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鍼灸院の開業費用は300万〜800万円?内訳・保険の条件・届出【2026】

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鍼灸院(はり・きゅうの施術所)を開業するには、いくらくらい必要なのでしょうか。結論から言うと、日本政策金融公庫の創業ガイドでは、はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の開業費用は「300万円〜800万円ほど」が目安とされています。物件の広さや立地、ベッドや電気治療器をどこまでそろえるかで金額は大きく変わります。

もう一つ、費用と同じくらい大事なのが保険(療養費)を扱うかどうかです。はり・きゅうの療養費は、対象が神経痛・腰痛症など6つの疾病を中心とした慢性疾患に限られ、医師の同意書が必要です。さらに窓口で自己負担分だけを受け取る「受領委任」を扱うには、施術管理者として実務経験1年以上と研修の修了が求められます。保険の比重をどう置くかで、売上計画も開業時期も変わります。

この記事では、厚生労働省の統計・通知、法令(e-Gov法令検索)、日本政策金融公庫の公開情報をもとに、鍼灸院の開業費用の内訳、資金調達、保健所への開設届、保険取扱いの条件、開業までのスケジュールを整理しました。数値にはすべて出典を示しています。

この記事のポイント:①開業費用の目安は300万〜800万円(公庫の創業ガイド)②保健所への開設届は開設後10日以内 ③施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上などの構造設備基準 ④保険は6疾病+医師の同意書、受領委任は実務経験1年+研修が条件 ⑤2026年7月から療養費の料金が改定

鍼灸院の開業を取り巻く現状(厚生労働省の統計)

まず市場を確認しましょう。厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、令和6年末の就業はり師は136,736人、就業きゅう師は134,730人で、どちらも令和4年から約4%増えています。

年末就業はり師(人)就業きゅう師(人)はり及びきゅうを行う施術所(か所)あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうを行う施術所(か所)
平成26年(2014)108,537106,64225,44537,682
平成30年(2018)121,757119,79630,45038,170
令和2年(2020)126,798124,95632,10338,309
令和4年(2022)131,486129,47833,89038,374
令和6年(2024)136,736134,73035,49438,595
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表5・表6(各年末現在)
施術所数の推移(2014〜2024年)
出典: 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表6

注目したいのは、「はり及びきゅうを行う施術所」が10年で約1万か所(25,445→35,494)増えている点です。同じ期間に柔道整復の施術所は令和4年から令和6年にかけて8か所しか増えておらず、横ばいです。鍼灸院は開業が続いている一方で、それだけ近隣の競合も増えているということです。開業費用を考えるときは「いくらで開けるか」に加えて、「患者が定着するまで何か月もちこたえられるか」までセットで計画しましょう。業界全体の動向は{IL_SHORAI}でも解説しています。

鍼灸院の開業に必要な資格と、開業スタイルの選び方

はり・きゅうの施術を業として行うには、はり師・きゅう師の国家資格が必要です(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)第1条)。はり師だけ、きゅう師だけでも開業はできますが、実際には両方の免許を持って「はり・きゅう」を併せて行う施術所が中心です。

一方、整体やリラクゼーションは国家資格を前提としない業態で、法律上の位置づけが異なります。違いは整体院の開業に資格は必要?(法律と届出の違い)で整理しています。

開業スタイル必要な届出(あはき法)費用の特徴向いている人
テナントで施術所を開設開設後10日以内に施術所開設届(第9条の2)物件取得費・内装費がかかる。最も費用が大きい保険・自費の両方で地域に根ざしたい人
自宅の一部で施術所を開設同上。構造設備基準を満たす必要あり家賃・保証金を抑えやすい小さく始めたい人、固定費を抑えたい人
出張専門(施術所を持たない)業務開始時に住所地の都道府県知事へ届出(第9条の3)物件費がかからない。移動手段と器具が中心訪問施術や高齢者向けを軸にしたい人
シェアサロン・間借り施術所として開設する場合は開設届が必要(場所・形態により保健所に要確認)初期費用は小さいが、使用料が継続的にかかる副業・週末開業から試したい人
出典:あはき法 第9条の2・第9条の3(e-Gov法令検索)をもとに作成。費用の特徴は一般的な傾向
厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)の職業紹介動画「はり師・きゅう師」

