前に必要な手続き:GビズIDプライムとSECURITY ACTION
すべての申請枠で、「GビズIDプライム」アカウントの取得と、情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」宣言(★一つ星または★★二つ星)が交付申請の要件です。事務局は、GビズIDプライムの発行までおおむね2週間、SECURITY ACTIONの宣言済アカウントID発行までおおむね2〜3日かかるとしています。締切直前に思い立っても間に合わないため、申請を考えた時点で先に取っておきましょう。
対象者は個人事業主を含む中小企業・小規模事業者で、医療法人は従業員300人以下が対象です。小規模事業者の区分は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で常時使用する従業員5人以下とされています。
出典: デジタル化・AI導入補助金事務局『申請の対象となる方』・『申請を行う前に必要な手続き』(2026年10月21日参照)
2026年10月21日時点で公表されている締切は、各枠とも6次締切:2026年10月30日(金)17:00(交付決定は2026年12月10日予定、事業実施期間は2027年5月31日17:00まで予定)です。7次締切以降は確定次第公表とされ、事務局は2026年10月9日に「第7次公募回以降における制度変更のお知らせ」を出しています。次回以降に申請する場合は、最新の公募要領を必ず確認してください。
出典: デジタル化・AI導入補助金事務局『事業スケジュール』(2026年10月21日参照)
小規模事業者持続化補助金:整骨院は「保険施術は対象外」に注意
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を補助する制度です。2026年10月時点では、一般型(通常枠)の第20回と、創業間もない事業者向けの創業型の第4回の公募要領が公開されています。
| 区分 | 補助上限 | 補助率 | 申請受付(予定) |
|---|---|---|---|
| 一般型 通常枠(第20回) | 50万円 | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) | 2026年11月5日〜12月15日17:00 |
| 創業型(第4回) | 200万円(インボイス特例で50万円上乗せ) | 2/3 | 2026年11月5日〜12月15日17:00 |
出典: 小規模事業者持続化補助金事務局『一般型 通常枠 第20回公募 公募要領(第8版)』・『創業型 第4回公募 公募要領(第8版)』(2026年)
接骨院・整骨院にとって重要なのは、公募要領の「補助対象外となる事業」に「薬局・整骨院等の保険診療報酬が適用されるサービス」が例示され、対象外経費にも「保険診療で使用する機械や保険診療の宣伝も兼ねるチラシ等」が挙げられていることです。つまり、保険施術の集客や施術機器には使えません。
- 使える可能性がある例:自費メニュー(保険外)の新規顧客向けチラシ、自費メニュー専用のウェブページ、自費施術スペースへの改装など、保険施術と明確に区別できる販路開拓
- 使えない例:保険施術の宣伝を兼ねたチラシ、保険施術で使う物療機器、開業前に契約・支払いした内装工事
- 創業型の条件:申請時点で開業していることが必要。特定創業支援等事業の支援を受けた日と開業日の両方が、締切から過去1年以内であることも要件
- ウェブサイト関連費:補助金交付申請額の上限は30万円で、ウェブサイト関連費だけでの申請はできない
出典: 小規模事業者持続化補助金事務局『一般型 通常枠 第20回公募 公募要領(第8版)』・『創業型 第4回公募 公募要領(第8版)』(2026年)
内装への活用の可否は整骨院の内装費用と構造設備基準、ホームページ制作に使う場合の条件は整骨院のホームページの作り方で詳しく解説しています。持続化補助金を使うなら、まず自費メニューの設計(接骨院の自費移行の進め方)を固め、「保険施術とは別の事業として新しい顧客を獲得する計画」を書けるかどうかが分かれ目になります。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
業務改善助成金:スタッフの賃上げと設備投資をセットで
業務改善助成金は、事業場内で最も低い時間給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資やコンサルティングを行った場合に、その費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。令和8年度は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが前提で、助成上限は最大600万円です。
接骨院の場合、たとえば予約・受付の効率化やスタッフの事務作業を減らす機器・システムの導入と、受付スタッフや施術スタッフの時給引上げをセットで計画する使い方が考えられます。ただし、労働者(従業員)がいない場合は対象になりません。また、引き上げる対象は雇用保険被保険者で雇入れ後6か月を経過した労働者です。
| コース(引上げ額) | 引き上げる労働者数 | 右記以外の事業者 | 事業場規模30人未満の事業者 |
