50〜54歳で転職した人のうち、前の職場より賃金が下がった人は42.0%。上がった人の29.4%を大きく上回ります。
厚生労働省の雇用動向調査で、45〜49歳までは「上がった人」のほうが多く、50代に入ったところで逆転します。柔道整復師に限った数字ではありませんが、50代の転職が「条件を上げる転職」から「条件をどう守るかの転職」に変わることは、この表からはっきり読み取れます。
一方で、柔道整復師の免許は、接骨院の施術だけでなく介護施設の機能訓練指導員の要件にもなっています。体力の不安を抱えたまま同じ働き方を続けるか、仕事の中身を変えるか。数字と制度を手がかりに、50代からの選び方を考えます。
出典: 厚生労働省『令和7年雇用動向調査結果の概要』表6(2026年)
50代の転職は「賃金が下がる人」が多数派になる
雇用動向調査の表6は、転職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかを年齢別に示しています。40代後半から60代前半までを抜き出すと、次のとおりです。
| 年齢 | 増加した人 | 変わらない人 | 減少した人 | 1割以上減った人 |
|---|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 44.9% | 24.6% | 27.4% | 17.6% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 28.0% | 30.1% | 16.1% |
| 50〜54歳 | 29.4% | 26.7% | 42.0% | 28.3% |
| 55〜59歳 | 25.5% | 33.0% | 38.9% | 30.6% |
| 60〜64歳 | 21.1% | 24.2% | 54.3% | 47.6% |
| 全年齢 | 40.8% | 25.5% | 31.0% | 21.9% |
出典: 厚生労働省『令和7年雇用動向調査結果の概要』表6(2026年)

50〜54歳では、1割以上減った人が28.3%います。ほぼ4人に1人です。前年(2024年)の同じ年齢層は増加39.0%・減少28.2%でしたから、2025年はとくに厳しい年でした。
出典: 厚生労働省『令和7年雇用動向調査結果の概要』表6(2026年)
ただし、この表は全産業・全職種をまとめたものです。管理職から一般職へ移る人、定年前に早期退職した人も含まれます。施術者として現場に立ち続けてきた柔道整復師が、同じ割合で賃金を下げるとは限りません。
それでも、「50代でも転職すれば年収は上がる」と考えて動くのは危ない、というのが編集部の見方です。最初に決めておきたいのは、どこまで下がっても生活が回るかという下限の金額です。
柔道整復師の給料は、50代で頭打ちになるのか
国の賃金統計に柔道整復師だけの区分はありません。柔道整復師は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師と一緒に「その他の保健医療従事者」として集計されています。その年齢別の値から、年収(月の給与×12+賞与)を計算しました。
| 年齢 | 月の給与(残業代込み) | 年間賞与 | 年収の目安 | 推計の働き手 |
|---|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 36.1万円 | 83.7万円 | 約517万円 | 約9,310人 |
| 45〜49歳 | 36.9万円 | 100.6万円 | 約543万円 | 約6,750人 |
| 50〜54歳 | 32.6万円 | 85.8万円 | 約477万円 | 約8,920人 |
| 55〜59歳 | 36.5万円 | 115.6万円 | 約554万円 | 約2,520人 |
| 60〜64歳 | 33.5万円 | 69.5万円 | 約471万円 | 約1,690人 |
| 65〜69歳 | 31.6万円 | 48.2万円 | 約428万円 | 約670人 |
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(職種 第5表、2026年)(企業規模10人以上・男女計。年収は編集部算出)

45〜49歳の約543万円から、50〜54歳は約477万円へ下がっています。55〜59歳は約554万円と再び高くなりますが、この年齢層の推計の働き手は約2,520人と少なく、院長や管理職の割合で値が大きく動きやすい点に注意が要ります。
区分全体の平均年齢は37.6歳。50代は推計で約1万1,440人、区分全体の約15%です。若い人が多い職種の中で、50代は少数派だということも、この表から分かります。
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(職種 第5表、2026年)
もう一つ、この統計は従業員10人以上の事業所が対象です。スタッフ数人の接骨院の給与は含まれません。小規模な職場との差は柔道整復師の給料・年収で詳しく扱っています。
「体力の限界」と言われたら、仕事の中身を変える
50代の柔道整復師が転職を考えるきっかけで目立つのは、立ち仕事と手技の負担です。1日に何十人も施術する働き方を、60代まで続けられるか。ここで「やめるか続けるか」の二択にしないことが、選択肢を広げます。
同じ免許のまま、仕事の中身を変える道を5つ並べました。給与の列は、近い職種の50〜54歳の統計値です。柔道整復師がその職場で働いた場合の給与ではないので、目安として見てください。
| 働き方 | 体への負担 | 免許の使われ方 | 近い職種の年収(50〜54歳) |
|---|---|---|---|
| 接骨院で院長・管理職 | 施術は減るが、経営と人の管理が加わる | 施術管理者として保険請求の責任者 | 約477万円(その他の保健医療従事者) |
| 介護施設の機能訓練指導員 | 1対1の強い手技は少なめ | 機能訓練指導員の資格要件 | 約416万円(介護職員) |