鍼灸院の開業費用はいくら?公的機関が示す目安

日本政策金融公庫の創業支援サイトSTARTの「はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の創業ポイント」(2024年11月公開)では、施術所の開業には立地や店舗の広さなどにより300万円〜800万円ほどかかるとされ、公庫などの創業融資を使う場合は必要総額の25%以上を自己資金として準備するのが望ましいとしています(いずれも執筆者の経験に基づく目安として示されています)。

業種を問わない全体像としては、日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」が参考になります。

項目数値出典
施術所の開業費用の目安300万〜800万円ほど公庫 START「施術所の創業ポイント」
望ましい自己資金の割合必要総額の25%以上同上
開業費用の平均値(全業種)975万円公庫総研「2025年度新規開業実態調査」
開業費用の中央値(全業種)600万円同上
開業時の資金調達のうち自己資金(全業種)平均279万円(22.9%)同上
出典:日本政策金融公庫 START「はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の創業ポイント」(2024年11月5日)、日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
鍼灸院(施術所)の開業費用の目安と全業種の比較
出典: 日本政策金融公庫 START/日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」

鍼灸院は、大型の治療機器を多くそろえる必要がある接骨院と比べると、設備費を抑えやすい業態です。ただし、個室化やプライバシーへの配慮、消毒・滅菌の設備、予約システムなど、患者の安心感にかかわる部分は削りすぎないほうが結果的に集患につながります。接骨院の開業費用と比べたい人は接骨院の開業費用はいくら?内訳・融資・届出も参考にしてください。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

開業費用の内訳:設備資金と運転資金

開業費用は「設備資金(開業までに一度だけかかるお金)」と「運転資金(開業後の毎月の支払いを支えるお金)」に分けて考えます。公庫の創業ポイントが挙げる項目をもとに、金額を左右するポイントを整理しました。金額は物件や地域で大きく変わるため、必ず見積もりを取って自分の計画に置き換えてください。

区分主な項目金額を左右するポイント抑えるコツ
設備資金物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)立地・広さ。保証金は家賃の数か月分になることが多い自宅開業、居抜き物件の活用
設備資金内装工事個室の数、換気、手洗い・消毒設備、バリアフリー構造設備基準を満たす最小限の間取りから始める
設備資金施術用ベッド・機器等電気治療器(電療)、温熱器具、滅菌器などの導入範囲中古・リースの組み合わせ
設備資金什器備品受付、待合、タオル・リネン、パソコン開業時は必要最低限にする
運転資金賃借料毎月の固定費の中心売上に対する家賃の割合を事前に試算
運転資金水道光熱費・消耗品費鍼・もぐさ・消毒用品などは使うほど増える仕入れ先の比較
運転資金広告宣伝費Webサイト、予約サイト、チラシ、看板法律で広告できる内容が限られる点に注意
出典:日本政策金融公庫 START「施術所の創業ポイント」の設備資金・運転資金の項目をもとに作成

物件と内装:構造設備基準を先に確認する

施術所にはあはき法施行規則 第25条で次の構造設備基準が定められています。内見の段階でこの基準を満たせる間取りかを確認しないと、追加工事で内装費が膨らみます。

  • 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
  • 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
  • 施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放できること(代わりになる適当な換気装置があればよい)
  • 施術に用いる器具・手指等の消毒設備を有すること

さらに第26条で、施術所を常に清潔に保つこと、採光・照明・換気を十分にすることが求められています。鍼は皮膚に刺入する施術なので、消毒・滅菌の設備と手順は患者から最も見られるポイントでもあります。

機器と消耗品:開業後もかかり続ける費用を見積もる

ディスポーザブル(使い捨て)鍼、もぐさ、消毒用品、タオルなどの消耗品は、患者数に比例して増えていく費用です。単価の差が月々の利益に直結するので、治療院の仕入れをネット通販に!各社ECサイト比較も参考に仕入れ先を比較しておきましょう。

運転資金:保険の入金までの時間差も見込む

開業直後は患者数が安定しないうえ、療養費は請求してから入金されるまでに時間差があります。家賃・リース料・広告費・生活費を含めた固定費の数か月分を運転資金として確保しておくと安全です。資金が尽きて閉院する典型的なパターンは整骨院が廃業する理由と回避策で解説しています。