|---|---|---|---|
| 50円コース | 1人 | 30万円 | 40万円 |
| 50円コース | 2〜3人 | 40万円 | 70万円 |
| 50円コース | 4〜5人 | 70万円 | 70万円 |
| 50円コース | 6〜7人 | 90万円 | 90万円 |
| 50円コース | 8人以上 | 110万円 | 110万円 |
| 50円コース | 10人以上※ | 130万円 | 130万円 |
| 70円コース | 1人 | 40万円 | 50万円 |
| 70円コース | 2〜3人 | 50万円 | 100万円 |
| 70円コース | 4〜5人 | 130万円 | 130万円 |
| 70円コース | 6〜7人 | 180万円 | 180万円 |
| 70円コース | 8人以上 | 230万円 | 230万円 |
| 70円コース | 10人以上※ | 300万円 | 300万円 |
| 90円コース | 1人 | 90万円 | 100万円 |
| 90円コース | 2〜3人 | 150万円 | 240万円 |
| 90円コース | 4〜5人 | 270万円 | 270万円 |
| 90円コース | 6〜7人 | 360万円 | 360万円 |
| 90円コース | 8人以上 | 450万円 | 450万円 |
| 90円コース | 10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
出典: 厚生労働省『令和8年度業務改善助成金のご案内』・『業務改善助成金』(2026年、10月21日参照)(※10人以上の区分は特例事業者が10人以上の賃金を引き上げる場合)

助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。助成額は「設備投資等の費用×助成率」と上表の上限額を比べて安いほうになります。
申請期間は令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日までです。厚生労働省は、都道府県によっては9月末が申請期限になると注意を呼びかけています。2026年10月時点ではすでに締め切った地域もあるため、管轄の労働局に必ず確認してください。事業完了期限(納品・支払い・賃金引上げのすべて)は、交付決定の属する年度の1月31日です。
出典: 厚生労働省『令和8年度業務改善助成金のご案内』・『業務改善助成金』(2026年、10月21日参照)
厚生労働省は、「厚生労働省から委託を受けた」と装って助成金の活用を勧誘する事業者がいると注意喚起しています。厚生労働省や労働局が特定の事業者に勧誘を委託することはありません。成功報酬型の申請代行を使う場合も、手数料と、不正受給になった場合の責任の所在を契約前に確認しましょう。
キャリアアップ助成金:パート・有期のスタッフを正社員にするとき
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用・パートなどの非正規雇用のスタッフを正社員に転換した事業主に支給される助成金です。接骨院で、アルバイトの受付スタッフや有期契約の柔道整復師を正社員に登用する場合に検討できます。
| 正社員化前の雇用形態 | 重点支援対象者(中小企業) | それ以外(中小企業) |
|---|---|---|
| 有期雇用労働者 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(40万円×1期) |
| 無期雇用労働者 | 40万円(20万円×2期) | 20万円(20万円×1期) |
出典: 厚生労働省『キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内』(令和8年4月8日版)
重点支援対象者とは、雇入れから3年以上の有期雇用労働者、雇入れから3年未満で過去5年間の正規雇用期間が合計1年以下かつ過去1年間に正規雇用されていない有期雇用労働者、派遣労働者などです。さらに、正社員転換制度を新たに就業規則に規定した場合は1事業所当たり20万円、勤務地限定・職務限定・短時間正社員などの多様な正社員制度を新たに規定した場合は40万円が加算されます(いずれも中小企業・1回のみ)。
受給には、①正社員に転換する前日までにキャリアアップ計画を作成・提出、②転換制度を就業規則などに規定、③転換後6か月間の賃金を転換前6か月間より3%以上増額、の3つが必要です。新規学卒者で雇入れから一定期間を経過していない人は対象外です。支給申請は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に行います。
出典: 厚生労働省『キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内』(令和8年4月8日版)
「先に正社員にしてしまった」場合は対象にならないため、採用の段階から計画しておくことが大切です。採用の進め方は接骨院の求人の出し方、柔道整復師の給与水準は柔道整復師の給料・年収の実態を参考にしてください。
マイナ保険証(オンライン資格確認)の補助金と協力金:接骨院向けの制度