| 病院・整形外科 | リハビリ補助と受付・物療が中心 | 医師の指示のもとでの補助 | 約358万円(看護助手) |
| 養成校の教員 | 座学と実技指導 | 免許取得後5年以上の実務+教員講習会 | 国の統計に区分なし |
| 独立開業 | 院の規模と人を雇うかで変わる | 施術管理者の要件(実務3年) | 国の統計に区分なし |
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(職種 第5表、2026年)/厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会第153回 資料5(2017年)/厚生労働省保険局長通知「受領委任を取扱う施術管理者の要件について」
同じ表で、理学療法士・作業療法士などの区分は50〜54歳で約549万円でした。病院のリハビリ部門は、理学療法士が中心の職場です。柔道整復師がそこで同じ給与になるとは考えにくいので、病院勤務を選ぶときは、仕事の中身と給与の両方を面接で確かめてください。
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(職種 第5表、2026年)
機能訓練指導員の求人は、年齢よりも「説明する力」を見られる
通所介護(デイサービス)などに置く機能訓練指導員は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師などが就ける職種です。利用者の多くは高齢者で、家族やケアマネジャーへの説明も仕事に含まれます。仕事の流れは機能訓練指導員の仕事と給料にまとめています。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会第153回 資料5(2017年)
50代の施術者が積み重ねてきた、高齢の患者と話してきた経験はそのまま使えます。編集部は、体の負担を理由に転職を考えている人には、まず機能訓練指導員の求人を一度見比べてみることをすすめます。給与は接骨院より下がる場合が多いものの、日勤中心で休日が読みやすい職場が目立つからです。
気をつけたいのは、介護施設で働く期間が、接骨院を開業するための実務経験には数えられないことです。施術管理者の実務経験は、受領委任の登録をした施術所で柔道整復師として働いた期間に限られます。開業の可能性を残したい人は、この点を先に知っておいてください。
出典: 厚生労働省保険局長通知「受領委任を取扱う施術管理者の要件について」
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
“50代からはやめたほうがいい”と言われるのは、どんな場合か
「柔道整復師はやめたほうがいい」という声には、二つの立場が混ざっています。今の柔道整復師が別の道を考える場合と、50代で別の仕事から柔道整復師を目指す場合です。
免許を持つ人が、条件を確かめずに辞めるとき
前の職場を辞めてから求人を探すと、収入の空白を埋めるために条件を妥協しがちです。雇用動向調査で50代の賃金が下がりやすいことを考えると、在職中に応募先を2〜3に絞っておくほうが安全です。
異業種へ移る場合はなおさらです。施術者の経験が評価されやすい職種と、ゼロからの扱いになる職種があります。柔道整復師の異業種転職で、活かせる職種と賃金を比べています。
50代で未経験から資格を取りにいくとき
柔道整復師になるには、高校卒業以上の学歴で3年以上養成校に通い、国家試験に合格する必要があります。第34回国家試験の合格率は全体71.5%ですが、新卒90.3%に対して既卒は32.9%でした。一度落ちると、次の年の合格は簡単ではありません。
出典: 厚生労働省『第34回柔道整復師国家試験の合格発表』(2026年)
53歳で入学すれば、卒業は早くて56歳。学費の目安は柔道整復師の学費、年度ごとの合格率は柔道整復師国家試験の合格率にあります。
ここは意見が分かれるところです。編集部は、50代から未経験で目指すこと自体には反対しません。ただ、資格を取った後の年収で学費を回収する計画には慎重です。上の表のとおり、50代の給与は若い頃の延長線では伸びにくいからです。目的が「収入」なのか「やりたい仕事」なのかを、入学前に家族と話しておくことをすすめます。
50代未経験の場合は、入学前に「卒業時の年齢」「学費と3年間の収入減の合計」「卒業後に働きたい職場の求人」の3つを紙に書き出してから判断すると、迷いが減ります。
求人票で「50代歓迎」を探す前に、制度で確かめること
年齢を書いていない求人でも、50代は応募できます。労働施策総合推進法は、事業主が募集・採用で年齢を理由に制限を設けることを禁じているからです。求人票は「年齢不問」なのに実際には年齢で断る、書類選考で年齢を基準にする。こうした扱いも法に反します。
出典: 厚生労働省『募集・採用における年齢制限禁止について』
「50代歓迎」と書かれた求人だけに絞ると、選べる数は減ります。年齢欄より、定年と再雇用の決まりを見るほうが、将来の働き方を読み取れます。

| 制度 | 内容 | 50代の求人選びでの見方 |
|---|---|---|
| 65歳までの雇用確保 | 定年廃止・65歳定年・希望者全員の65歳までの継続雇用のいずれか(2025年4月から経過措置なし) | 定年が60歳でも、65歳までの再雇用の条件を確認する |
| 70歳までの就業確保 | 70歳までの定年引上げ・継続雇用・業務委託などの措置を講じる努力義務(2021年4月施行) | 義務ではないので、制度があるかを面接で聞く |
| 高年齢雇用継続給付 | 60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に下がった場合に支給。64%以下なら賃金の10%相当 | 60歳前後で職場を移すと、受け取れる給付が変わる |
| 募集・採用の年齢制限禁止 | 年齢を理由に応募を断ること、選考で年齢を基準にすることは原則禁止 | 年齢欄のない求人にも応募してよい |
