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整骨院の患者照会、保険者への対応は?届く基準と院の準備4つ

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3部位以上、3か月を超える継続、月10〜15回以上の通院。厚生労働省が2012年の通知で、保険者が患者に文書で照会する申請書の「選び方の例」として挙げた目安です。

患者照会(受診照会)は、整骨院の請求に誤りがあると決めつけて送られるものではありません。ただ、届いた患者が不安になって通院をやめたり、記憶違いのまま回答して申請書と食い違ったりすると、返戻や不支給という形で院の側に返ってきます。

照会がどう選ばれ、何を聞かれ、回答が食い違ったら何が起きるのか。厚生労働省の通知と事務連絡、受領委任の取扱規程を読み合わせて、院の側で前もって整えておけることを順に並べました。

照会が届く申請書には、だいたい共通点がある

2012年3月の厚生労働省の通知「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について」は、保険者に対し、多部位・長期・頻度が高い施術を受けた人への調査を求めました。具体的な基準は設けないとしたうえで、例として次の3つを示しています。

選定の目安(通知の例示)具体的な線院の側で見直したい点
多部位3部位以上の負傷の申請書部位ごとの負傷原因を施術録に書き分けているか
長期3か月を超える継続(4か月目以降)長期になった理由を申請書・施術録に残しているか
頻回1か月あたり10〜15回以上が続く傾向来院のたびに施術内容を記録しているか
部位転がし同じ院・同じ患者で負傷と治癒を繰り返す新しい負傷ごとに原因を聞き取っているか
患者照会の対象になりやすい申請書(厚生労働省通知の例示)

出典: 厚生労働省保険局『柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について』(2012年3月12日 保医発0312第1号ほか)(1〜3行目)/出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)(4行目)

2018年5月の事務連絡は、この流れをもう一歩はっきりさせました。照会は「不正の疑いのある施術や多部位、長期、頻度が高い傾向」がある施術について、実際に施術を受けたか、外傷によるものかを確かめるためのもの。照会する理由がない「月に1回、1部位」の請求にまで送ったり、全件に一律で送ったりする例は不適切だと名指ししています。

出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

裏返すと、3部位の請求が続く院や、通院が4か月目に入る患者が多い院には、照会が集まりやすいということです。

もっとも、通知が示したのは例であり、どの申請書を何割調べるかは保険者が決めてよいとされています。健康保険組合によっては1部位・短期でも照会を送るところがあり、院の側でコントロールできる話ではありません。編集部としては「照会が来ないように請求を変える」よりも「来ても困らない記録を残す」ほうに手間をかけるべきだと考えています。保険で扱えるけがの範囲そのものは整骨院で保険が使えるけが・使えないけがで整理しています。

出典: 厚生労働省保険局『柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について』(2012年3月12日 保医発0312第1号ほか)

患者照会(受診照会)とは、何を確かめる調査なのか

厚生労働省が2012年の通知に付けた調査票の様式例を見ると、患者に聞く内容は大きく4つに分かれています。協会けんぽも、電話または文書で「負傷原因、治療年月日、治療内容など」を照会することがあると案内しています。

照会票で聞かれること患者が答えに詰まりやすい理由院の側で残しておく記録
施術期間と実日数数か月前の通院日を覚えていない来院日ごとの施術録、領収証・明細書の控え
負傷の原因と箇所(いつ・どこで・何をしていて・どうなって・どこを)「なんとなく痛くなった」と書いてしまう初検時に聞き取った負傷原因の記載
申請書の署名(自分で書いたか、代筆か)毎月まとめて署名した記憶があいまい署名を受けた日と、代筆したときの理由
領収証の受け取り捨ててしまった領収証の発行履歴
照会票の主な質問と、院の側で用意しておく記録

出典: 厚生労働省保険局『柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について』(2012年3月12日 保医発0312第1号ほか)(様式例1)/出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』

2018年の事務連絡は、負傷の原因を「いつ、どこで、何をしているときに、どのようなことをして、どこを負傷したか」の形で確かめるよう保険者に求めています。照会の中心はこの一点だと見てよいでしょう。