「接骨院 マイナンバー 補助金」「マイナ保険証 補助金 接骨院」と調べる人は多いのに、まとまった説明はあまり見当たりません。受領委任を取り扱う柔道整復の施術所は、2024年12月2日から資格情報だけを確認できる「資格確認限定型」のオンライン資格確認の導入が原則義務化されています。
| 支援 | 内容 | 金額(令和7年度の資料) |
|---|---|---|
| 導入の補助(社会保障・税番号制度システム整備費等補助金) | PC等に接続する汎用カードリーダー、タブレット・スマホ等のモバイル端末などの機器の導入 | 基準とする事業額4.1万円を上限に実費補助 |
| マイナ保険証利用促進の協力金 | オンライン資格確認を導入し利用登録した施術所が、ポスター掲示・チラシ配布・声かけなどの利用促進に取り組む | 1施設当たり5万円 |
出典: 柔道整復療養費検討専門委員会資料『柔道整復師の施術所におけるオンライン資格確認について』(令和7年2月28日)
補助は費用の実費補助で、施術所等向けの総合ポータルサイトにアカウントを登録して申請する仕組みです。この資料は令和7年度の内容のため、令和8年度以降の継続や申請期限は、施術所等向け総合ポータルサイトで最新情報を確認してください。
同じ資料では、未導入のまま「やむを得ない事由」にも当たらない施術所について、令和8年12月を目途に受領委任の取扱いを中止するスケジュールが示されています。これから開業する院は、受領委任の申出とあわせてオンライン資格確認の準備を進めましょう。手続きの流れは接骨院・整骨院の開業届出ガイドと受領委任とは?療養費の仕組みと償還払いとの違いで解説しています。
出典: 柔道整復療養費検討専門委員会資料『柔道整復師の施術所におけるオンライン資格確認について』(令和7年2月28日)
開業時に使えるのは融資と自治体の創業支援:費用の考え方
開業前の物件取得費・内装費・施術機器・運転資金は、補助金ではなく融資と自己資金でまかなうのが基本です。代表的なのが日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用できる人 | 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人 |
| 資金の使いみち | 事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内(据置5年以内)/運転資金10年以内(据置5年以内) |
| 特別利率の例 | 女性、35歳未満または55歳以上の人、認定特定創業支援等事業を受け市区町村の証明書を取得した人など |
出典: 日本政策金融公庫『新規開業・スタートアップ支援資金』(2026年10月21日参照)
ここで注目したいのが、市区町村が実施する「特定創業支援等事業」(創業塾・創業セミナーなど)です。この支援を受けて証明書を取得すると、公庫の特別利率の対象になるほか、持続化補助金の創業型でも「特定創業支援等事業の支援を受けたこと」が要件になっています。開業前にこの支援を受けておくと、融資と開業後の補助金の両方で選択肢が広がります。
自治体によっては、創業者向けの補助金や空き店舗の改装補助、利子補給を独自に行っています。金額や条件は地域ごとに大きく異なるため、開業予定地の市区町村の産業振興課や商工会議所・商工会で確認しましょう。融資の審査や自己資金の目安は接骨院開業の融資:日本政策金融公庫の創業融資と自己資金の目安で詳しく解説しています。
失敗しない申請の順番:開業前から1年目までのロードマップ

- 2026年10月30日デジタル化・AI導入補助金 6次締切各枠とも17:00締切。交付決定は12月10日予定
- 2026年11月5日〜12月15日持続化補助金 申請受付一般型 通常枠 第20回・創業型 第4回(予定)。締切は17:00
- 2026年11月30日まで業務改善助成金 申請期限(最終)地域別最低賃金の発効日の前日が早ければそちらが期限
- 2027年1月31日業務改善助成金 事業完了期限交付決定の属する年度の1月31日までに納品・支払い・賃金引上げ
- 2027年5月31日デジタル化・AI導入補助金 事業実施期限6次締切分の事業実施期間・実績報告期限(予定)
出典: デジタル化・AI導入補助金事務局『事業スケジュール』/持続化補助金 創業型 公募要領/厚生労働省『令和8年度業務改善助成金のご案内』
申請前のチェックリスト
- その経費は交付決定(助成金は計画届・交付申請)の後に契約・支払いする予定になっているか
- 保険施術に関わる経費ではないか(持続化補助金は保険施術・保険施術の宣伝が対象外)
- 導入するITツールとIT導入支援事業者は事務局に登録されているか
- GビズIDプライム(約2週間)とSECURITY ACTION(約2〜3日)は取得済みか
- スタッフを対象にする助成金なら、雇用保険の加入・就業規則・賃金台帳は整っているか
- 補助金が入るまでの立替資金(融資・自己資金)を確保しているか
IT化の具体的な使いどころとしては、予約・リピート管理を整骨院のLINE公式アカウント活用のようなツールと組み合わせる方法もあります。補助金ありきでツールを選ぶのではなく、「院の課題を解決するツールがたまたま対象だった」という順番で考えると失敗しにくくなります。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
Q&A
- Q接骨院の開業資金を補助金でまかなえますか?
