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整骨院と整形外科の併用と保険|使える例・使えない例9ケース

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整形外科でレントゲンを撮ってもらい、リハビリは家の近くの整骨院で。そんな通い方をしたら、健康保険はどちらで使えるのでしょうか。

ネット上には「同じ月はダメ」「整骨院から整形外科の順ならOK」といった言い回しがあふれています。厚生労働省の案内を読むと、線を引いているのは月ではなく「同じけがを、医療機関で治療している最中かどうか」です。

ここでは国と全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内、自治体が保険者向けにまとめた手引きをもとに、併用できる場面とできない場面を具体例で整理しました。整骨院で保険が使えるけがの種類そのものは整骨院の保険適用範囲(使える5つのけが・使えない例)にまとめています。

「同じ月はダメ」は半分だけ正しい

厚生労働省は、整骨院・接骨院について「保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中は、施術を受けても保険等の対象になりません」と案内しています。協会けんぽも、保険が使えない例に「保険医療機関で同じ負傷等の治療中の場合」を挙げています。

出典: 厚生労働省『柔道整復師の施術にかかる療養費について』/出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』(2026年10月23日参照)

この文言に「月」は出てきません。条件は2つだけ。

  • 同じ負傷かどうか:右足首の捻挫を整形外科で診てもらいながら、同じ右足首を整骨院で保険施術する、という重なり方が対象外になる
  • 治療中かどうか:医療機関での治療が続いている期間に、整骨院でも保険施術を受けると対象外になる

では、なぜ「同じ月」という言い方が広まったのか。整骨院の療養費の申請書は月単位で作られ、保険者はそれを医療機関のレセプト(診療報酬明細書)と月ごとに突き合わせて点検しています。同じ月に同じ部位の記録が両方に出ると重なりが目に留まる、という事情が「同じ月はダメ」という短い言い回しになったのだと編集部は見ています。

出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(申請書の作成単位、レセプトとの突合点検)

裏返せば、別の部位なら同じ月でも問題になりません。逆に、月が変わっても同じけがで医療機関の治療が続いていれば、整骨院の保険施術は対象外のままです。

併用できる例・できない例を9つのケースで

条件を具体的な通い方に当てはめると、次のようになります。「保険」は健康保険(国民健康保険・後期高齢者医療を含む)を指します。

通い方の例整骨院で保険は使える?根拠になるルール
腰の打撲は整形外科、別の日にひねった足首は整骨院使える同じ負傷ではない
整骨院で捻挫を施術中、風邪で内科を受診使える同じ負傷ではない
足首の捻挫を整形外科で治療中に、同じ足首を整骨院でも使えない同じ負傷を医療機関で治療中
整形外科で湿布と痛み止めを続けながら、同じ腰を整骨院で使えない投薬も医療機関の治療に当たる
骨折を整形外科で診察、医師の同意を得て整骨院で施術使える骨折・脱臼は医師の同意があれば対象
骨折・脱臼を医師の同意なしで整骨院が施術(応急手当を除く)使えない柔道整復師法第17条
整形外科に入院中、医師に頼まれて整骨院が施術使えない入院中の後療は支給対象外
同じ部位を2か所の整骨院で並行して施術対象外・償還払い変更の対象になり得る協会けんぽの償還払い変更の基準
仕事中・通勤中のけが健康保険ではなく労災保険業務災害・通勤災害は健康保険の対象外
整形外科と整骨院の併用:通い方別の保険の扱い(健康保険の場合)

出典: 厚生労働省『柔道整復師の施術にかかる療養費について』/出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』/出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(留意事項 第1の2・3・9、柔道整復師法第17条)

表の4行目は見落としやすいところです。リハビリに通っていなくても、同じけがで薬や湿布を処方され続けていれば「治療中」と見られる可能性があります。迷ったら、加入している保険者(保険証に書かれた健康保険組合・協会けんぽ支部・市区町村)に通い方を伝えて確認するのが確実です。

骨折・脱臼は「医師の同意」で整骨院に任せられる

骨折と脱臼は、応急手当を除き、あらかじめ医師の同意を得ないと整骨院で保険施術を受けられません。これは柔道整復師法第17条の「医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない」という規定にもとづくものです。

同意には決まった形がある、と思われがちですが、厚生労働省の留意事項では「患者を診察した上で書面又は口頭により」与えるものとされています。同意する医師は整形外科や外科に限られません。整骨院は、同意を得た年月日と医療機関名・医師名を申請書に書くことになっています。

出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(留意事項 第1の2・3、柔道整復師法第17条)/出典: 厚生労働省『柔道整復師の施術にかかる療養費について』