出典: 厚生労働省『高年齢者雇用確保措置の経過措置は2025年3月31日で終了します』/厚生労働省『高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~』/ハローワークインターネットサービス『雇用継続給付』/厚生労働省『募集・採用における年齢制限禁止について』
高年齢雇用継続給付は、2025年3月31日以前に60歳になった人は最大15%でしたが、それ以降に60歳になる人は最大10%です。いま50代の人は10%の側に入ります。雇用保険の加入期間が5年以上あることが条件なので、個人の接骨院で雇用保険に入っていたかも確かめておいてください。
出典: ハローワークインターネットサービス『雇用継続給付』
求人を見るときは、次の3つを面接で確かめると、5年後・10年後の働き方が見えます。
- 定年は何歳か。65歳までの再雇用の給与と仕事内容は
- 施術の人数と、受付・事務・物療の割合はどのくらいか
- 受領委任の登録がある施術所か(開業の実務経験に数えられるか)
独立開業は50代でも遅くないが、退路を残して決める
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業時の年齢が50歳代だった人は21.8%でした。1991年度の9.3%から増えています。業種をまとめた数字で、接骨院だけの集計ではありませんが、50代の開業はもう珍しくありません。
出典: 日本政策金融公庫総合研究所『2025年度新規開業実態調査』図-1(2025年)
健康保険を扱う接骨院を開くには、施術管理者として登録施術所での実務経験3年以上(2024年度以降)と、施術管理者研修の修了が必要です。研修の申し込みは施術管理者研修の要件、開業の年齢と経験の考え方は接骨院を開業する年齢と経験年数にまとめました。
出典: 厚生労働省保険局長通知「受領委任を取扱う施術管理者の要件について」
50代の開業で気になるのは、借入の返済期間と、自分が施術できなくなった後のことです。開業資金は接骨院の開業費用、開業後の収入の幅は独立開業した柔道整復師の年収を参考にしてください。編集部としては、スタッフを雇って施術を任せられる形を最初から計画に入れておくことをすすめます。院長一人の手技に頼る院は、50代からだと続けられる年数が限られるからです。
ここが気になる
- Q50代で初めて機能訓練指導員になれますか?
- A
柔道整復師の免許があれば資格要件は満たします。介護の現場経験がなくても応募できる求人はありますが、個別機能訓練計画の作成や記録の仕事があるため、パソコンでの書類作成に慣れておくと安心です。詳しくは機能訓練指導員の仕事と給料をどうぞ。
- Qスポーツの現場に移ることはできますか?
- A
可能ですが、日本スポーツ協会のアスレティックトレーナーは養成講習や承認校の修了が必要で、年単位の準備がかかります。道筋は柔道整復師がスポーツトレーナーになるにはにあります。
- Q鍼灸の資格を追加すると、50代の転職で有利になりますか?
- A
施術の幅は広がりますが、養成校に3年以上通う必要があり、学費と時間の負担は大きくなります。費用と期間の比較は柔道整復師のダブルライセンスにまとめています。
- Q公務員として働く道はありますか?
- A
国の機関が柔道整復師を受験資格に含めて募集した例はありますが、数はごく少なく、応募年齢の上限が設けられることもあります。ほかの就職先と並べた比較は柔道整復師の就職先6つの比較をご覧ください。
迷ったときの順番
一つめに、生活が回る年収の下限を決める。二つめに、今の職場での60歳以降の扱い(定年・再雇用・雇用保険)を確かめる。三つめに、機能訓練指導員・病院・接骨院の管理職の求人を、在職中に見比べる。独立を考えるのは、その後で十分間に合います。
業界全体の先行きは柔道整復師の将来性で、数字とともに整理しています。
柔道整復師・理学療法士の求人・転職情報
働き方・給与・職場選びのポイントは本文の各章で解説しています。
参考・出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html(e-Stat 職種 第5表 Excel)
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況(2026年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf
- 厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.html
- 厚生労働省「高年齢者雇用確保措置の経過措置は2025年3月31日で終了します」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1.html
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
- ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
- 厚生労働省保険局長通知「受領委任を取扱う施術管理者の要件について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第153回 資料5(2017年)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000186484.pdf
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年)https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf
- 厚生労働省「第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」(2026年)https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2026/siken16/about.html
参照日: 2026年11月1日