保険(療養費)を扱う条件:同意書・6疾病・受領委任

鍼灸院の事業計画で最も差が出るのが、健康保険の療養費をどこまで扱うかです。厚生労働省の「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」(最終改正 令和8年6月5日)では、支給の条件が次のように定められています。

① 対象は慢性の疼痛を主症とする疾病(いわゆる6疾病)

療養費の支給対象は、慢性病であって医師による適当な治療手段のないもので、神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症について、保険医から同意書の交付を受けて施術を受けた場合は支給対象として差し支えないとされています。これ以外の疾病は、保険者が個別に判断します。

② 医師の同意書(または診断書)が必要

同意は、医師の診察を受けたうえで行われる必要があり、無診察の同意は認められず、オンライン診療による同意書の交付もできません。同意書に加療期間の記載がない場合、支給できる期間は、初療または再同意の日が月の15日以前なら当該月の5か月後の月末まで、16日以降なら6か月後の月末までです。期間を超えて施術を続けるには、再同意が必要です。

③ 病院での治療との併用はできない

療養費は、同一の疾病で保険医療機関の治療(療養の給付)を受けている場合は併用できません(診察・検査・同意書の交付は除く)。患者への説明が不十分だと、後から不支給になってトラブルになりやすい点です。

④ 受領委任と償還払い

「受領委任」は、患者が窓口で一部負担金だけを支払い、残りを施術所が保険者に請求する仕組みです。厚生労働省の「受領委任の取扱いについて」(改正反映版)では、令和3年1月1日以降に申し出る施術管理者について、実務に従事した経験が1年以上あり、研修の課程を修了していることが要件とされています。研修を実施するのは公益財団法人東洋療法研修試験財団です(近畿厚生局「施術管理者の要件の追加について」)。

受領委任を扱わない場合や、患者が加入する保険者が受領委任を取り扱っていない場合は「償還払い」となり、患者がいったん施術料の全額を支払ってから、自分で保険者に療養費を申請します。患者の負担感が大きいため、保険の患者を多く見込む計画なら、受領委任の要件を開業前にそろえておくことが重要です。

はり・きゅうの療養費の流れ(厚生労働省「支給の留意事項等」「受領委任の取扱い」をもとに作成)
はり・きゅうの療養費の流れ(厚生労働省「支給の留意事項等」「受領委任の取扱い」をもとに作成)

柔道整復(接骨院)の療養費とは、同意書が必要な点や対象疾病の考え方が異なります。接骨院側の仕組みは整骨院の保険請求の仕組み|療養費の対象・受領委任で解説しています。

2026年7月からの療養費の料金と、売上の考え方

はり・きゅうの療養費の料金は、厚生労働省の「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給について」(令和8年6月5日 保発0605第8号)で改定され、令和8年(2026年)7月1日以降の施術分から次の料金が適用されています。

項目1術(はり又はきゅうのいずれか一方)2術(はり・きゅう併用)
初検料2,000円2,320円
施術料(1回につき)1,650円1,820円
電療料(加算・1回につき)100円100円
往療料(1回につき)2,300円2,300円
施術報告書交付料480円480円
明細書発行加算10円10円
出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給について」(令和8年6月5日 保発0605第8号)。同一患者の月16回以降の施術は施術料等が所定料金の50%で算定
はり・きゅう療養費の主な料金(2026年7月施術分から)
出典: 厚生労働省 保発0605第8号(令和8年6月5日)

売上計画は「患者1人あたりの単価 × 来院数 × 営業日数」で組み立てます。たとえば仮に、保険の2術(施術料1,820円+電療料100円=1,920円)の施術を1日10回、月22日行った場合、療養費ベースの売上は1,920円×10回×22日=約42万円です(患者の一部負担金を含む総額。初検料や往療料は含めていません)。これは料金表から計算した一例にすぎませんが、保険だけで家賃や人件費をまかなうのは簡単ではないことがわかります。

そのため多くの鍼灸院は、保険の施術を集患の入り口にしつつ、美容鍼やスポーツ、自律神経の不調などの自費メニューと組み合わせています。自費の料金は自由に設定できますが、広告できる内容は法律で制限されている点に注意してください(次章)。