- A
まかなえません。補助金・助成金は後払いで、交付決定前の支出は原則対象外です。持続化補助金は申請時点で開業していることが必要で、保険施術に関わる経費も対象外です。開業資金は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(融資限度7,200万円)などの融資と自己資金で準備し、補助金は開業後のIT化や自費の販路開拓に使うのが現実的です。
- Q接骨院でIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)は使えますか?
- A
個人事業主を含む中小企業・小規模事業者が対象のため、接骨院でも申請できます。ただし対象は事務局に登録されたITツールだけで、IT導入支援事業者と一緒に申請します。通常枠は補助率1/2以内・5万〜450万円です。レセコンや電子カルテが対象になるかは製品の登録内容と公募要領によるため、事前に確認してください。
- Qスタッフがいない1人院でも使える制度はありますか?
- A
デジタル化・AI導入補助金や持続化補助金は、スタッフがいなくても申請できます。一方、業務改善助成金は労働者がいない場合は対象外で、キャリアアップ助成金も非正規雇用のスタッフを正社員にすることが前提です。
- Qマイナ保険証の機器に補助金は出ますか?
- A
柔道整復・あはき施術所向けに、オンライン資格確認(資格確認限定型)に必要な汎用カードリーダーやタブレット等の導入を、基準事業額4.1万円を上限に実費補助する事業があります(令和7年度の資料)。利用促進に取り組む施術所への協力金は1施設5万円です。最新の申請期限は施術所等向け総合ポータルサイトで確認してください。
- Q補助金の申請代行に頼んでも大丈夫ですか?
- A
書類作成の支援を受けること自体は可能ですが、厚生労働省は「委託を受けた」と装って助成金を勧誘する事業者に注意を呼びかけています。本来受けられない助成金を提案され不正受給になると、処罰や公表の対象になり得ます。報酬体系と責任の範囲を契約前に確認し、要件は自分でも公式資料で確かめましょう。
最後に|接骨院の補助金・助成金は「開業後に、目的別に」使う
- 補助金・助成金は後払いで、交付決定前の支出は原則対象外。開業資金は融資と自己資金で準備する
- デジタル化・AI導入補助金は通常枠で補助率1/2・最大450万円。6次締切は2026年10月30日17:00。GビズIDプライムとSECURITY ACTIONを先に取得
- 持続化補助金は「整骨院等の保険診療報酬が適用されるサービス」が対象外。自費メニューの販路開拓なら検討の余地あり
- スタッフがいる院は業務改善助成金(最大600万円)とキャリアアップ助成金(正社員化1人最大80万円)。取組の前に計画届・交付申請
- オンライン資格確認の機器は施術所向けの補助(4.1万円上限)と協力金(5万円)がある。最新情報はポータルで確認
- 開業前に特定創業支援等事業を受けておくと、公庫の特別利率と持続化補助金の創業型の両方につながる
制度は毎年のように名称や要件が変わり、締切回ごとに公募要領が更新されます。この記事の内容は2026年10月21日時点の公式情報にもとづいています。申請の前には、必ず最新の公募要領・交付要綱と、商工会議所・労働局などの公的な相談窓口で確認してください。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金事務局「デジタル化・AI導入補助金2026」(2026年10月21日参照)
- 同「通常枠」(2026年10月21日参照)
- 同「インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年10月21日参照)
- 同「申請の対象となる方」(2026年10月21日参照)
- 同「申請を行う前に必要な手続き」(2026年10月21日参照)
- 同「事業スケジュール」(2026年10月21日参照)
- 小規模事業者持続化補助金事務局「一般型 通常枠 第20回公募 公募要領(第8版)」(2026年)
- 小規模事業者持続化補助金事務局「創業型 第4回公募 公募要領(第8版)」(2026年)
- 厚生労働省「業務改善助成金」(2026年10月21日参照)
- 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(2026年)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」(2026年10月21日参照)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内」(令和8年4月8日版)
- 柔道整復療養費検討専門委員会資料「柔道整復師の施術所におけるオンライン資格確認について」(令和7年2月28日)
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(2026年10月21日参照)