もうひとつ知っておくと役立つのが、医師がすでに整復や固定をした骨折の扱いです。この場合、整骨院は整復料・固定料を算定できず、その後の後療(回復期の施術)の料金で請求します。つまり「整復は病院、その後の通院は整骨院」という分担は、制度の上でも想定されています。

出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(留意事項 第1の4)

骨折・脱臼で整骨院に移るときは、整形外科の診察室で「近くの整骨院で後療を受けたい」と医師に伝え、同意をもらうのが出発点です。同意後も医師の診察を受け続けるか、その間隔をどうするかは、保険者によって判断が分かれる部分があります。通い方が決まったら、加入先にも一度確認しておくと安心です。

整骨院で健康保険が使えるかの判断の流れ(厚生労働省・協会けんぽの案内をもとに作成)
整骨院で健康保険が使えるかの判断の流れ(厚生労働省・協会けんぽの案内をもとに作成)

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整骨院が先か、整形外科が先か

よく聞かれるのが「整骨院に通っていたけれど、良くならないので整形外科に行きたい。そうすると保険はどうなる?」という相談です。

ルールに照らすと、整形外科で同じけがの治療が始まった時点から、整骨院での保険施術は対象外になります。整形外科に行く前に受けた整骨院の施術まで、さかのぼって対象外になるわけではありません。一部の解説で「整骨院→整形外科の順なら同じ月でも大丈夫」と言われるのは、この時間の前後関係のことです。

反対に整形外科が先の場合は、医療機関の治療が終わってから、または医師の同意のもとで整骨院に移る形になります。

整骨院から整形外科に切り替えるときの流れ(例)
  • 1
    整骨院に伝える
    「整形外科で診てもらいたい」と施術者に話す。骨折などが疑われる場合、整骨院から医療機関に紹介状を書く仕組みもある
  • 2
    整形外科を受診
    これまで整骨院に通っていたことを医師に伝える。画像検査や診断はここで
  • 3
    整骨院の保険施術を止める
    同じけがで医療機関の治療が続く間、整骨院での保険施術は受けない
  • 4
    今後の分担を決める
    医師の同意を得て整骨院に戻るのか、整形外科で治療を続けるのかを相談する

出典: 厚生労働省『柔道整復師の施術にかかる療養費について』/出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(応急施術後の医療機関への文書による紹介:留意事項 第5の4(8))

「長く通っているのに良くならない」場合について、協会けんぽは内科的な原因も考えられるとして、医師の診察を受けるよう呼びかけています。痛みが2〜3週間たっても変わらないなら、整骨院のほうから受診をすすめるのが本来の姿だと私たちは考えています。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』

重なりはどうして分かるのか

「黙っていれば分からないのでは」と考える人もいるかもしれません。実際には、保険者は整骨院の申請書を毎月ばらばらに見るのではなく、同じ人の申請を月をまたいで並べる「縦覧点検」と、医療機関のレセプトとの「突合点検」を行っています。点検の項目には「保険医療機関で同じ負傷の治療中ではないか」「入院中の施術ではないか」が明記されています。

出典: 静岡県『柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)』(令和6年10月版。厚生労働省の留意事項通知を収録)(申請書の二次点検)

点検で疑問が出ると、保険者から患者に、けがの原因や通院日、施術の内容をたずねる照会(文書や電話)が届きます。協会けんぽの案内は、受診した日・部位・内容の記録と領収証の保管。照会に繰り返し答えない人は、窓口で全額を払ってあとから請求する償還払いに切り替えられることもあります。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』

背景には、柔道整復の療養費を適正に使おうという国の流れがあります。柔道整復療養費は平成25年度の3,855億円から令和3年度には2,867億円まで減りました。

柔道整復療養費の推移(年度・推計)
出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会資料(保険局調査課とりまとめの推計)

出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会『柔道整復療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)』(2024年)

減少の理由はひとつではありませんが、保険の対象を「外傷」に絞る取扱いが徹底され、点検も細かくなってきたのは確かです。2027年1月からは、直近12か月で通算8か月以上かつ9部位以上の施術を受けた人も償還払い変更の対象に加わります。受領委任と償還払いの仕組みは受領委任と償還払いの違いで説明しています。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』

労災・交通事故だと話が変わる

ここまでの話は健康保険のルールです。けがの原因によって使う保険が変わり、併用の考え方も変わります。

けがの原因使う保険整形外科との併用の考え方
家事・スポーツなど私生活のけが健康保険同じけがを医療機関で治療中は、整骨院の保険施術は対象外
仕事中・通勤中のけが労災保険健康保険は使えない。労災の手続きで整骨院・医療機関それぞれにかかる
交通事故(相手がいる)自賠責保険(相手側)柔道整復の施術費も「必要かつ妥当な実費」として支払対象。保険会社への連絡と医師の受診が前提になりやすい
交通事故で健康保険を使う場合健康保険+第三者行為の届出健康保険のルールが適用される。届出を加入先に出す
けがの原因別:使う保険と併用の考え方