開業の手続き:保健所への開設届と保険の申出

① 保健所への施術所開設届(開設後10日以内)

あはき法 第9条の2により、施術所を開設した人は開設後10日以内に、施術所の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出なければなりません。届出事項は施行規則 第22条で、開設者の氏名・住所、開設年月日、名称、開設の場所、業務の種類、業務に従事する施術者の氏名、構造設備の概要と平面図と定められています。

法律上は開設「後」の届出ですが、実務では内装工事の前に図面を持って保健所に事前相談するのが安全です。基準を満たしているかを着工前に確認でき、やり直し工事を防げます。出張専門で開業する場合は、第9条の3により業務を開始したときに住所地の都道府県知事へ届け出ます。

② 受領委任の申出(地方厚生局)

受領委任を扱う場合は、施術管理者の要件(実務経験1年以上・研修修了)を満たしたうえで地方厚生(支)局に申し出ます。書類には実務経験期間の証明や研修修了証の写しが必要なので、勤務先を退職する前に証明書の発行を依頼しておくとスムーズです。

③ 税務署への開業届など

個人で開業する場合は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出し、青色申告を選ぶなら「所得税の青色申告承認申請書」もあわせて提出します。スタッフを雇う場合は労働保険・社会保険の手続きも必要です。

広告の制限:看板・チラシ・Webを作る前に確認

あはき法 第7条では、施術所の広告は、施術者である旨と氏名・住所、業務の種類、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日・施術時間、厚生労働大臣が指定する事項などに限られ、施術者の技能・施術方法・経歴に関する事項は広告できません。作り直しになれば、その分の広告費が無駄になります。広告の範囲内での集客の工夫は治療院が集患・集客する方法まとめや治療院の簡単SNS広告の運用まとめで紹介しています。

開業までのスケジュール(1年前からの逆算)

時期主にやること費用が発生するもの
開業12〜6か月前実務経験の確認・研修申込(受領委任を扱う場合)、コンセプト決め、事業計画・自己資金の整理研修受講料
開業6か月前商圏調査(周辺の鍼灸院・接骨院の数)、融資の相談・申込—
開業5〜4か月前物件の選定・契約(構造設備基準を確認)、機器・予約システムの選定物件取得費
開業4〜3か月前保健所へ図面を持って事前相談、内装工事、Webサイト準備内装工事費、Web制作費
開業2〜1か月前機器・消耗品の搬入、近隣医療機関へのあいさつ、受領委任の申出準備機器代・リース料、広告費
開業〜10日以内保健所へ施術所開設届、税務署へ開業届—
開業後3〜6か月集患施策の改善、同意書・再同意の管理と請求の運用を安定させる運転資金(固定費)
施術所開設届の期限はあはき法第9条の2による。そのほかの時期は一般的な目安で、物件や地域により前後する
鍼灸院開業までの逆算スケジュール
  • 12〜6か月前
    要件確認と事業計画
    施術管理者の実務経験1年・研修、自己資金の整理
  • 6か月前
    商圏調査と融資相談
    公庫などへ創業計画書を提出
  • 5〜4か月前
    物件契約と機器選定
    施術室6.6㎡・待合室3.3㎡以上を確保できるか
  • 4〜3か月前
    保健所へ事前相談・内装工事
    平面図で基準を確認してから着工
  • 2〜1か月前
    搬入・あいさつ・申出準備
    同意書をもらう医療機関との関係づくり
  • 開業〜10日以内
    施術所開設届・開業届
    あはき法第9条の2の期限
  • 開業後3〜6か月
    集患と請求運用の安定化
    運転資金で固定費をまかなう期間