出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

患者がここで「肩こりがつらくて」「なんとなく腰が重くて」と書くと、外傷ではない、つまり保険の対象外ではないかと受け取られます。施術者が初検で聞いた「孫を抱き上げたときに腰をひねった」という話が、申請書には書かれているのに患者の回答には出てこない。食い違いの多くは、こうした書きぶりの差から生まれます。

届いてから支給が決まるまでの流れ

患者照会から支給決定までの流れ(厚生労働省の通知・事務連絡、協会けんぽの案内をもとに作成)
患者照会から支給決定までの流れ(厚生労働省の通知・事務連絡、協会けんぽの案内をもとに作成)

図の右下、回答が申請書と合わないときの扱いが、院にとっての分かれ目です。2012年の通知は、食い違ったときは電話や面会で患者に聞き直し、それでも疑問が残れば施術所に照会して解消するよう求めました。2018年の事務連絡は、施術所に照会しないまま不支給を決める例や、患者の記憶があいまいなことを理由に返戻する例を「不適切」と書いています。

出典: 厚生労働省保険局『柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について』(2012年3月12日 保医発0312第1号ほか)/出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

施術所に照会が来たときの院の義務は、受領委任の取扱規程に書かれています。施術管理者は、申請書の記載内容について保険者や柔整審査会から照会を受けたら「的確に回答すること」(第35項)。保険者は、不正や著しい不当がないか確かめる必要がある場合、領収証の発行履歴や来院簿など通院の履歴が分かる資料の提示を求めることができます(第42項)。減額や不支給にするときは、保険者が理由を書いた書類と申請書の写しを施術管理者に送ることになっています(第36項)。受領委任の全体像は受領委任の仕組みと中止になる条件にまとめました。

出典: 厚生労働省保険局長通知『受領委任の取扱規程』(2018年5月24日 保発0524第2号)(第34〜36項・第42項)

柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報

働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。

照会に強い院がふだんからやっていること

照会への対応は、届いてからでは打てる手が限られます。準備は4つに分けられます。

施術録は「負傷原因の一文」で差がつく

受領委任の取扱規程は、受領委任にかかる施術録を他の施術録と区別して整理し、必要な事項を遅れずに記載して、施術が完結した日から5年間保存するよう定めています。

出典: 厚生労働省保険局長通知『受領委任の取扱規程』(2018年5月24日 保発0524第2号)(第21項)

照会で照らし合わされるのは、施術録のなかでも初検時の負傷原因の記載です。「いつ・どこで・何をしていて・どうなって・どこを」の5点を、患者の言葉に近い形で残しておく。部位が増えたときは、増えた部位にも同じ5点を書く。これだけで、施術所照会が来たときの答えやすさがまるで違ってきます。手書きの施術録で書き分けが追いつかない院は、整骨院向け電子カルテの比較や接骨院のレセコン比較も参考にしてください。

領収証と明細書を、患者が後で見返せる形で渡す

領収証は受領委任の取扱規程で無償交付が義務づけられており、2022年の改正で明細書の患者への交付も義務になりました。2018年の事務連絡は2022年に改正され、患者が領収証や明細書を出さなかったことだけを理由に不支給とするのは適切でないと明記されています。

出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)(2022年5月27日改正部分)/出典: 厚生労働省保険局長通知『受領委任の取扱規程』(2018年5月24日 保発0524第2号)(第19項)

患者の側から見ると、照会票の通院日や部位を思い出す手がかりは、手元の領収証と明細書しかありません。協会けんぽも、受診した日や部位、内容の記録と領収証を保管するよう呼びかけています。領収証は医療費控除の申告にも使えることを、渡すときに一言添えておくと捨てられにくくなります。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』

申請書の署名は、その月の内容を見せてからもらう

照会票には「申請書に自分で署名したか、代筆を頼んだか、どちらでもないか」を選ばせる欄があります。協会けんぽは患者向けに、委任欄の傷病名・日数・金額をよく確かめること、白紙の用紙への署名や印鑑の預け渡しを避けることを案内しています。