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師のかかり方』/出典: 国土交通省・金融庁『自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準』/出典: 日本損害保険協会『交通事故の治療で健康保険は利用できる?手続き方法を解説』

交通事故では、整形外科で診断を受けながら整骨院にも通う形が一般的です。自賠責保険の支払基準は、柔道整復師の施術費を「必要かつ妥当な実費」として扱っています。ただ、医師が経過を把握していないと施術の必要性を説明しにくくなるため、整形外科への受診は途中でやめないほうがよいでしょう。手順は交通事故むちうちの整骨院通院の手順に、整骨院側の請求の流れは整骨院の交通事故・自賠責請求の流れにまとめています。

出典: 国土交通省・金融庁『自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準』

交通事故でも健康保険を使うことはできます。その場合は加入先に「第三者行為による傷病届」などを出す必要があり、併用のルールも健康保険のものになります。仕事中のけがの扱いは整骨院の労災保険の取り扱いを参考にしてください。

出典: 日本損害保険協会『交通事故の治療で健康保険は利用できる?手続き方法を解説』

自費なら併用できる? 鍼灸は?

同じけがで整形外科に通いながら、整骨院の施術を保険を使わずに自費で受けることは、健康保険の制度とはぶつかりません。厚生労働省の案内も「保険等の対象になりません」という書き方で、施術そのものを禁じているわけではないからです。

とはいえ、編集部は「自費だから気にしなくていい」とは考えていません。整形外科で受けているリハビリや処方と、整骨院の施術の方向が食い違うことがあるからです。主治医には整骨院にも通っていることを伝え、料金は施術前に確認してください。回数券などの前払いを求められた場合の注意は整骨院の回数券と前払いの注意点で取り上げています。

はり・きゅうにも同じ考え方があります。厚生労働省は、保険医療機関で同じ対象疾患の治療を受けている間は、はり・きゅうの施術を受けても保険の対象にならないとしています。鍼灸の保険には医師の同意書が要る点も含め、鍼灸の保険適用と医師の同意書で詳しく扱いました。

出典: 厚生労働省『柔道整復師の施術にかかる療養費について』

腰を痛めた直後に「そもそもどちらへ行くべきか」で迷っている場合は、ぎっくり腰は整骨院と整形外科どっち?が判断の助けになります。

ここが気になる、という声に答えます

Q
同じ日に整形外科と整骨院へ行ったら、どちらかは全額自己負担ですか?
A

同じけがなら、医療機関で治療中という扱いになるため、整骨院の施術は保険の対象外です。別々のけが(たとえば腰は整形外科、足首は整骨院)であれば、同じ日でもそれぞれ保険を使えます。

Q
整形外科の治療が終わったら、同じけがで整骨院に通えますか?
A

医療機関での治療が終わっていれば「治療中」には当たりません。ただし保険の対象は、外傷性で慢性に至っていない打撲・捻挫・挫傷などです。治療が長引いて慢性化した痛みや後遺症は、整骨院でも保険が使えない例に挙げられています。

Q
併用していたことが後で分かったら、どうなりますか?
A

保険者は医療機関のレセプトと整骨院の申請書を突き合わせて点検しており、重なりが見つかると照会が届いたり、療養費が支給されなかったりします。その場合、施術代が自己負担になることがあります。心当たりがあるときは、早めに加入先と整骨院に相談してください。

Q
整骨院に「病院には行かなくていい」と言われました。
A

打撲・捻挫なら医師の同意なしで保険施術を受けられますが、骨折・脱臼は応急手当を除き医師の同意が必要です。協会けんぽは、長く通っても良くならない場合は医師の診察を受けるよう案内しています。不安があれば、整形外科を受診してから通い方を決めるのが確実です。

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迷ったときの判断の目安

最後に、通い方を決めるときの順番を短くまとめます。

  1. けがの原因を確認する(仕事・通勤なら労災、交通事故なら自賠責か第三者行為の届出)
  2. 同じけがで医療機関の治療が続いているかを確かめる。続いているなら整骨院は自費になる
  3. 骨折・脱臼は、医師の同意を得てから整骨院へ
  4. 通い方に迷う点があれば、保険証に書かれた保険者に問い合わせる

制度の線引きはシンプルでも、実際の扱いは保険者の判断にゆだねられる部分が残ります。ここに書いた内容は2026年10月時点の厚生労働省・協会けんぽの案内をもとにしたものです。

参考・出典

参照日: 2026年10月23日

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