開業資金の調達方法と補助金・助成金

公的融資の代表は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。

調達方法特徴注意点
日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金)創業時でも利用しやすい公的融資。返済期間が長い事業計画書と自己資金の説明が重視される
自治体の制度融資(信用保証協会付き)自治体・金融機関・信用保証協会が連携。利子補給がある地域も内容は自治体ごとに異なる。保証料がかかる
補助金(国・自治体)返済不要。販路開拓やIT導入などの経費の一部を補助原則として後払い。公募期間・対象経費が決まっている
助成金(雇用関係)スタッフの雇用・育成などの要件を満たすと受給できるものがある一人開業では対象になりにくい
自己資金・親族からの援助返済負担がない(または少ない)借入審査では貯めてきた経緯も見られる
機器のリース初期投資を月額払いに分散できる総支払額は購入より多くなりやすい
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」公式ページ(2026年9月時点)ほか。補助金・助成金の要件は公募ごとに異なる

補助金は「先に使って、後から一部が戻る」仕組みのものが多く、開業資金そのものを補助金でまかなうことはできないと考えておきましょう。また公募の時期や対象経費は年度ごとに変わります。使えそうな制度は、開業地の自治体の創業支援窓口や商工会議所・商工会で最新の公募要領を確認してください。

独立開業ではなくグループやフランチャイズに加盟して開業する道もあります。加盟金・ロイヤリティを含めた比較は接骨院のフランチャイズ・グループ加盟の比較を参考にしてください。

鍼灸院の開業で失敗しないための注意点

  1. 保険の比重を先に決める:受領委任を扱うなら実務経験1年以上と研修修了が必要。同意書をもらえる医療機関との関係づくりも時間がかかります
  2. 物件は構造設備基準で選ぶ:施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上・換気・消毒設備を内見時に確認します
  3. 競合の数を数える:はり・きゅうの施術所は10年で約1万か所増えています。半径数キロの鍼灸院・接骨院を調べ、差別化の軸を決めます
  4. 運転資金を厚めに持つ:療養費の入金の時間差と、患者が定着するまでの期間を見込みます
  5. 広告は法律の範囲で:技能・施術方法・経歴は広告できません。作り直しは費用の無駄になります

開業前に勤務先で経験を積みながら、実務経験の要件をそろえ、資金を準備するのが現実的な道筋です。経験を積む職場を探している人は、転職も選択肢に入れてみてください。

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

鍼灸院の開業費用に関するよくある質問

Q
鍼灸院は最低いくらで開業できますか?
A

日本政策金融公庫の創業ガイドでは、はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の開業費用は立地や広さにより300万〜800万円ほどが目安とされています。自宅開業や出張専門にすれば物件費を抑えられますが、自宅でも施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上などの構造設備基準を満たす必要があります。

Q
自己資金はどのくらい用意すればよいですか?
A

公庫の創業ガイドでは、創業融資を利用する場合は必要総額の25%以上を自己資金として準備するのが望ましいとしています。公庫総研の2025年度新規開業実態調査(全業種)では、開業時の自己資金は平均279万円でした。

Q
はり師・きゅう師の資格を取ってすぐに保険を扱えますか?
A

施術所の開設自体は可能ですが、受領委任で保険を扱う施術管理者になるには、令和3年1月以降の申出では実務経験1年以上と研修の修了が必要です。受領委任を扱わない場合は、患者が全額を払って自分で申請する償還払いになります。

Q
鍼灸の保険はどんな症状に使えますか?
A

神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症について、医師の同意書を受けて施術した場合が支給対象として扱われます。同一の疾病で病院の治療を受けている間は併用できません。

Q
施術所開設届はいつまでに出しますか?
A

あはき法第9条の2により、開設後10日以内に施術所の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出ます。構造設備の概要と平面図が必要なので、工事前に保健所へ相談しておくと安心です。

まとめ:鍼灸院の開業費用は「保険の比重・物件・運転資金」で決まる

鍼灸院の開業費用は、日本政策金融公庫の創業ガイドで300万〜800万円ほどが目安とされ、自己資金は必要総額の25%以上が望ましいとされています。物件と内装、機器の選び方で金額は大きく変わります。

鍼灸院ならではのポイントは、①保険(療養費)を扱うなら6疾病・医師の同意書・受領委任の要件(実務経験1年以上+研修)を踏まえた計画にすること、②施術室6.6㎡以上などの構造設備基準を満たす物件を選ぶこと、③開設後10日以内の開設届と広告の制限を守ること、の3つです。2026年7月からの療養費の料金も踏まえて、保険と自費のバランスを試算してから開業準備を進めましょう。

参考・出典

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