出典: 厚生労働省保険局『柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について』(2012年3月12日 保医発0312第1号ほか)(様式例1)/出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』

毎月の署名を流れ作業にしている院は、ここで患者の回答とずれます。手のけがなどで自署できない場合を除き、本人が書くのが原則です。

初回に「照会が来ることがある」と伝えておく

照会票が届いて驚いた患者が、そのまま通院をやめてしまうことがあります。2018年の事務連絡も、照会は受診を抑える目的で行ってはならないとわざわざ書いているほどです。

出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

初検の説明か院内の掲示で、「保険で施術を受けた方には、加入している保険者から施術の内容を確認する書類が届くことがあります。届いたら覚えている範囲で、事実のとおりにご記入ください」と伝えておく。LINEで予約を受けている院なら、初回のあいさつ文に入れておく方法もあります(LINE公式アカウントの使い方)。

「どう書けばいい?」と聞かれたときの線引き

照会票を持って来院し、書き方を尋ねる患者は少なくありません。協会けんぽは、照会があった場合は「ご自身で回答書に記入して回答」するよう案内しています。院が代わりに書いたり、答えを指定したりするのは避けるべきです。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』

一方で、事実を思い出す手伝いはできます。院の側でできることと、やらないほうがよいことを分けておきます。

場面してよいこと避けること
通院日を聞かれた施術録・領収証の控えを見て来院日を伝える実際より多い・少ない日数を書くよう促す
負傷原因が思い出せない初検で本人が話した内容を読み上げる院が考えた原因を書かせる
部位の書き方が分からない申請書にある部位名を伝える申請書にない部位を書き足させる
回答そのものを頼まれた本人が書くものだと説明する院が代筆・記入する
患者から照会票の書き方を相談されたとき(編集部の整理)

ここは院によって考え方が分かれますが、私たちは「施術録を見せて、書くのは本人」が線引きとして一番わかりやすいと考えています。記憶をたどる材料を出すことと、答えを作ることは別物です。

回答と申請書がずれたとき、院を守ってくれるのは施術録の記載だけです。

回答されないまま放っておかれると、院の請求はどうなるか

照会に答えない患者がいても、それだけで院がすぐに不利になるわけではありません。保険者はまず再照会や督促を行います。ただし協会けんぽは、受領委任をやめて償還払い(患者が窓口で全額を払い、あとで保険者に請求する方式)に切り替える対象として、次の事例を挙げています。

  1. 保険者が適切な時期に、分かりやすい内容で照会を繰り返しても回答しない患者
  2. 複数の施術所で同じ部位の施術を重複して受けている患者
  3. 長期かつ頻回な施術を継続して受けている患者
  4. 前月までの連続する12か月間に、通算8か月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者(2027年1月から)

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』

償還払いに切り替わると、その患者はいったん全額を払うことになり、通院が途切れやすくなります。院の側から見れば、患者の未回答は自分の請求の問題にはね返ってくるわけです。4番目の基準は2027年1月から加わるもので、長く通う患者が多い院ほど影響が出ます。改定の経緯は柔道整復療養費の改定の動きで追っています。

こうした確認が強まってきた背景には、療養費全体の適正化があります。柔道整復療養費は2013年度の3,855億円から、2021年度には2,867億円まで減りました。

柔道整復療養費の推移(年度・推計)
出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会資料(保険局調査課とりまとめの推計)

出典: 厚生労働省 柔道整復療養費検討専門委員会『柔道整復療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)』(2024年)

減った理由は照会だけではありません。とはいえ、多部位・長期・頻回の請求を細かく見る運用が続いてきたことは、この数字の流れとも重なります。保険請求の全体の流れは整骨院の保険請求の仕組みを、保険に頼りすぎない経営の組み立ては自費メニューへの移行と単価の決め方を参照してください。

「これはおかしい」と感じる照会が届いたら

照会のなかには、院の側から見て首をかしげたくなるものもあります。2018年の事務連絡が不適切な例として挙げたのは、次のようなものです。

  • 照会する理由がない請求(月1回・1部位など)にまで送る、全件に一律で送る
  • 施術からかなり時間がたってから照会し、記憶があいまいなことを理由に返戻する
  • 回答が申請書と食い違ったときに、施術所へ照会しないまま不支給を決める
  • 返戻や支給の可否の判断まで民間業者に任せている、件数に比例して委託費が増える契約になっている

出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

厚生労働省は2018年度から、こうした照会について相談窓口を設けています。保険局医療課の担当あてに、所定の連絡票(保険者名、照会の実施者、具体的な内容、施術所名など)に照会票の写しを添えて、メール(juseisyoukai@mhlw.go.jp)またはFAX(03-3508-2746)で送る仕組みです。

出典: 厚生労働省『柔道整復療養費の被保険者等への照会について』/出典: 厚生労働省保険局 事務連絡『柔整療養費の被保険者等への照会について』(2018年5月24日、2022年5月27日改正)

編集部は、まず保険者本人に問い合わせ、それでも説明に納得できない場合にこの窓口を使う、という順番がよいと考えています。所属する柔道整復師会や請求団体がある院は、そこで同じ保険者の事例が集まっていないかを先に聞いてみる価値もあります。

院長からよく出る疑問

Q
患者照会の回答書を、院で預かってまとめて送ってもいいですか?
A

協会けんぽは、照会には患者自身が回答書に記入して答えるよう案内しています。院が回答書を預かると、記入内容に院が関わったと受け取られかねません。返信用封筒が同封されていることが多いので、本人から直接送ってもらうのが無難です。

Q
照会が届いた患者に、院から連絡を入れてもいいですか?
A

照会の存在を知っているなら、「届いたら事実のとおりに書いてください。通院日が分からなければ控えをお見せします」と伝えるのは問題ありません。回答の内容を指示する連絡は避けてください。

Q
交通事故や仕事中のけがでも、健康保険の患者照会は来ますか?
A

健康保険で請求していれば、負傷原因の確認として照会されることがあります。協会けんぽは、労災や通勤途中のけが、交通事故などの第三者行為に当たる場合は健康保険が使えなかったり、届出が必要になったりすると案内しています。院の側の手続きは労災保険の取り扱いと交通事故・自賠責の請求の流れが参考になるはずです。

Q
整形外科にも通っている患者に照会が来ました。何に気をつければいいですか?
A

同じけがで医療機関の治療が続いていると、整骨院の施術は保険の対象外になります。保険者は医療機関のレセプトとも突き合わせているため、照会でこの点が分かることがあります。詳しくは整形外科と整骨院を併用したときの保険の扱いを参照してください。

Q
照会の結果、不支給になりました。患者に費用を請求できますか?
A

受領委任の取扱規程は、不支給になり患者が施術者に料金を払う必要がある場合、保険者が患者に指導を行うとしています。不支給の理由は保険者から施術管理者に送られる書類に書かれるので、まず理由を確かめてから患者と話すのが順番です。審査内容に不服があるときは再審査を申し出る道もあります。

出典: 全国健康保険協会『柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方』/出典: 厚生労働省保険局長通知『受領委任の取扱規程』(2018年5月24日 保発0524第2号)(第34・36・38項)

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照会は「記録の答え合わせ」と考える

照会票に書かれる質問は、施術期間、負傷の原因、署名、領収証の4つにほぼ集約されます。どれも、院がふだん残している記録と患者の記憶を照らし合わせるものです。施術録の負傷原因、領収証と明細書の交付、毎月の署名のもらい方。この3つを見直すだけで、照会が来ても慌てずに済みます。

ここに書いた内容は、2026年10月時点で厚生労働省と協会けんぽが公開している通知・案内にもとづいています。照会の運用は保険者ごとに差があるため、具体的な扱いは各保険者に確認してください。

参考・出典

参照日: 2026年10月23日

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